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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第五十二章 愛はどこに?

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94 お前こそとお前も言う



そして、いろいろ教えてくれる。


「プールとか概念が分からない子もいるから、初めての子は着替え段階からのプールに入る際の指導の指導もするんだって。その仕事もあって、40分の講習にティガも入っている。」

「え?あいつ調味料会社は?!」

「働きづめで癒しを求めていると言っていた。水泳好きなんだとよ。」

アーツ職員ではないが、ティガも元々はスポーツ系でBチーム上位なのだ。初期はファクトやクルバトたちより運動ができていた。


運動がストレス解消とか、イカれた男にしか見えないと思うリギルやファイ。そう、実はパーカのフードに隠れてリギルもここに参加させられていた。



「響さんもルオイの知り合いの大房の子たちと来てたぞ。」

「マジかーーー!!?」

聞き捨てならないキファ。

「マジか?水着?何系?」

「うわっ。最低。最悪。変態。絶対バイトしないで。」

ソラが嫌がるが、この男は響以外に関心はない。響も忙しいのでもうプールで会うこともないであろう。

「えー?響さんのことだから、外で見学に決まってるよ!」

と、元気にラムダが予想するが、ファイは言ってしまう。


「え?響さんも入ってたよ。まだ乳児や保育園児も数人いるんだもん。みんな代わる代わる子供見るでしょ?」

「……マジ?」

一瞬全員固まる。

「写真見る?」

ザザッと、ファイの周りに男子が集まりさらにドン引きするソラであった。



そこでファイのデバイスを覗きこむと………

「うお!なんだこれは!!」

「ヤバい!」

さらにみんなデバイスに顔を寄せる。



そこに写っていたのは、タラゼドの従姉弟の子供と膝下水位のプールで遊ぶ響。タラゼド家とはしばらく距離を置く予定だったのに、南海の子供と遊んでいたファイたちと響の元に、ルオイたちが押し掛けたので仕方ない。


みんな落ち込む。

「………。」

「なにこれ?これは法律で許されてるの?」

「ひどくね?」

響は全身濃い目のグレーで長袖の服に長ズボン。その上にブカブカTシャツまで着て農協の粗品の柄物帽子を被っている。帽子も顔以外全方位首まで紫外線を防御している優れ物だ。ツバも大きい。

思っていた水着と違う。


「別に腰や首から巻くパレオとかみたいなのでいい。ベガス住人なら巻いていそうだし、響さんには何も期待していない……。でも、これはひどい…。」

「………。」

「海や川でもあるまいし、他の子もプール内でパーカーなんて着ていいの?」

「そうだよな?せめてバカンス感とか出してほしいのに。」

「これ、帽子以外全部水着だよ。」

ファイが冷たく言う。

「マジか?!」

帽子だけは農協の本物の粗品だ。


海も泳げる川もない内陸アンタレス市民。ネットや漫画で見た水遊びと違うのでがっかり感がハンパない。普段の大房女子よりも着込んでいる。


紫外線を嫌うアジア領域の女性たちが肌など出して泳ぐわけがないと、妄想大房民は知らないのであった。デバイスの写真や映像に映る他の女性もみんな長袖かハーフ丈だ。

「あんたたちひたすらバカなの?今時テーマパークのプールですら水着なんてこんなもんだよ。彼女いないからそういうところに遊びに行ったことないんでしょ?」

「俺は知っている。幼馴染たちと行ったことあるぞ。」

ファクトが言うが、リウやタキなど男友達とである。時々ユリやヒナもいたが彼女たちも着込んでいた。



「はー、でもいいな。響さん楽しそう。蜂の巣バスターを思い出す………。あの頃はツーショットも撮れたのに…………」


哀愁に浸るキファに、その光景を見ていた石籠(いづら)が突っかかった。

「遊んでる場合かよ。」

「……。」

キョトンとした顔で、それに気が付くキファ。


「で、またツンケンするの?心の余裕が大事だろ?」

キファがわざわざ聴こえる声で言ってしまうので、石籠が冷めた目を向けた。

「………」

「何?石籠センパイは俺を追い出してうまくいってるわけ?あのじいさんのお気に入りになった?」


「…あ゛?」

「え?何?こわっ。こっちは楽しくやってるから、がんばってね~って応援しただけなんだけど。」

「………。」

石籠はイラつく。


「お前こそ大丈夫なのかよ?女とあれば見境なくしっぽ振ってんのか?だいたいここではお前がセンパイだろ?」

デバイスからチラッと見えた女性がなぜかオバさんだ。都会のプールで農家のオバサン帽子を被っている。こいつの女の趣味は何なんだ。

「はあ?俺はベガスに来て好きになったのは一人しかいないんだけど。石籠センパイこそ何の妄想してんの?心の中汚過ぎない?俺はさ、純愛なの。分かる?心が汚れてないの。」


「え?弟妹枠に収まったんじゃないの?」

陽キャ同士の会話には口を出さないラムダが思わず言ってしまうので、キファは告げる。

「確かに響さんはモテる。が、しかし!

