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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第五十一章 変わる僕ら、僕らは変わる

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87 みんなお友達。多分



ファクトには見える。


青い光。青い狼。



東方の国が。女の国が。




理不尽な犠牲になってもそれが故郷のためだと耐え、病気になり、時に殺され、打ち捨てられ死んでいき……それでもまた手を合わせて、次の浄土を願って消えていった女性が星のように多かったからだ。


怨む者もいた。だから歪むものもある。それでも、それは怨んで当然な出来事だったから。


東方には神の手も届かなかった。

いや、届いた者は全て殺されたのだ。



だから愛もないはずなのに…

希望も見えないはずなのに………


けれど、なぜかそこにはそれでも祈る者が多かったから。


それがいつしか天啓に叶って、西に逃げ切った狼は今度は青い龍に乗ってここに来たのだ。


蛍惑はその経路だ。

蛍惑は男の国であり僧兵の國だが、旧時代に身を売られるため奴隷商に運ばれる厳しい道すがら、奴隷商の長を亡くし彷徨った女たちが産み落とした地でもあった。


足も千切れるほど寒かった北の国。




「もっと言おうか?」

響たちはもっと残酷な事実を知っている。


蛍惑も一時代にたくさんの犠牲者を出した。



「……響さん、やめよ?」

ファクトが響の肩を叩く。


「………もういい。」

「響さん?」

「いい。その動画も残せばいい……。」

「はい?」

リギルは停止中なので、ファクトが臨時対応する。



「その代わりチコを貶めるのはやめて!せめてきれいな画像で、淑女として紹介して!!」


「は?」

それは違うと思う野次馬の皆さん。



「あの、響さん?そもそもチコさんがニュースに映像を残さないから、ひどく書かれるんですよ?」

寮に来ていたシャムが部屋の外から覗き込んで説明してくれる。

「布で隠すから…。」


なにせ美女というウワサと恐ろしい豪傑という話が混ざり合って、チコのイメージは余計にこじれている。

昔ゴシップニュース社がスクープ写真をキャッチ。バッチリ写された移動中のチコ・ミルク・ディーパは、美しい影武者であった。あの時は必要上、東アジアにいるという状況にしたくて影を送ったのだが、髪だけ似せたので後で影と分かってしまう。その時の影がやたら美しかったので、『盛ってる』『控え目にしておけば後で恥をかかないのに』といろいろ言われたのだ。


当時はいつ族長夫人が変わってもいいように、ユラスがチコの存在を公にしなかったので、世間にも明確な議長夫人の印象はなかった。


「いや。美人というのも、豪傑って言うのも間違ってなくないか?」

誰かがド正論を言う。

「チコさん自身が気にしていなさそう…。」

「私が気にします!」

と、響が外野に怒る。


「あ、そうだ!ならおあいこにしよう!」

そして急にリギルに向き直る。

「?!」


「今ので傷付いたとか言わないでね。言ってもいいけど、自体内昇華して!」

「??…」

リギルが怯えている。

「リギル君も私に言われて傷ついたかもしれないけど、私も傷付いたの!」

「っ…。」

それには何も言い返せない。


「おあいこね!」

「……?」


「はい仲良し!」

そう言って両手を握るので、完全にフリーズしてしまった。男だったら触りたくもないので「うるせー」と弾くが、もう人生で触れることもないと思っていた女性の両手。心の行きようがない。しかも診療とは違う感触。

「動画は好きにすればいいけれど、チコや学生のことをこれ以上悪く書かないでね!」


そう言って響は一息ついて、栄養ドリンクを少しの水で割る。

「はい!飲んで!」

グイっと紙コップを押されるので、仕方なく口に付けた。紙コップまでカバンに入っているのである。

「…………」

「断食状態で急にいろいろ入れるとお腹下したりするから、少し様子を見てから出掛けよう。」



呆気に取られている周囲に、おなじみの声が響く。

「響せんせー?」

「………。」

響は思わず寒い顔をした。キファであった。


「リギル君、もし不快だったら私担当はずれるけど、一旦今日は一緒に病院に行こ?非番だけど。」

キファを無視して、響はカバンの中から、まだ飴やら何やらあれこれ出して「あとで食べて」と机に置く。そして、乗り上げていたベッドから立ち上がった。


無視されても気にしないキファ。

「先生何話してるの?話なら俺が聞くけど?」

「………。」

「先生、悩みがあれば話してね?」

「………」

キファがしつこく横から話を挟んでくるので遂に怒る。

「キファ君、仕事に行ったら?」

「今日土曜日だよ?少し遅れて行けばいいし。先生こそどうしたの?ここ男子寮だし。気違えた?家まで送ろうか?」



何か騒がしいので見に来た石籠(いづら)がドン引いている。

いつも不愛想なキファが女性に愛想を振りまき凄く楽しそうだ。


しかも、水色頭でイカレていそうな男なのに、相手の女性はブカブカのワンピースにブカブカのチュニックを合わせて、髪を2つで縛っていて正直ダサい。女性には悪いが、あんな感じの女も趣味なのかと奔放さに嫌悪しかない。大房女性はストリート系や露出系が多いので、違和感ありありである。


キファと目が合うので石籠は言ってしまう。

「お前見境がないんだな。」

「はあ?このお方はお前ごときが見ていいお方じゃねーんだよ。俺のお姉様だよ!」

「え?そうなの?」

またしても驚く石籠。

「俺のベガスのおねー様だよ!」

実のお姉様ではない。でも妄想チーム公認で弟妹ポジションを手にしているのだ。


そこで叩かれるキファ。

「キファ君、やめなさい!私にも彼にも失礼でしょ?普段そんな風に仲間と話すの?」

「え?仲間?」

「……。仲間でしょ?ここにいるなら!」

「ええ?そうなの?!」

「仲間です!仕事仲間でしょ!!ひどいこと言って謝りなさい!」

響がそう言うと、「今度から頑張る」と石籠とは目を合わせずニコニコである。そしてファクトやリゲルと共に、放心しているリギルに出掛ける準備させ、靴を出したりかいがいしく手伝う。

 

リギル君は陽キャに囲まれ、されるがままであった。





ちなみにこの前チコの招集で、駐屯の中で交流会という話し合いをしたキファと石籠とリーダーたち。

実はあの日は散々であった。


ああ言えばこう言う石籠に、「は?好きにすれば?」と関わりたくないキファ。

椅子から立ち上がる勢いで牽制し合って、どうにもこうにもならない。


もうチコは二人を放置し、めんどくさそうにデバイスを見ている。


呆れるミューティアをはじめとする女性たち。


遂にケンカになって机に乗り出し、ユラス軍人が止めに入る大騒動であった。

集まった他のメンバーには申し訳ないからと、チコはまた別の時にリーダーたちに食事を奢った。



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