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  第1章  【真実】

短編小説「序章編」で得たチート能力は女性に変化しないと使えないものだった。しかし女性変化進行率100%に達すると男性に戻れなくなると言うものだった。

やがて天寿をまっとうすると、チート能力の不老不死によって女性として生まれ変わる。

前作の連載小説「魔界編」では、女性として生まれ変わった主人公・神崎瑞稀は闇魔法『影の部屋シャドウ・ルーム』で魔界に行き、チート能力を恐れた魔王ロードから譲位され魔王となる。魔界を統一する為の遠征軍を指揮し、遂に初の魔界統一を成し遂げて闇の皇帝となる。

天界に行くには、魔界のゲートと地上のゲートを開く必要があった。

しかし、魔界のゲートを守っていたのは、大魔王10人がかりでさえ勝てないほど強い男だった。

全滅も時間の問題と思われたが、瑞稀を見て戦意を喪失した。ゲートを守っていたのは項羽で、瑞稀は虞美人の生まれ変わりであったのだ。

阿籍ア・ジー」「小虞シャオ・ユー」と呼び合って抱き合うと、瑞稀は自分が虞美人であった事を思い出して再会を喜んだ。

瑞稀は地上のゲートを開く為に戻り、ネパールとチベットの間にあるゲートを開く。

その瞬間に頭の中に声が響く。

声の主はチート能力「自動音声ガイド機能」の声であったが、その正体は人類にチート能力を授けた神々の1人だった。

瑞稀は抵抗するも、チート能力を奪われて攻撃され、意識を失い、天界に連れ去られた。

前作の衝撃的な終わりからの続編となります。

短編小説「序章編」、前作の連載小説「魔界編」も併せて読んで頂けますと、より深く物語をお楽しみ頂けます。

宜しくお願い致します。

シャアシャアシャア!」

物騒な掛け声が、練兵場から木霊こだまする。

項籍が兵士達を練兵している掛け声だ。


 私はと言うと、部屋にこもって兵法書を読みあさっていたが、心ここにらずで、ぽっかりと心に穴が空いた様だった。

こんな気持ちにさせられるとは、思いもしなかった。

初めは、ゲートを開く為の鍵くらいにしか考えていなかった。

利用する為に王位を譲位して祭り上げ、側近と言う形を取って魔界の統一に貢献した。

全ては、神界に攻め込んで父母のかたきを討つ為に。

その為になら、非情になれた。

それが叶うなら、例え身体を売り、泥水をすすってでも生き延びて、必ず復讐をげてみせる覚悟がある。

だが利用した相手は、純粋で疑う事を知らず、お人好しな善人だった。

不老不死などと言う神々ですら持ち得ないチート能力が有りながら、その力の半分も活かせてはいない、ただの人間だった。

だがいつの頃からか私は、この人間を好きになっていた。

危なっかしくて見ていられず、気がつくと身体が勝手に動いて助けていた。

彼女が地上のゲートを開きに行って数日が経つが、こんなにも会えないのが心苦しいとは思わなかった。


そう彼女とは、闇の皇帝となったミズキの事だ。

いや、虞帝と呼ぶべきなのだろうか?

ミズキは虞美人の生まれ変わりだった。

『絶世の美女』の称号を持っていたのもうなずける。


ミズキが地上に戻ってから数日が過ぎたが、地上のゲートが開いたと言うしらせはまだ無い。

計画通りなら、そろそろゲートが開いても良い頃だ。

私の兵もいつでも出陣出来る様に、項籍を見習って練兵しておくべきだろう。

ゲートが開けば、もうここに用は無くなる。

全軍で地上へ向かう。


ミズキの話では、人間は盲目的に魔族を恐れていて、全ての宗教において悪魔は人類の敵だと記されている為、問答無用で攻撃して来るはずだから、人間に化たり、大人数で移動すると目立って怪しまれるから、影の世界で移動した方が良いと言っていたな。


もし地上を地盤にして天界に攻め込むなら、人間がほとんど住んでいない南極大陸か、北極の影の世界に基地を作ると良いとも言っていた。

人類を滅ぼした方が早そうだが、ミズキの顔を立てて止めておこうか。


練兵場に行き、兵を動員して調練を行った。

そこへ報せが届いた。

ゲートが開いたと。

やってくれた。

遂にこの日がやって来たのだ。

天界に攻め込み、天帝の首を討ち、父母の恨みを晴らす日が。

報せを聞くと、そのままゲートに兵を引き連れて進軍した。

他の大魔王達よりも先んじる。


ゲートを超えて地上に降り立った。

天をあおぎ見ると、初めて見るの光がまぶしい。

父母はあの陽射ひざしを見ていたのだろうか?

