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  第8章  【天界からの脱出】

 あれから数日経ったが、あの件は舎脂シャチーから弁財天サラスヴァティに伝えられて、私の存在を知られてしまった。

激怒した弁財天サラスヴァティに取り押さえられ、拷問を受けて、身体を切り刻まれた。

不死の力で死ぬ事が出来ず、修復しても同じ事を繰り返され、あまりの苦痛の為に泣き叫んでも許してもらえず、腹を割いて内臓を取り出されたり、腸を引きり出して引きちぎられた。


梵天ブラフマーはあまりにも残酷な仕打ちに怒り、弁財天サラスヴァティに、これ以上続けるつもりなら離婚すると訴えた。


「この女さえ現れ無ければ!」

と怒りが治まらず、身動き出来ない私の顔を何度も殴り付け、顔の左半分が潰れた。


そのまま夫に殴りかかって、無抵抗の梵天ブラフマーは妻にいい様に殴られていた。

「この女の命だけは助けてやる。その代わり、今日中に叩き出せ!」と夫に言って立ち去った。


受けた傷は既に治っていたが、梵天ブラフマーが申し訳なさそうな顔をして、私の拘束を解いてくれた。


「すまない」

と言って抱きしめられ、口付けを交わして梵天ブラフマーと別れた。


路銀(お金)を沢山貰った。

罪滅ぼしなのか?手切金なのかは分からない。

寝殿から追い出され、取り敢えず客桟きゃくさん(旅館)に止まる事にした。

場所も梵天ブラフマーに教えてもらった。

お金はあるので、暫くここに泊まろう。

私の予想では、近いうちに梵天ブラフマー帝釈天インドラが来るはずだ。


客桟きゃくさんは古民家風の宿屋&休憩所だ。

泊まる事も出来るが、利用客の多くは食事とお酒が目当てだ。


「いらっしゃい!あまりお見かけしない器量良しですな?」


「えっ?あぁ、今日まで梵天ブラフマー様にお仕えしていたのですが、弁財天サラスヴァティ様の不興を買ってしまって、追い出されてしまいました」


「そりゃ、お気の毒に。こんな別嬪べっぴんさんなら、ヤキモチ妬かれて追い出されて、当然さね」

顔や身なりを見て何やらうなずいた。


「お前さんが良ければだけど、行く所が無ければ、ここで働いてみないかい?うちもこんな美人さんが看板娘をやってくれりゃあ、繁盛するってもんよ」


「本当ですか?助かります。途方に暮れていたんですよ」


「そりゃ、こっちもあんたも運が良かった。これが縁ってもんよ」と言って、タダで住み込んで良いからと言われて小部屋を案内された。


案内された部屋は少しほこりを被っていたが、綺麗に掃除すればそれなりに良くなりそうだ。


自動洗浄オートクリーン

身体や服だけでなく、部屋掃除にも使える生活魔法だ。

一瞬で部屋のほこりが消えた。


衣装替チェンジ

生活魔法で服をメイド風の衣装に着替えると、慌てて下に降りた。


「いらっしゃいませ〜!」

ちょうど下に降りたタイミングで、お客様が入って来たので、そのまま接客に付いた。


客桟きゃくさんの主人は少し驚いたが、すぐに目で相槌をして、そのままお願いした。


「お嬢さん、お酒を1つ。それからアテ(おつまみ)を何かお願いするよ」


「はい、畏まりました」


ここの客桟きゃくさんでは、三花酒サンファチュウが名物だ。

三花酒サンファチュウとは、お米を材料とした白酒パイチュウの事で、蒸留を3回行う事で芳醇でまろやかな味わいを生み出す。

純度とアルコール度数が高いお酒なので、お酒が入ったかめを振ると、無数の細かい泡が立つ。

この泡を「酒花チュウファ」と言い、いつまでも泡が消えないお酒ほど上質だと言われている。

なので、お花で作ったお酒の事ではない。

