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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第五十一章 変わる僕ら、僕らは変わる

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92 ファイ的には2

前回の閑話なのに、続きます。



みんなが呆然としているのに、ファイにしては珍しく、まるで責任者のように真面目に真剣に話している。


そんなファイにも呆れるが、周囲としてはユラス軍を困らせているこの現状にも何とも言えなくなる。


そんなことをしてもいいのか。



「ほら。お世話になったし、私たちの試用期間が終わった時に女子会をしようと思って…。

ムギがパジャマパーティーもしたことがないって言うからずっと練ってて。それで全員色違いのギンガムチェックにして、型違いのドレスを考えてたんです。」


「?」

何を言っているのか分からないユラス軍一同。サダルだけは、くだらないことを言っているのだとよく分かる。


「お礼にサラサさんの分もイメージしたのにリーブラが怒るからさ……。ライやリーブラにも作ろうと思ってたんですよ?リーブラはピンクで!……私は青です。」

と、残念そうに言うが、サラサの名前まで出て来て遂にアセンブルスが「サラサ?!」と反応してしまう。


「でも、リーブラに言われちゃったんですよ?上流階級で国の引率者なのに、そんなパーティーなんて、気品を落とすことするわけないだろって。リーブラにだよ?」

「それはリーブラが正しい。」

とファクトが言うと、

「何?私が青は不満??」

と見当違いのことで怒っている。ファクト的には色などどうでもいいし、まずそのメンバーがそんな理由で集まることはないであろう。



「で?」

「えー!議長ホントひどい!このスケッチ見て悟って下さい。このドレス、スレンダーに近いマーメイドラインでステキじゃないですか?」

正直素人が見ても下手くそなデザイン画なのだが、どうにか膝丈とロングの合わせドレスというのが分かる。


「ユラスもベガスも膝を出したスカートは履かないからは膝下丈で、さらに上から被せてロングドレスにして……。これで女子会の撮影したかったのに!」

「ファイさん。コスプレパーティーって言ってませんでした?」

「あ!議長。心配しないで下さい!奥様を他の男性に晒したりしませんよ?!

ファクト!あんたも悟りなさい!パジャマパーティーって、女子だけで楽しむの!」

何を悟れと言うのか。しかも、あの頃はまだ、夫サダルの存在さえ認識されていなかったのだ。奥さんもクソもない。


「それでね、こっちは響さんなんだけどね。黒チェックを響さんに持って行くかチコさんに持って行くか悩んだの!どっちもかっこいい系だし、やっぱりカチッと決めないとダメでしょ?で、議長なら紫と黒、どっちをチコさんに持って行きます?」


「響さんはかわいい系にも化けそうですけどね。」

いきなりサレトが自ら発言するのでファイも熱が入る。

「やっぱ紫は響さん?」

「チコさんに紫のチェックはかわいすぎるかな?威厳の面でだめでしょ。」

「このスケッチはあくまで型のイメージであって…うーん。ここから発展させて、式典で着るのは無地の紫でもいいでしょ?無地の黒だと今度は重すぎるから。そこんところは専門職の人たちが上手くやってくれるし。カイファー女史でしたっけ?

ほら、こんなに考えたんです。」

と、他のスケッチブックもパラパラめくると、レサトが採点していく。


「これはユラス的にNGですね。背中出し過ぎです。こっちはギリギリ行けるけど、今はニューロス接続部分を隠さないといけないし……。」

なんだかんだ言って『ゴールデンファンタジックス』を始めてから、レサトも装備の微妙なデザイン性に余念がないのだ。


いきなりレサトが語りだすので、サダルが睨んだ。

「サレト。そんなに饒舌に語れるなら藤湾でカーフを手伝え。そして反省していろと言ったはずだ。」

「……。」

サレトは姿勢を正して黙り込む。



「あれ?議長もしかして嫉妬ですか?」

「……。」

楽しそうなファイを、アホなのか?という顔でサダルが見る。

「高校生に嫉妬ってどうかしてます?」

「俺、大学生なんだけど。」

せっかく煽っているのに、レサトがどうでもいい修正を入れるので話が続かない。


と、そこで響さんアンテナが凄いキファが、スケッチブックを見たがるがファイが秘密だと追い払った。

「あとで見せてもらえ。」

とクルバトはアドバイスしておく。



「ファラソン・ファイ。話はそれだけか?」

「ひっ~~!!!こわ!なんでフルネーム知ってるんですか?もう私のファンなんですか??」

サダルは、アーツ、南海青年、VEGAや藤湾の主力全員の名と経歴を記憶している。

「とにかく、約束は果たした。アーツの前なら一回で終わりと。」

「私が見てないのに~??」


そこでファクトがまとめる。

「ファイ。議長夫婦の仲を取り持ちたいなら、ファイが見た見ないは関係なくない?」

世間に夫婦仲を周知させるために、イベントごとにキスをしてくださいとのことだったはずだ。本来アーツすら関係ない。多分。


「~っ!!」

一度も見ていないので悔しすぎるファイである。

「その約束を捻じ曲げて、回数を凝縮しろって脅されたのに!!嘘つき~!」

「それで乗り気だっただろ?私の前でとか、アーツ河漢はダメとかなかっただろ?」

「えー?そんなの言わなくても分かるじゃないですかー!」

分かるわけがない。が、ファイが認めたことをファクトは確認しておく。


「あきらめろ、ファイ。よく分からないけど議長の方が勝っている。口車に乗せられたのが悪い。」

「ファクト、ひどい!そっちは交渉の手馴れなのに?!」


そして、サダルは考えてファクトたちを見た。

「ファイに頼まなくとも、考えてみたらラムダやファクトでもいいかと……リゲルもいるしな。」

ファイに頼みごとをしていたのだが、他の下町ズでも大丈夫そうだ。


「ぎちょー!!ダメー!無駄に賢くならないで下さい!!」

「ファイ。言ってることの自覚ある?」

ファクトでも失礼だと分かるのに。


サダルは無視して立ち上がった。


「あー、議長待って!!」

「………」

冷たくファイを見る。

「でも、スケッチはどうです?お付きの女性たちに提案、相談しておいてください!」

「……。」

そんな事、カイファーたちも再三チコに言ってきた。女性らしくしてほしいと。策も練ってきた。


それでもすり抜けて行くので皆あきらめているし、ユラス人も結婚後ひどいことをしてきた自覚があるのであまり強く言えないのである。

無言で去っていくサダル。



「……悔しい…悔しい!!」

何が悔しいのか分からないが、机に伏して怒るファイをファクトは慰めた。

「きっと欲望が透けて見えていたんだよ……。」

「黙ってて!」

「ファイ!そのスケッチを見せろ!」

キファとクルバトが乱入する。

「見ないで!」

「あほか!俺がベガス的に合格ラインか評価してやる!」

と、無理やりスケッチを見た。

「やめてー!!」


「……。」

が、絵が下手過ぎて若干理解不能であった。

「…ファイ。AIに任せるか、マネキンベースに書き込んだ方が良くない?」

クルバトがアドバイスするが、ファイは下手でも絵を描くのが好きなのである。

「仕事や外注ではそうしてるから、もう黙ってて…。」




遠くでのやり取りにやっと関心を持ったチコ。

「アセン、あっちは何の話をしていたんだ?」

「今度の式典、洋装のドレスにしますか?という話です。」

「…………?」

なぜアーツでそんな話に?と思うし、絶対にお断りであった。





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