死と入眠の類似性とさばの味噌煮缶で作る味噌汁
真夜中、もう眠い。が、このまま寝るのは何か物足りない。
寝るということは死の予行練習だ。死との違いは朝目覚めるかどうかだけである。
だから、眠る前にやり残したことをやるべきだ。
そうだ夜食を食おう。別に思いついたわけではない。いつものことだ。
さて、何を食おうか?
インスタントラーメンか、そうめんか、うどんか、いや、今日は炭水化物を食べ過ぎた。
そういえば、さばの味噌煮の缶詰があったはずだ。それを食おう。
パキ、カチャ。さば缶を開けた。
おもむろに箸をつっこんで、かたまりを崩して食べる。うまい。
マヨネーズをちょびっとかけて、再度食う。コクがあってうまい。
一味唐辛子をぱぱっとふって、再度食う。辛味よりは唐辛子の香りが良い。うまい。
そうだ、誰かが言っていた。さば缶で作る味噌汁がうまいと。
最後のひと切れのサバを味噌汁にすることにした。
手鍋に水を入れガスの火をつける。沸騰したら、缶の中身を汁ごと入れる。
だし入り液状味噌をどばーっと入れる。火を止める。
椀に入れ、飲む。くらっときた。くらっとくるほどのうまい。
これは濃厚だ。だし入りの味噌の旨味が加算された。
沸騰した湯にサバを入れながら、味が薄まりそうだと思っていた。
なんだかんだ缶詰はそのまま食べるのうまいと思っていた。
それらは間違った先入観だった。
だし入り味噌と、缶詰の汁との相乗効果がある。はっきりとある。
このまま飲み切るのも良いが、キャベツがある。この濃厚な味をキャベツに吸わせてやろう。
再び手鍋を火に掛け、キャベツをちぎって入れる。ひと煮立ちするのを待つ。
予想通りだ。キャベツの歯ごたえにより、ちゃんと食事をしている気持ちになる。満足感がすごい。
さばの味噌煮缶を中心に駆け抜けた。
一日を一生に例えれば、この人生に思い残すことはない。
明日という来世に思いを託す必要はない。この人生で満足を得た。
おやすみなさい。