()()にもしものことがあれば、最後に俺が受け止める。超ドラマ的展開だろ?」

「奴ら?」


「あちこちに該当者がいる……。」

クルバトの一言に石籠たちは戦慄する。あちこちとはどこだ。毎回登場する地味女性に他意はないが、ベガスに来るとみんな揃いに揃って真面目で地味系が好きになるのか。何の洗脳だ。恐ろしすぎる。


「最後にって……待ちが多すぎるよ……。」

「何人葬るんだ?」

「待っていてもキファの番は来ない気がする。」

「全員突破しても、新しいのが現れてキファの番は来ない。」



そこでラムダ会心の一言。

「リーオさん諦めたよ。」


「ムォッ?!!!」

「おおおおーーーー!!!リーオーー!!!」

「ウソだろ??」

「リーオ慰めの会をしよう!!焼肉仲間だ!」

「今度こそ俺もサーロインを食べる!!!」


「永遠の弟妹枠の方が安全圏だよ。それだと嫌われないし避けられない。安全圏にいなよ。」

アドバイスにキファも答える。

「だから安全キャラで保ってんだろ??それに突破するんじゃない!奴らが倒れるのを待つんだ!最後の瞬間まで!三代将軍で言えば俺は待つ男だ。そいつが最後に国を治めただろ?」

キファは熱血先生調で解説するが、みんな聞かない。

「そう?キファならどのみち、いつか嫌われそう。」

「だいたいあいつら、やられるタマか?」

関わりたくない顔をした石籠の横でみんな好き好き言っている。



「…お兄さん大丈夫ですか?」

妄想チームの横で、引きまくっているかわいそうな石籠たちにファクトは声を掛けた。

「お兄さんたちも女性が恋しいお年頃でしょうが、今回は河漢ですら頑張っているので試用期間は耐えて下さいね。」

と『傾国防止マニュアル』をチラつかせる。この間、恋愛交際も性関係も禁止だ。その後もアーツに席を置く限り、不貞はするなと再三言われている。


「石籠さんたち……。響さん(このひと)はダメですよ!?」

ラムダはオバサン響の写真を指して、必死に庇う。これ以上響さん問題が拡大したら、響の方が疲弊して本当にベガスからいなくなってしまいそうだ。


「は?何言ってんだ?!仕事はベガス(ここ)でしても、結婚は絶対ここではしない!!!」

石籠は言い切る。

第1弾はここに永久就職するつもりなのか?こいつら恐ろしすぎる……。

「……ここに住んでいる人間が、結婚の対象内だとでも思っているのか?」

石籠の友達も反論した。


だが、南海民もユラス人もまさか初期アーツ本人たちでさえ、ここで所帯持ちになるとは誰も思っていなかったのだ。むしろ2週間で生き残り半数以下になるはずであった。未来は分からないものである。



「えー。そんなこと言って、絶対落ちる!みんな落ちてるし。」

と、近くにいたシャムが加わってKY発言をしてしまった。

「……()()()とか………アーツ(ここ)の人間はどうかしてるんか??」

「みんながみんなとかおかしいだろ???」

別の友達もビビっている。


「女子アナ響を見たことないからそう言えるんだ……。あれを嫌う男がいるか?」

「イオニアの鑑識眼は間違っていなかった。」

「あの時点で一線引いたシグマとローは賢かった。」

「不毛な愛に片足入れずに済んだからな。」

地味女がモテすぎるので、グループ石籠は許せない。

「は?お前ら、女見たことないのか??」

第4弾で来た数人の女性の方がよっぽどセンスもよく美人だ。



そこでファクトは、またあることに気が付く。


「てか、あの……お兄様たち()()まで考えているの?先、結婚っておっしゃいましたよね?思ったより真面目なんですね。」

「はあ??」

「ほんとだ。真面目だ。」

「キファよりよっぽど女性に対して真摯だね。」

「はあ?だから俺は響さんだけって言ってんだろ?今は姉さんを見守るかわいい弟だけど。」


石籠たちはアンタレスのトップ層。霊性も高いため、雑霊を寄せるのが嫌でなんだかんだいってこれまで彼女も作っていないのだ。もともとの基準や家庭観が高いと、本質的にそうなる。

「何言ってんだ!!」

「あ、怒ってる怒ってる。」

「違うよ。照れてるんだよ。」

みんな口々に言うので身の置き所の無い石籠。

「あああ゛???!!」


「ほら、タウとか責めておいてお前たちの方が怒りっぽいじゃん。キファはしょうもないけど。」

見物クルバト書記官もなんとなく感想を述べた。

「は!!??それとこれとは話が違うだろ??」

「違わないよ~。」

自分より背は高いが顔と態度がいかにも年下な男、ファクトが言うので頭にくる。

「お前ら本当にマジムカつくな!!」




そう言って第4弾と、一部陽キャ寄り妄想チームとの間にも不毛な亀裂が生じたところに………


またチコが来てしまった。



「ふざけんな。」

バゴ!と叩かれるキファ。

「あてっ!チコさん何するんですか?!」


「何度も言っただろ。お前がすべて悪い。」

「何で?!!」

とにかく悪いのはキファである。理由はない。


「自分が何かできるからと、人を煽るお前が悪い。」

「俺の方が無能扱いされたのに??言われるがままに大人しくしてろと言いたいんですか??」

「してろよ。」

「あー!!マジひどい!!俺、リーダーでも責任者でもないのに!!」

反抗はしてみる。



…しかし、そんな規則だらけケンカだらけ反発だらけのアーツだが、未だ脱落者はいない。



●蜂を獲って、ツーショットも取って楽しかった頃。

『ZEROミッシングリンクⅡ』12 また蜂の話

https://ncode.syosetu.com/n8525hg/14

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