しかし、ここの客桟きゃくさんでは、金木犀きんもくせいの花びらを入れ、洞窟で3年寝かせてある。

金木犀きんもくせいの香りとアルコール度数は高いが、甘くて口当たりの良いお酒となる。


人間界でも中国の桂林にある、桂林三花酒で同じ味が楽しめるが、生産数が少ない為、輸出はされていないので、現地に行かなくては飲む事が出来ない。


乾杯ガッ


乾杯ガッ

アテ(おつまみ)として出した骨付き肉にかぶりつくと、お酒で胃に流し込んだ。


アルコール度数は56%と高いお酒なのに、この人達(神様達と言うべきか?)はまるで水の様に早いペースで飲む。


「いらっしゃいませ!」

続々とお客様が入って来るので、笑顔で明るく1トーン上げた声でお迎えする。


このお店、めちゃくちゃ繁盛していて忙しい。

すぐに仕事に取り掛かって正解だったな。


お店が閉まる頃、帝釈天インドラがやって来て、手首を掴んで無理矢理、部屋に連れ込まれた。


そのまま押し倒されて、抵抗したが力では敵わない。

4本のうち2本の腕で私の両手を押さえて抵抗出来なくして、残る腕で私の身体中を撫で回していた。

下腹部の下着の中から秘部をいじられると、すぐにイッてしまった。

それから今まで経験した事の無い体位に快楽で溺れ、朝まで抱かれ続けた。


「良かっただろう?自分でもっと気持ち良くなりたくて、腰振ってたのも気付かなかっただろう?」


「やだっ、恥ずかしいから言わないで…」

私を手に入れて満足した帝釈天インドラは、寝殿に戻って行った。


客桟の主人の名前は、まだ聞いていなかったけど、帝釈天インドラとの最中に部屋の前に来られたから、Hしてたのがバレちゃってる。


梵天ブラフマー帝釈天インドラも私が奥さん達に酷い目に合わされた時、助けに来てくれたし計略は成功したな。


魔界と天界に来て分かったが、魔界にいるのは悪魔、天界にいるのは神様ではなくて、ただ魔界に住んでいる人、天界に住んでいる人であり、見た目が人間と異なる者もいるってだけだ。

悪魔=悪、神様=正義でもない。


朝、支度が終わって開店の準備と、宿泊客の朝食を手伝う為に下に降りると、客桟の主人は意味ありげに私を見て声掛けて来た。


「おはよう。梵天ブラフマー様だけじゃなく、帝釈天インドラ様とも懇意だったんだなぁ。そりゃ追い出されるよ」

と、大笑いされた。

帝釈天インドラは昨晩はお邪魔したと、支払いを弾んで帰ったらしい。

私のお陰で上客が出来たと喜んでいた。


この日は目まぐるしい忙しさだった。

次から次へと来店客が途切れる事がなく、気付くと閉店時間が来ていた。

すると、梵天ブラフマーがやって来た。

客桟の主人は私に、「お疲れ様、もう今日は上がって良いよ」と声を掛けられた。


梵天ブラフマーは私の部屋に入るなり口付けして来て、頭を撫でながら心配そうに生活に困ってないか?とか聞いて来た。

そこへ、帝釈天インドラがやって来た。

梵天ブラフマーは私の肩を抱き寄せて、「何しに来た?」と睨んだ。

帝釈天インドラは、「その女は、もう俺のモノだ」と言ってすごんだ。

梵天ブラフマーは顔色を変えて、「コイツとヤッたのか?」と聞いて来たので、悲しそうな表情をして頷いた。

帝釈天インドラに、無理矢理やられたんだろうと決めつけて剣を抜いた。


帝釈天インドラも剣を抜いて、「剣なんて抜いたら、もう冗談では済まされんぞ」と言って睨み合った。


客桟の主人が血相を変えて来て、「店が壊れるから喧嘩するなら外でやってくんな!」と言った。


「表に出ろ!」と梵天ブラフマーが叫ぶと、2人とも同時に飛び出した。

ほぼ同時に剣を打ち合う。

神速の剣なので、あっという間に10合、20合と打ち合った。


梵天ブラフマーって、こんなに強かったのか?)