私は赤子であったから、当然知らない。


ミズキがゲートを開いてから地上の時間では、まだ数分しか経っていないはずだが、辺りを見回してもミズキの姿は無かった。

何かあったのだろうか?胸騒ぎがする。


「ロード様、これから如何致しましょうか?」


「待て、この辺りをしらみ潰しに探せ!」


「何を…でしょうか?」


「それを探すのだ」

訳が分からない、と思いながら大魔王の命令だ。

渋々でも従うしかない。


「大魔王様、これを!」

配下の1人が魔石で出来たピアスを届けた。

人間界でも魔石があるらしいが、こんなに都合良く誰もいない場所に落ちているはずがない。

それに見覚えがあった。

ミズキが万が一、魔力が切れた時に補充する為にアクセサリーとして身に付けていた物だ。


「何者かに連れ去られたのか…」

ここチベットは中国領だったな。

あの時の中国軍がミズキをさらったのか?

ここから東の中国と思わせて、西のインド、北のイスラム圏、南の東南アジア(インドネシア等)方面にさらわれた可能性もいなめない。

兵を分けて影の世界から捜索させた。


この間に項籍軍が現れて話すと、烈火の如く怒り出して、全世界を攻めて小虞シャオ・ユーを返さないと世界を滅ぼすと言い出した。


「まぁ待て。焦っているのはお前だけではない。人間の仕業ではないかも知れん。その時に、人間に手を出すなと言った陛下に顔向けが出来るのか?」


「人類の仕業でなければ誰の仕業だ?」

項籍の問いに対して、私は天に向かって指を差した。


「陛下は人間だが、今や闇の皇帝だ。神がさらう理由にはなる」


「ならばすぐに天界へ向かう」


「まだ他の大魔王達が着いてない。準備が整い次第でも良いだろう?」


「そんなもの待てるか!お前らは悠長に後から付いて来い!俺1人でも行って助けるわ!」

そう言うと項籍軍は、天界へ開かれたゲートを使って向かった。


「ふぅ、短気な奴だ。今すぐにでも助けに行きたいのは、お前だけじゃない…」


四方に捜索させた配下が戻って来た。

「何処にも痕跡こんせきは御座いません」


「やはりそうか、ならば…」

天を見上げながらつぶやいた。


「待っていろよ、皆殺しにしてくれる」

配下を残してゲートを守らせ、後続が来たら伝えろと伝言し、ロードは剣を握りしめ、ゲートをくぐった。



ゲートをくぐり、天界に出た。

周囲には既に死臭が漂っており、天界側のゲートを守っていたであろう守衛は皆殺しにされていた。

生きて動いている者は1人もいない。

項籍軍が殺戮さつりくしながら陛下の奪還に向かっている事が容易に分かる。


「馬鹿が目立つ真似をしやがって…」

短絡的で何も考えず突き進む奴のせいで仕事が増える。

これで魔族がゲートをくぐって天界に現れた事が知れ渡る。

私なら退路を断つ為に、ゲートを奪い返そうと兵を送り込む。

先に進みたくとも、後続が現れるまでゲートを死守しなくてはいけなくなった。


半刻もしない間に案の定、神々の軍が現れた。

ゲートを取り囲んで陣形を敷かれた。


「魔将に告ぐ!大人しく投降すれば楽に死なせてやろう」


「あははは、馬鹿か?どっちにしろ殺されるなら、玉砕を選ぶのが魔族だ」


「ふん、無駄な抵抗だ」

神軍兵が嘲笑あざわらった。


「一体何処の田舎いなか魔将ましょうだ?この俺を知らんのか?」

金色の甲冑に身を固めた、高慢そうな神将が歩み寄った。


「誰なんだ一体?」


「聞いて腰を抜かすな!我こそは、偉大なる父シヴァ神と女神パァールヴァティが次男、韋駄天スカンダ様よ!」

大袈裟おおげさに両手を広げて、ポーズを取って見せた。


「ほぅ、それで?親の自慢か?」


「うぬぬ、めおって!小娘がぁ、あの世で後悔しろ!」

目にも止まらない速さで一撃を入れられ、かわしたつもりだったが、肩当が吹き飛んだ。


「へぇ、速さだけは中々のものだな。私も速さには自信があってね。試してみるかぃ?」

ロードが不適な笑みを浮べると、逆上した韋駄天スカンダは、やってみろと言わんばかりに連続で槍を突いて来た。


一般的に剣vs.槍であれば、リーチの長い槍の方が有利だ。

しかし、ロードはその不利をものともしない剣捌けんさばきで受け流し、らし、弾く。


韋駄天スカンダはその名において曲解きょっかいされ、まるで斥候や伝令役の様に思われがちだが、神話においては違う。

常に先鋒を務める神軍の最高指揮官の1人だ。


ロードは父から譲り受けた剣技を繰り出すと、韋駄天スカンダは驚いて後ろに引いた。


