表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/60

09.傷付いた



「――私はこの国の、騎士です」


「誰の護衛だ?」

 テオドール殿下の質問の意図は分かり切っている。


「もっ!申し訳ありません…!!」

「んん?なにか悪い事でもしたのか?ランベルト…」

「…ひぇ」

 小さい子どもを諭すような、ゆっくりとした声色にゾワゾワする。


「訳を話してみろ、酌量の余地があると良いがなぁ」

「…ぅぐうっ!」

 テオ殿下が怒っている、かつてない程。


 護衛騎士の任期は長い。


 余程その騎士に問題がなければ、一人の方だけに仕えて定年を迎える場合もある。

 それは護衛対象の個人情報に多く触れるからだ。生活に密着する為、知ろうと思えば何でも知れる。

 だから軽々しく何人もの主を渡り歩くことはない。


 ――特に王位継承順位の近い者同士の間で、護衛騎士が変わるなどありえない。


 俺は過去で、三年間テオドール殿下の護衛を勤めた。

 多分あの駆け落ち事件がなければ、生涯そうだった。

 そして今日、新たにエリアス殿下の護衛騎士に任命された。

 過去では秘かにエリアス殿下の護衛になりたかった俺は。急に俺を指名したテオドール殿下の暴挙に拗ねて、数日は口をきかなかった。


「お前からエリアスの前に出たんだろう?俺も参加していればなぁ…」

「…エリアス様が」

 ――誰かに殺されるかもしれないから、なんて言えない。


 テオ殿下は俺が言うなら、ある程度の事は信じてくれる。

 奇想天外な話でも、多分。


 だがこの第一王子は俺に甘く、実の弟にはとても厳しい!

 本当に九つも離れているのか?と思う程、大人げない。弟を次期国王と期待しているからと言っても、余りあるものがある。

 

 俺が弟王子の駆け落ちに同行して、顔も見ない人間に殺された、なんて言ってみろ。

 "そんな事にランベルトを巻き込んだエリアスが全て悪い"と言うに決まってる!

 そこは伏せて”エリアス殿下の命が狙われているかもしれないから”と言っても。

 ”危ないからランベルトは私の傍にいろ”と言われる。絶対に。


 それに記憶の一部をぼかして伝えるなんて芸当。俺には到底できない。



「エリアス様の……っ体調が心配で!」

「そうだ…そうです!咄嗟に!顔色が悪くて思わず…よく見ようと前に…」

 しどろもどろ…自分でも苦しい言い訳だと思う。


「ふむ、では心配して進み出たランを、護衛志願だと勘違いしたエリアスが悪いな?」

「!?いいえ!!?エリアス様は悪くありません!!」


 それに騎士側にも最後その剣を受け取るか、選択の自由がある。

 殿下の前に出たのも、剣を受け取ったのも、俺の意志だ。俺はエリアス殿下を守る。

 ――今度こそ。


「テオドール殿下、お許しください!!俺は…私は、エリアス殿下の護衛をしますっ!」


「…”護衛をする”か、護衛騎士になるでもなくか…うーむ」

 すこし考え込んだテオ殿下が唸った。

「しかしなぁラン、せっかくした”約束”を破られて、俺はとても傷付いた」

「はっ、申し訳ありません…!」


 テオ殿下に”護衛任命を数時間だけ待ってほしい”と、お願いしていた。

 それなのに俺は、待ってもらった数時間の間でエリアス殿下の護衛に任命された。重大な裏切り行為だ。怒って当然だ。逆にテオドール殿下がここまで静かなのが、不気味なほど。


「だから今夜は、俺が飽きるまで付き合ってくれ」

「えっ?…なにに……?」


 テオドール殿下が俺を相手に飽きる事はなく。

 結局翌朝やっと解放され、寮では朝帰りと揶揄われた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