計略が上手くいって喜ぶべきなのに、何故か心が痛んだ。

私を奪い合って争っているからだろう。


私はこっそりとその場を抜け出して、全力で走った。

罪悪感が込み上げて来るが、コイツらのせいで、阿籍ア・ジーが殺された事を忘れてはいけない。

梵天ブラフマー帝釈天インドラが争い始めたので、大騒ぎになり始めた。


ゲートに辿り着くと、やはり守衛は2人しかおらず手薄だ。

光速移動呪文を唱えて、守衛が気付くよりも早く倒した。

ゲートを起動すると、ゴウンゴウン音を立てながら、ゆっくりと開いた。


背後に気配を感じて振り向くと阿修羅神族がいた。

阿修羅アスラ王様の命令で来てみれば、本当にいたな」


一斉に放たれた矢をかわし、打ち落とし、払いながら間合いを詰めて斬り込んだ。


「人間がぁ!」

牙をいて襲って来る。

6本や4本の腕それぞれに剣や槍をたずさえている。

こっちは2本しか腕がない。

どれほど光速で剣を打ち込んでも、攻めあぐねて苦戦する。


徐々にかわし切れずに傷を負っていくが、全て『自動回復オートリジェネ』の効果で修復する。


「こいつらはただの兵士だ。こんなのに手こずっているのに、阿修羅アスラ王なんかが来たら最悪だ」

と思っているとフラグが立ち、阿修羅アスラ王が現れてしまった。


(こいつは卑怯な手で阿籍ア・ジーの首を刎ねた。許さない。こいつは差し違えても殺す!)