「なっ、その剣筋は…見た事がある。お前、魔族では無いのか?」


「まだ…名乗って無かったな。父の名はバスター・ロード。神々の剣術師範であり、かつて剣帝と呼ばれた遺児が私。亡き父の無念を晴らす為、地獄から舞い戻って来た」


「何っ?まさか剣帝様の…。そうか、あの時の赤子がお前か」


「父を知っているのか?だが、見殺しにした事に代わりあるまい。貴様も我が父の仇。覚悟しろ!」

ロードの名前を聞いて動揺し、明らかに技の質が目に見えて落ちている。

受け切れず胴を斬られて韋駄天スカンダは倒れた。


「待て、トドメを刺す前に聞いてくれ」


「何だ?命乞いか?」


「魔界に逃れた事を母親からどう聞いている?」


「逃れただと?父に無実の罪を着せ。私達、母娘おやこは流刑されたと聞いた」


「なるほど…だが真実ではない」


「何が真実ではないのだ?助かりたくて、いい加減な事を言うつもりなら、今すぐトドメを刺してやろう」


「お前の母の名は、ドゥルガーだろう?俺の母、パァールヴァティの化身だ。つまり、お前は俺の妹なんだ」


「何?だが、父はシヴァでは無い。お前の母が私の父と浮気して出来た子が私だとでも言うのか?」


「そうではない。化身は全くの別人格・別の姿で変身したとも言うべき存在だ。だから、其々《それぞれ》の化身ごとに夫がいる。だが、俺にとっては全て母には違いない」


「お前は父親違いの妹だ。そして、流刑ではない。お前達、母娘おやこは追い詰められ殺されかけた。だから兄の大聖歓喜天ガネーシャと共に魔界に逃したんだ」


「それが本当なら何故、母は私に言わなかった?命乞いにしてもひどい言い訳だな…」


「母親から形見をもらって無いのか?」


「この短剣だけだ」


「これを見ろ」

韋駄天スカンダふところから取り出したのは、私が持っている短剣と対になるものだった。


「そんな物が何になる?お前が母から奪ったのかも知れない」


「そこまで疑うなら証明しようがない。お前達を守れなかったつぐないをこの命でつぐなおう」

槍を投げ、短剣もロードの方に投げてよこし、あぐらをかいて目をつぶった。


ロードは剣を一閃して、容赦なく韋駄天スカンダの首をねた。

「お前が実の兄だろうと、そうでなかろうと関係ない。神は皆殺しにするだけだ」

転がった韋駄天スカンダの首を冷ややかな目で見た。


韋駄天スカンダの配下は慌てて逃げて行った。

その少し後にフレイアやクラスタ、ビゼルたち大魔王が続々と現れた。

ゲートも守る必要がある為に、残す者も必要だ。


ルシエラとファルゴにゲートを守らせて陛下の足取りを追う。

まずは情報収集だ。

近くにあった村を襲撃すると、興味深い情報を得た。

ヴィシュヌと言う上神が、若い女を抱きかかえて飛んでいるのを見たと言う。

地図を書かせて居場所は把握した。

天帝の居場所も分かったが、ヴィシュヌのいる場所とは真逆である為、少し躊躇ちゅうちょしたが、陛下の保護が最優先だと思い直した。


村人達は当然、皆殺しにした。

神は1人も生かしてはおかない。

「ヴィシュヌ神は少年の姿をしているが、この天界でも5指に入る強さだ。お前ごとき魔族がかなうものか!殺されに行くがよい」

死ぬ前に、そうののしった者もいた。

だがそんなものは、一向に意に介さない。

もうこれは、魔族か神々のどちらかが絶滅するまで終わらない戦争なのだから。

敗ければ死ぬ、ただそれだけだ。


「地図は手に入れた。ここからは、部隊を2つに分けて進軍しよう」

1隊は、ロードとフレイア、クラスタにミューズの4人が兵を率い、もう1隊は、ビゼルとハルバートにアーシャ、フィーロの4人が率いる事になった。


ロードが先陣を切り、後陣にフレイア、右翼はクラスタで左翼にはミューズを配した。


平原を走ると丘に築かれた陣が見えて来た。

「大聖歓喜天」の旗印が見える。


「大聖歓喜天と言うとガネーシャか。韋駄天スカンダの兄だな?仇討ちに来たか」

行軍速度を緩めて布陣した。


すると、太鼓やシンバルを打ち鳴らしながら戦車が向かって来た。

戦車と言っても、現代の様な大砲にキャタピラを付けたあの戦車ではなく、馬に引かせた屋根の無い馬車の様な物の方なので、タンクでは無く、チャリオットの方だ。


戦車には象の頭を持ち、4本腕で片手に三叉のほこを持ち、もう片手にはアンクーシャと呼ばれる杖を持ち、更にもう1本の腕には右の折れた牙を持っていて、黄金の甲冑に身を包んだ神が乗っている。

