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ショートショート  作者: はるのれいん
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心霊スポット

第1章 心霊スポット


「何か暇だよな」

唐突にマサキが口を開いた。

「あー、まあ、言われてみればそうだよなあ」

ジュンジが同調するように言った。

「お前もそう思わないか?」

マサキが俺に同意を求めてきた。

一応、空気を読んで答える。

「どっか行く?」

「もうすぐ0時か·····」

マサキが時計を見ながら言った。

そして、続けてこう言った。

「極秘の心霊スポットがあるんだけど行かないか?意外と近いぜ」

マサキはニヤリと笑った。

「おー、良いねえ。行こうぜ」

ジュンジが俺を見ている。

「あ、うん。行ってみようか」

「よし、決定。じゃあ、すぐに行くぞ」

マサキは車のキーを掴むと勢いよく立ち上がった。


住宅街を抜けて30分も走れば民家も無くなってきた。


そして音も立てずにゆっくりと車は止まった。

「着いたの?」

俺は窓ガラスに顔をくっ付けるようにして辺りを見回した。

真っ暗でよく見えないが、建物があるのは分かった。やけに薄気味悪そうに見えたのは、心霊スポットというクダリのせいだろう。

「行くぞ」

マサキがエンジンを止めた。

「駐車場に入れたほうが良いんじゃない?」

俺がそう言うと、ジュンジが口を挟んだ。

「あんな所に止めて幽霊に取り囲まれたりしたらどうするんだ」

「ジュンジ、何?もうビビってるの?」

マサキはジュンジの肩を二度軽く叩いた。

「さあ、行くぞ」

レストランのドアには鍵がかかっていた。仕方がなく俺たちは外をぐるりと一周してみることにした。

「何だよ、マサキ。何も出ないじゃないか。しらけるよなあ」

さっきバカにされたからか、ジュンジは強がってみせながら助手席にドンと座った。

車が動き出した。後部座席に座っている俺の隣の男は誰なんだろう?

何だか相当気になるんだけど·····



第2章 タレコミ


朝一から上司に呼び出しされた。

「うちの会社は副業は禁止だと知ってるよな?」

「え、まあ、はい、知ってますけど」

「そうか。昨日なあ、他の部署から聞かされたんだけど、YouTubeやってるんだって?」

「え?」

「え?じゃなくて、やってるのかやってないのかを聞いてるんだけど」

「あ、はい。やってます」

これで、万事休すか。クビなんだろうな。

「で、昨夜、俺も見てみたんだけど、再生回数なんて二桁だし、全くコミニュケーション能力が無いよなあ。営業成績がダントツで悪い理由が分かったよ」

「じゃあ、そういうことで」

その後、僕は工事現場勤務になった。

助かったのかどうか分からないが。



第3章 注文の少ないレストラン


隣県までゴルフに行った二人は、家に帰る前に晩飯を食うことにした。

どうせなら行ったことが無い店に入ろうと珍しく二人の意見が一致して、住宅街より少しずつ手前の道沿いにあった小さなレストランに入った。

カランコローン·····ドアを引くと懐かしい音が鳴った。二人は顔を見合わせてニコリとした。


店内には他に客は居なかった。晩飯時には少々早い時間帯ゆえ、特に気にもしなかった。

ウエイトレスがお冷やを運んできた。メニューは?と聞くと、テーブル上を指差した。テーブル上には薄い紙切れが置いてあった。

「これがメニューか?」

二人は共に呆れるように呟いた。

紙切れには、カレーライス、チキンライス、ハンバーグセットと書いてあった。

「これだけ?」

レストランにしては甘利にも少ないメニューに目が点となった。

「今さら出るのもなあ。仕方がない。この中から注文分するか」

二人はハンバーグセットを注文しようとウエイトレスを呼んだ。

「二人ともハンバーグセットを」

「今日はチキンライスしかありませんのでチキンライスを注文して下さい」

ウエイトレスは強い口調で言ってきた。

おいおい、何かおかしくはないか?