身体能力強化呪文を限界まで唱えて、不死を頼みに防御を捨てて全力攻撃に打って出た。


剣を全力で振り、体力は自動で回復し続ける、魔力が尽きるまで。

それでもやっと、6本腕のハンデを補えて何とか互角に打ち合えるレベルだった。

剣帝の剣技を使っているはずなのに、とんでもない強さだ。


斬り合ううちに分かった。

阿修羅アスラ王は不死の私をゲートから魔界に堕として封印したいみたいだ。


「待って!」


「何だ?」


「私はゲートを通って魔界に戻りたい」


「ふん、大人しくゲートをくぐるなら争う必要もない」


私がゲートに飛び込むと、ゲートが閉じられる音がした。

暗闇の中を下降しているはずだが、空を飛べるし、なんだか平衡感覚が分からなくてなって来た。


そこへ突然、声を掛けられた。

「陛下!」

誰もいないと思ってたので、ビクッとして心臓が飛び出そうなくらい驚いた。


「誰なの?」

恐る恐る聞くと、「私です。アーシャです」と応えた。


アーシャと再会を喜び合い、連れて行かれると、ルシエラを含む大魔王達が勢揃いしていた。

手傷を負いながらゲートに向かい飛び込んだ。

ゲートに飛び込もうとする者は攻撃されなかった。

神兵は魔兵を追い払えれば良いと考えていたフシがある。


そこで、ルシエラがアーシャの空間魔法をゲートの内側に張る事を提案し、皆、魔界に堕ちた訳ではなく、アーシャの作り出した空間世界の中にいると言う。

そして、空間を繋ぎ合わせて、魔界とも行き来が可能らしい。

さっき、私がゲートを開いた時に天界側に空間を張れたから、天界にも出られると言う。


阿籍ア・ジーを収めた棺を開けようとすると、ルシエラが止めたが、それでも開けた。

500年もの月日は残酷で、すでに白骨化した屍がそこにはあった。


涙を流し、号泣してすがりついた。

逃れる為とは言え、仇敵である梵天ブラフマー帝釈天インドラに抱かれてしまったのだ。

決して許してはくれないだろう。

阿籍ア・ジーは瀕死の状態で私を助けようとして、命を落としたのだ。

声もなく泣き続け、懺悔した。


死者蘇生リアニメーション

阿籍ア・ジーの身体が光に包まれて再生し、生き返った。


阿籍ア・ジー对不起ドゥブチ(ごめんなさい)」

私の背を優しく抱いて頭を撫でた。


口付けされそうになり、私は制止した。

「もう貴方に愛される資格は無いの…」

私は泣きながら、この500年の出来事を話した。

梵天ブラフマー帝釈天インドラにも抱かれた事を正直に話した。


「お前は悪くない。守れなかった俺が、悪いのだ」と言って泣かれた。

私もつられて泣いた。


天界と行き来が出来るなら、様子を探る為にもう1度行く事にした。

ゲートの近くにアーシャが張った空間ホールから出て来た。

先程の客桟に向かうと、梵天ブラフマー帝釈天インドラがまだ斬り合っており、配下も戦闘中で戦争に発展していた。


舎脂シャチー弁財天サラスヴァティも斬り合っていたが、私を見つけると2人ともこっちに来た。


「お前のせいでこんな事になった。どうしてくれる?」


「諸悪の根源は、お前だ。殺してやる!」


舎脂シャチー弁財天サラスヴァティは、私に斬りかかった。

軽く手首を返して打ち込んで来た舎脂シャチーの剣を捌き、弁財天サラスヴァティの錫杖から放たれる突きをかわして受け流した。


「こいつ…」


「ふふふ、私が弱いと思ってたの?今までお前達に見せていた姿は隙を伺う為の演技だよ。お前達は一瞬で私に殺される」


「何を!」

頭に血が登って向かって来た。


死誘鎮魂歌レクイエム

2人以外にも効果範囲内にいた彼女達の部下も即死した。


「闇耐性が無いのがアダになったね、そして…」


黄泉還反魂リザルト

舎脂シャチー弁財天サラスヴァティを生き返らせて配下にした。


「ふふふ、あははは。これでどっちが人形かしら?」


彼女達を連れて、争う2人の元へ向かった。

「あなた、止めなさい!」


「お願い、もう止めて!」


お互いの妻達が間に入り、制止する。

梵天ブラフマー帝釈天インドラも攻撃の手を止めてこちらを見た。


「ミズキ、どっちを選ぶんだ?」

梵天ブラフマーが私のせいで争ってるんだぞ?と言う表情で聞いて来た。


「奥さんの前でも、まだそんな事を言っているの?」


「もう今更、後には引けん」

梵天ブラフマーは私を譲るつもりは無いと言った。


「ミズキ、お前が欲しい。誰にも渡さん」

帝釈天インドラも、どうやら本気で私を気に入っているみたいだ。


「何を!」


梵天ブラフマーを『隠しスキル』でステイタスを見ると、状態異常「魅了」になっていた。

魅了耐性は無効の次に高いSだった。

耐性Sに効く確率は限りなく0だ。

しかし、『絶世の美女』は自動オートで魅了攻撃し続ける。

500年もの年月を掛けて梵天ブラフマーは私への耐性が薄れ、人形として愛でるうちに愛情が湧いたのだ。

この女は俺のモノだから、誰にも譲るつもりは無いと。


帝釈天インドラの方は別に魅了されていなかったが、彼の今1番のお気に入りが私だ。

女好きの帝釈天インドラは、飽きるまで私を抱くつもりだろう。


妻達の目の前で、悪びれず堂々と愛人を奪い合うなんて、信じられない光景だ。

その相手が私なのだから、我に帰ると恥ずかしさが込み上げて来る。

人間でも男の友情が簡単に壊れるのは、金と女だ。

私を奪い合って感情を剥き出しにした2人の関係は、修復不能だろう。


2人が争っている間に魔軍で攻めて、天界を征服する計画だが、鬼になり切れない優柔不断な私は、躊躇ちゅうちょしていた。

でもここで踏ん切りつけないと、梵天ブラフマーには犯されたから仕方ないにしても、何の為に帝釈天インドラにまで抱かれたのか意味が無くなる。

帝釈天インドラには、私を抱く様に誘導したので、自分の意思で抱かれたのだ。

このままでは抱かれ損だと思い直して、突入のサインを送った。


それに気付いて善見宮を守りに行こうとしたが、彼らの妻達が遮った。

「ミズキ、お前一体何をした?」


「殺して生き返らせた。もう私の操り人形よ」


「おのれ!」


「待って、私の為に争っていたんじゃないの?」


「俺達はお前に騙されていたんだな?もう事情は違う」

と、殺気を放った。


「怖いわ。私の事、好きだったんじゃないの?」


「だから騙していたんだろう?」


「別に騙してなんかいないわよ。貴方は、私の事を人形を扱う様にしてたけど、それでも愛情を持って接してくれた。Hは淡白で独り善がりだったけど、ヴィシュヌの様に執拗にやり続けて来なくて助かったわ。Hがトラウマだったから…」