大聖歓喜天ガネーシャで間違いない。


「ゲートが破られた報告があったが、ワシの弟、韋駄天スカンダに会わなんだか?」


「あったとも。首ならここにあるしな」

韋駄天スカンダの黄金の兜を見せると、大聖歓喜天ガネーシャは激怒して向かって来た。


三叉みつまたほこを振りかざして魔軍をぎ払い、戦車ごと体当たりして来た。

ロードはほこを弾き返し、大聖歓喜天ガネーシャに一撃を入れた。

しかし、皮膚がぶ厚い上に硬く、かすり傷1つ与えられなかった。


「戦車は厄介だな」

一刀のもとに斬り伏せた神兵から槍を奪い取ると、戦車の車輪を目掛けて投げた。

車輪の穴を通して槍がつかえて、車輪が大破すると戦車がおどり上がって、ひっくり返った。


「おのれ!」

大聖歓喜天ガネーシャが地面を地団駄じだんだ踏んだ。


ロードはいち早く察知して叫んだ。

「全軍、飛べ!退避ー!」


その直後に地面が割れ、裂け目が襲い、魔軍を飲み込んだ。

ロードの声に反応出来なかった魔兵は飲み込まれ、およそ3分の1を一瞬にして失った。


「こいつ…。狂神象ベヒモスに匹敵する強さだな」


「あんな者と一緒にするなぁぁぁ!」

怒りに任せて三叉のほこを振り回す。

受け流し切れずにロードは吹き飛んだ。


「この馬鹿力が」

身体をひねってバランスを取り、着地した。

瞬歩で大聖歓喜天ガネーシャとの間合いを一瞬で詰める。


「神光剣・斬撃乃ざんげきの五月雨さみだれ

無数の斬撃が大聖歓喜天ガネーシャを襲い、ダメージを与えた。


「ぐぅっ」

ひざをつくと、傷を受けた事に怒り狂い、地面を何度も殴り始めた。


地面を殴って発生した衝撃波は、飛んで退避していた魔軍にも襲いかかり、吹き飛ばす。

ロードは、地面に剣を突き立てて、衝撃波をしのいだ。

大聖歓喜天ガネーシャ帝釈天インドラから神軍総司令官の座を奪った事もある猛者だ。


「ぱおぉぉぉん!」

アンクーシャ(杖)を振りかざすと、無数の真空の刃が襲って来た。

避け切れなかった魔兵は、手足を切断され、あるいは胴を真っ二つにされ絶命した。


「今の剣は、剣帝様の太刀筋だ。貴様、一体何処でその剣を学んだ?」


「剣帝は私の亡き父だ」

大聖歓喜天ガネーシャが握る杖を腕ごと斬り落とした。


「ぐぁぁ、うぉぉぉ…」


「痛いか?我が父、我が母はそれの何百倍もの痛みに耐えた」

トドメを刺す為に、にじり寄った。


「け、剣帝の娘だと?馬鹿な、確かにあの時、貴様ら母娘おやこを殺したはずだ」


「ふふふ、やはり嘘だったか…。貴様の弟、韋駄天スカンダが私を実の妹などと言ったのでな。本当に兄だったなら、ほんの少しだけ良心が痛んだよ。あははは」


「貴様ら悪魔に、良心などあるものか!」


「ふん、もし立場が逆であったなら、どうする?父がおとしいれられず、私が天界に残っていたなら。魔界に堕とされたのが、お前だったなら。悪魔はお前達の方だろう。母の背にあった刀傷は、お前がつけたのだな…」