レストランなのにチキンライスしか無いなんて、そんな店は聞いたことがないぞ。

男はもう一度聞いてみたが、答えは同じだった。

チキンライスが到着した時に、しつこいようだがまた聞いてみた。

「こんな客が来ない店で何品も仕込む訳が無いじゃないですか」

ウエイトレスは乱暴に言い放った。

二人は店内を見回して、「それもそうだな」と言って食べ終わるとそそくさと出ていった。



第4章 サンタクロースのプレゼント


クリスマスイブの夜、眠りにつけない女の子はサンタクロースと遭遇した。

絵本と同じ格好に女の子は興奮し、サンタクロースに抱きついた。

「良い子にしてたかい?」

「うん、ずーっと良い子だったよ」

サンタクロースは「それじゃあ」と言って背中に抱えた袋から一つプレゼントを取り出した。

「さあ、プレゼントだよ」

「やったーー」

女の子は大喜びした。

「開けていい?」

「開けてごらん」

女の子は包装紙を引きちぎると箱の蓋を開けた。

「チッ、何これ? こんな変なのいーらない」

そう言って、プレゼントをサンタクロースに投げつけた。


それから10年が経過した頃、王家より御触れが出た。

「この剣の飾りを持っている人を王子の妻として迎える」

そこには、見覚えのある剣の飾りの絵が描かれていた。女の子はあの時のサンタクロースを町中探し回った。

女の子は、死ぬまで貧乏だった。



第5章 宇宙人に捕らわれた話


日曜日の朝、病院へ向かおうと家を出た時に青い光に包まれた。

男は、ミサイルでも飛んできたのかと思ったが爆発音や衝撃は感じられなかった。だが、一つだけ違ったことがあった。体が宙に浮いていくのであった。青い光の中をまるでエレベーターのごとく上へと上がっていく。

見下ろすと、自分の家がミニチュアのように見えた。


上がっていく先を見上げると四角い物が浮いていて、どうやらそこに吸い込まれて行っているらしい。咄嗟に、これは宇宙船だなと理解した。

扉が音もなく開き、男は中に取り込まれた。

何かガヤガヤと音が聞こえる。それが何処からなのかは分からないが、とにかく多数の何かが居るのには間違いないと思った。

人体実験をされるのか。男の頭に恐怖が過った。

ガヤガヤはまだ聞こえる。男は足下を見た。すると、身体中から足というか手というか、それとも触手というか、兎に角そんなものが多数に生えた生物が何かを話し合っているらしい。

男は、その中の一匹を右手で掴むと、自分の顔の前まで持ち上げた。

「醜いよなあ····凄く」

男は生物の姿をまざまざと見ながら呟いた。

足下の生物は大騒ぎしている。恐らくだが、自分達よりも小さな生き物を捕獲したつもりだったのではないかと思う。それが予想外に大きくて右往左往しているのが今の状況らしい。

男は、その一匹を掴んだまま船内を歩き回った。何故か天井は高く、男が歩くのには不自由しなかった。

足下の奴らはずっと付いてきている。そうこうしているうちにオペ室のような部屋に行き着いた。

男は室内を見渡しながら考えた。幾らなんでもこんな醜い姿では可哀想だ。

男は外科医であった。

ベッド横のワゴンの上に手術道具みたいな物を見つけ、

「何だ、一通り揃っていそうだな」

と一人納得した。

男は、いくつかある液体を嗅いでみた。そしてその中から一つを選ぶと、ベッドの上に置いた一匹の生物に嗅がせてみた。生物の動きが完全に止まった。

男は生物の触手を片っ端から切り離していった。そして、この位は残しておくかと数本だけは切り落とすことを止めた。


男の行動を見て足下の奴らは慌てて男を宇宙船から解放した。男の手にはオペを施した一匹の生物が握られていた。生物は怒っているのか身体中が真っ赤になっていた。男は地上に降りると近くの海に放流した。

これがタコの歴史の始まりである。



第6章 占い師


人通りの多い道路の街灯の下にはズラーっと机が並べられている。それらを よく見ると、一つ一つの間隔には規則性があるようで、5人までは客が並べるようになっているらしい。まあ、どこも客はそう居なさそうではあるが。

週末だし、特に急いで帰る理由も無いのでどんな占い師が居るのか観察しながら通り過ぎることにした。

兎に角、色んなバリエーションがある。所謂、一般的に目にする水晶とか手相とか。その他、訳が分からなさそうなやつとかも一部紛れ込んではいるが。

その中で、一人の女性の占い師と目が合った。即座に、マズイと察知したが、時既に遅しで、無理矢理と腕を掴まれて安っぽい丸椅子に座らされた。

そしてすぐに始まった。そう、不安にさせる常套手段のトークが。

それはさておき、貴方は余命3ヶ月と言われたのには驚いた。先月、会社の健康診断を受けたばかりであったからね。だから、それは無いだろうと心の中で苦笑したりした。

だけど、占い師は説得するように食い下がった。結局のところ、この炭酸水を毎日飲めば長生きできると、そういうことらしい。

勿論、買うはずもないが。

それから3ヶ月が過ぎた頃、その占い師の前を通ってみることにした。どんな顔をするか楽しみだったからだが、多分、知らぬ存ぜぬを貫くことは予想していた。

「あれ、この辺りだったはずだが」

あの占い師の姿が見つからない。凄く恰幅が良かったのですぐに見つかると思っていたのだが。

仕方がない。隣の占い師にでも聞いてみるか。

隣の占い師はあっけらかんに答えた。

「ああ、あの人なら1ヶ月前に亡くなったよ」


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