くるりと、帝釈天インドラの方に向き直して話した。


「そして帝釈天インドラ、正直に言うと、今までHした中で、貴方が一番気持ち良かったわ。もう一度してみたくなるくらいに…」

目を閉じ、間を開けて話しを続けた。


「でもね、これでも貞操概念ってあるのよ。私はビッチになりたく無いし、なり切れない」


「2人の心をもてあそんだつもりは無いの。ごめんなさい」

そう言って頭を下げた。


「口が上手いな。そんな口車に乗るとでも?」

帝釈天インドラは剣を握る手に力を込めて、にじり寄る。


「殺して気が済むなら、どうぞ」

目を閉じて、両手を広げて攻撃を受け入れる姿勢を取った。


梵天ブラフマーは、剣を捨てて私を抱きしめた。

「どうしても諦め切れない。愛してるんだ」


「お、お前、離れろ!俺の方がHが良かったと言ってただろ」

帝釈天インドラは引き離そうと、私の腕に抱きついて引っ張った。


「おい、俺のおんなに何してる?」

阿修羅アスラ王とラーヴァナの髪を片手で持ち、その首をぶら下げた項羽が現れた。


阿籍ア・ジー…」

あまり見られたく無い所を見られてしまった。


「よくも俺のおんなを犯したな」

牙戟を振るうと、梵天ブラフマーは弾け飛んだ。

そこへ帝釈天インドラが斬り込むが軽くいなされた。


梵天ブラフマー帝釈天インドラの2人がかりでも、彼らから見れば素人同然の私が見ても、圧倒的な強さで阿籍ア・ジーが押しているのが分かる。


(本当に強い。惚れ惚れする)

女性は妊娠をして出産する為、その間は無防備になる。

なので自分を守ってくれる、頼れる強い相手に本能的にかれる遺伝子が女性には組み込まれている。

その為、綺麗な女性ほど、ヤンキーにかれる傾向がある。

クソ真面目で優しい男よりも、強そうで頼り甲斐のあるヤンキーを選ぶのはこの為だ。


項羽はいまだに語り継がれる中国史上最強武将で、この時代最高の美女は虞美人だった。

No. 1同士のカップルは必然だったのかも知れない。


そこへ善見宮を陥したと言う報せが届いた。

ロード母娘おやこも無事に保護したとの事だ。

天界を制圧した瞬間だ。

魔軍は歓喜の声を上げて、勝利の雄叫びを上げた。


これでもう天界の何処にもあの2人の居場所は無くなった。

「ねぇ?天界はたった今、陥ちたわよ。悪い様にはしないから投降して。もう争う意味は無くなったのよ」


「意味?意味ならある。項羽こいつを殺して、俺がお前の夫になる」


「私が…争う理由…?馬鹿ね…本当に…」

涙がほおつたっていた。

好きでもない相手でも、命を賭けた純粋な愛は心が揺さぶられる。


降伏させる以外の方法を取ろうかと迷う。

それに、あれほど憎かった2人を殺さずに助けてあげたいと思っていた。

でも声が出ない。


私はあっと思い、目を閉じた。

項羽は帝釈天インドラ練気剣ヴァジュラを弾くと首を落とした。

首を無くした身体が倒れ、首が転がる。

ロードが帝釈天インドラに駆け寄ってすがり付いて泣いた。

ロードにとっては親の仇のはずなのに、何度も犯され、子供が出来、500年もの歳月を共に過ごすうちに愛情が芽生えたのか?