ロードの静かな冷たい怒りによって、大聖歓喜天ガネーシャは、寒気を感じた。

「神光剣・奥義 」

剣にまとった冷気で腕を斬られると、大聖歓喜天ガネーシャの傷痕から一瞬にして凍りつき、割れる様に砕けた。


「ぐぁぁっ」

恐怖にゆがんだ顔を引きらせながら、後退あとずさりする。


「ま、待て!命だけ助けてくれるなら、有益な情報をくれてやろう」


「さっさと話せ。内容によっては考えてやる」


「わ、分かった…。剣帝様がおとしいれられたのは、天帝の嫉妬によるものだ。天帝は、お前の美しい母にれていた。剣帝様は天界一の剣技をたずさえ、その名声は天を突く勢いで、天帝をもしのいでいた。剣技も名声も美しい妻も天帝は待ち得ないものだった。他人ひとが持つものはねたましいものだ。天帝はお前の母に強くアプローチをしていたが、なびく事は無かった。おしどり夫婦で有名だったからな。浮気などするはずがない。あまりにもしつこいので、夫に相談し、怒った剣帝は剣を抜いて天帝に詰め寄ったのだ。その報復で剣帝が謀叛むほんを起こしたと、でっちあげて処刑した。お前の母は、天帝の性奴隷にされる所だったが、逃げ出したので俺達が捕えに行かされたが、魔界に逃げられてしまったのだ。背中を斬ったのはワシじゃない。母の化身・カーリーだ」


「父がぎぬであった事は、お前達は知っていたのか?」


「も、勿論だ。剣帝様は天界を脅かす魔物を退治し、貧しい者にはほどこし、慈愛に満ちた神々のかがみだった。だが、天帝に逆らう事は誰も出来ない。ワシだって命令で仕方なくやったのだ。まだ赤子だったお前を抱いた母を傷付けるのが忍びなく、手心を加えたから魔界に逃げ延びられたのだ。それに免じて命だけは助けてくれ!」


ロードは天を仰いで涙を流した。

あぁ、父も母も罪など犯してはいなかったのだ。

天帝に復讐し、父の名誉を回復してみせると固く誓った。


カッと目を見開いて、一閃すると大聖歓喜天ガネーシャの身体は凍り付いて行く。

「や、約束が違う…」


「約束?私は考えてやると言っただけだ。神は皆殺しだ…」

首が凍った所で剣を振るって大聖歓喜天ガネーシャの首を斬り落とした。


魔兵は勝利の歓声を上げ、浮き足だった神兵を斬殺して行った。

ロードの命令は1人残らず皆殺しで、捕虜は不要だからだ。


ヴィシュヌの居城まであとわずかの距離だ。

だが、息子2人も殺された恨みを晴しに、母親か父親のシヴァが立ちふさがるかも知れない。

聞けばシヴァは、ヴィシュヌと強さは互角だと言う。

厳しい戦いが続くだろうと予測し、兜の緒を締め直した。

次の第2章【連れ去られた皇帝】からは、途中保存が出来なくなる為、毎日少しずつ更新・編集を繰り返して参ります。

予めご了承くださいませ。

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