私は帝釈天インドラの死ぬ瞬間が見たくなくて、目を閉じた。


阿籍ア・ジーの事が好きなのは間違いない。

でも純粋な愛を向けられて悪い気がするはずがない。

いつの間にか、2人の事を好きになっていたみたいだ、私は。

2人共、肉体関係にあったのだから、この好きは、友達以上の好きに違いない。

許されないけど、男性がハーレムを作りたいと言う気持ちが少し分かった気がする。


梵天ブラフマーは、帝釈天インドラが討たれ、1人で項羽の豪鉾を受けねばならなくなり、防戦一方になった。

討ち取られるのは時間の問題だ。

私は強く握り締めた手が、びしょ濡れになるほど汗をかいている事に気付いた。

多分、私はこの梵天ひとを殺させたくないと思っている。


梵天ブラフマーの防御をくぐって、牙戟が胸を貫いた。

「あぁ!」

思わず悲鳴が出ていた。

そして、目を背けた。

涙が止まらず、嗚咽おえつしていた。


地面に倒れ、私の方に向かっていずって来ようとしていた。

走って駆け寄り、泣きながら抱き締めていた。

「ごめん。ごめんなさい」


「何でお前が謝る?」

と言って笑顔を向けた。


「私は創造神。お前達、人間を作り、チート能力を与えたのも私だ。最初の人類アダムに与えた能力チートは、模倣ラーニングだった。我ら神々の生活を見て覚えたのだ。その能力ちからは、ミズキ、お前が持つ能力チートだ。その力は、神々をも超える可能性があり恐れた我々は、人間を天界から追放して地上に堕としたのだ。ミズキ、私の敗因は、自らが作り出した人形を愛してしまった事だ。私はお前を、ミズキを愛してる…」

そう言うと息を引き取った。

号泣して梵天ブラフマーの遺体にすがり付いて泣いた。


黄泉還反魂リザルト

ギリギリまで『死者蘇生リアニメーション』で生き返らせ様と考えた。

しかし、これまでの努力と犠牲が無駄になる為、考え直した。


遂に天界を制圧した。

私は人間でありながら、魔界と天界を支配する女帝として君臨する事になった。


多くの犠牲を出した大戦だった。

神々は皆殺しにすると殺されていた者達まで含めて、全ての犠牲者を生き返らせた。

統一した為、新たに法を整備した。

傘下にどうしても加えたかった太上老君は、病と称して屋敷に閉じ籠もって出仕しようとしないので、梵天ブラフマーの書状を持って説得に出向いた。

三顧の礼どころか、100回以上出向いてようやく承知してくれた。

根負けしたと笑いながら、屋敷から出て来てくれたのだ。

それから私は太上老君の事を、おじいちゃんと言って甘える事にした。

最初は君臣の別が、とか堅い事を言っていたが、根負けして今では私を孫の様に可愛いがってくれている感じだ。


そろそろ私は地上に戻る。

神や魔族たちから、神帝が、魔帝がいなくなったらどうするのですか?と引き止められたが、だって私は人間だから人間の世界で暮らしたいと言って去る事に決めた。


阿籍ア・ジーも私と一緒に地上に来るらしい。

大丈夫かな?馴染めるかな、この人。


そして、こっそり梵天ブラフマー帝釈天インドラに耳打ちした。

「時々なら阿籍おっとに内緒でHしよう」


もう私は自分に正直に生きる事にした。

だって不老不死。

永遠に死が訪れない、退屈な毎日を過ごす。

夫がいても、セ◯レがいても良いじゃない。

刺激がある方が女性は美しくいられる。


人間界に戻って来ると、あれからまだたったの8時間しか経っていなかった。

500年以上も人形の様に固まっていたのに、たったの数時間しか経っていなくて驚いた。

それから、政府に魔法省の大臣になる話は辞退しに行った。


今の私はキャバクラでママをしている。

阿籍ア・ジーは私の夫で、ボディーガードと言う事にした。

こう言う仕事柄、時々あっちの世界の人達が、みかじめ料を求めて因縁を付けて来たりするが、阿籍ア・ジーが丁重にお帰り頂いている。

美人ママがいると言う評判で、クラブは大繁盛だ。

この前、たくみがお店に来た。

初めは驚いていたが、私が「結婚したのよ」と言うと少し残念そうな顔をして「おめでとう」と祝福してくれた。

そして、「結婚祝いだ」と言って、無理してドンペリを注文してくれた。


数日は平穏な日々を送っていたが、天界から急報が届いた。

西洋の神々が攻めて来たと、そこには書かれていた。

私が制圧した天界は東洋であり、天界は西洋と東洋世界に2分されている。

東洋世界が魔族に支配されたと聞いた西洋世界が危機を感じて、天界を統一し魔族を駆逐するとうたって挙兵したとの事だ。

この話は次回作の「〜西洋の神々編〜」で連載予定ですので、是非そちらも、宜しくお願い致します。

いつも読ん頂きまして、ありがとうございます。

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