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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第四十三章 緑の瞳
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6 食事に行きましょう



全部が終わった後。解散して一同はそれぞれ退出したり、雑談に興じていた。


一番後ろで講義を聞いていたチコの元に、久々にファイやリーブラが群がる。

「チコさーん!」

「おっ、リーブラは久々だな。」

「チコさん大好き!」

抱きつくリーブラを暑苦しいと鬱陶しがる。


「チコさん!今度のプレイベント。ユラスの着付け、間近で見たいけれどいいですか?」

「は?」

「ライたちも見たいって!」

ライはファイと洋裁の職場で働いている西アジアからの移民だ。二人は舞台衣装なども手掛ける。

「……何言ってんだ?軍服で参加する。北メンカルと言えば軍事政権だからな。」

「え?よく事分かんないけど、向こうの王族を迎えるなら、こっちも正装でしょ?」

元貴族たちのスキンケアやメイクなど見たいリーブラとしては不服だ。

「………向こうも軍服だろ…。」

「ずっと戦争のない東アジア入りするのに?」

ファイは違う気がする。もう1週間後なのに正式に決まっていないのか。


「だいたい誰が着せるんだ?族長貴族の着付けができる人間なんていないだろ。」

「私ができますが?」

そこに現るガイシャス。

「カイファー様も来ると思います。」

「は?来んでいい!!」

「超~好き!ガイシャス様!!」

ハイテンション、ファイ。



と、その時である。

「食事に行くぞ。」

と、後ろのドアから突然現れる長身の男。


「…………?」

誰に言っているのか分からなくて、みんな反応できない。

「は?」

薄く色の入った眼鏡を掛け、長い黒髪をまとめている白いロンTに緩めのスリムパンツの男。どこの大房民だ。


みんな「初めて見る顔?誰?」という感じだ。

「………ん??」

ファイでも一瞬分からない。誰に言っているのだ。


と、チコの腕を引く。

「は??」


「うお!」

ファイたちだけでなく、周りにいた男子どもがビビる。

「チコさん!言った矢先に浮気はいけません!!」

報告があってカウスの近くにいたアホのシグマが叫ぶ。

「はぁあ?!!いきなり実地試験ですか???チコさんも?」

さらにアホのローもいたので、騒然となる。

チコの方も「???」となっているが、ガイシャスやカウス、パイラルが騒がないので、とりあえず戸惑っているだけだ。


「バカか。ファイもだ。ちょっと来い。」

長髪男が言う。

「はい?私??」

というか誰?と思うけれど、さすがに声で分かった。


「旦那様で???!!!」

ほとんど民族衣装、軍服、スーツ。洋服を着ていても上下黒系のスマートカジュアルな格好しか見たことがなかったので、意外過ぎて誰だか分からなかったのだ。

「大房のナンパ民かと思った………」

呆然とするファイに、リーブラが怒る。

「思っても言うな!ユラス全議長様だよ!!」


でも聞きたいに決まっている。なぜファイまで。

「で、なんで私まで?」

「心星家と食事に行く。ポラリスがラフな格好でいいと言ったから、もう少しカジュアルな服にできないか?かつらも付けてほしい。」

と、チコを指した。いくら人種や混血が多くても、アジアでプラチナブロンドは目立つ。

「なるほど。」

前にファクトが買った服でいいのではと思うが、あれは今着るには暑い。それにサイズが合いそうなソラは見えないし……と考える。

「あ、ライミー!ちょっと!」

ライミーは第3弾で入った大房女子だ。ストリートとカジュアルの間くらいの格好をしている。ほどよく筋肉もあるし170近い身長なので大丈夫だろう。


「服貸してほしいんだけど。」

「あ、いいけど、ファイには大きくない?」

「私じゃなくてチコさん。」

「え?!チコさん???」

ビビるライミー。

「マンションに戻るより近いし。」

「15分で準備できるか?」

サダルが横から聞く。

「……ええ?議長?!!」

さらにビビっている。

「まあどうにか。今、かつらはないけど、簡単に即席で染めるね。」

と、ファイも付け足す。


やっと周囲が理解したのに、一人まだ「???」となっているチコ。

「チコ様、あなたの事ですよ。」

「へ??」

「議長です。」

「は??私は議長じゃないけど?私でいい?」

いつも代理だ。

「そちらが議長です。なぜそこだけ頭が働かないのですか?」

ハテナだらけの顔で女子寮に連れ去られるチコを、みんな見送る。


「ファクト。お前もだ。」

「え?俺も着替えですか?」

「違う。食事だ。」

「はい?おれは久々のチームタラゼドで報告アンド食事会を……」

「命令だ。来い……。」

目だけでなく、セリフも据わっている。逆らわない方がいい。さすが帝王。人外であった。

「はっ!命令でしたか!ただいま参ります!」

怖いので敬礼してサッサと言う事を聞く、プライドより保身の男。


「どこで食事ですか?大房ですか?」

「倉鍵だ。ポラリスから連絡は来ていないのか。」

「え?知りません。」

「……大房でもいいかな。一度見ておきたい。」

「えっ。やめてください。これ以上大房に混乱をまねかないでください!」

アーツやシェダルや響で既に混乱が巻き起こっている。


出ていく二人と護衛たちに手を振るジェイやリーブラ、ラムダたち。

出て行った先の廊下も暫くざわついていた。



しかしムカつくことこの上ない。

私服はダサいことを期待していたのに、議長は普通に陽キャ枠で残念過ぎる。

うちの議長はあんなTシャツの普通な格好をしていても威圧感があるのだ。アンタレスヤンキーの総ボスか、現代RPGのラスボスか。いや、陽キャにも入らない。金持ち枠の倉鍵系。チコも早々とスポーツカジュアルに落ち着いてしまい、惜しいことこの上ない。私服はダサい系キャラがまだクルバトノートにいないのだ。みんな議長こそと思っていたのに。今度、ファクトに超ダサい服をプレゼントさせる作戦を練りたい。


しかし、ファクト以外すごい顔ぶれの家族会だな、もはや国際会議だ、と思う一同であった。




***




レオニスが運転する大型SUVで、アンタレス中央の倉鍵に向かう、サダル、チコ、ファクトの3人。


レオニスの運転もワズンなみに気持ちいい。近くに他の護衛車両も付いている。


連行される気分になるファクトだが、ライミーの服を着たチコが癒しだ。大き目のロンTにスキニーを合わせ、即席で亜麻色の髪に。目の部分までニット帽を被っている。チコもこうしてみると、普通に街を歩いている若者に見えた。


しかし、中間の座席に座っているサダルとチコは間にコンソールを倒し、それぞれ窓側に座り、しかもそれぞれの窓側を見て目も合わせず会話もしない。何これ。これがこの夫婦の正常運転?敵がいないか目を光らせてんの?と思うが言わないことにする。ちなみに、最初チコが「ファクト、横に座りな。」というが、グリフォに却下されていた。


ファクトは護衛と一緒に最後部座席に座るのかと思いきや、助手席に座りたいと言ったら意外にもOKが出たので、レオニスと楽しく話しながら走っていた。




着いたのは、倉鍵の一見何があるのか分からないレストラン。


無機質な縦の凹凸しかない高く長い外壁に、温かい白熱色が照らされている。車が来ると地下駐車場に誘導され、エスカレーターで上がっていく。



2階のフロア。

そこに広がっていたのは、モダンインダストリアルとストリートを合わせたようなレストラン。全体的にダークグレー。むき出しの天井、木目もなく打ちっぱなしの機械的な感じの中に、所々アートが置いてあり少しだけポップを感じさせる。

完全プライベートではなく、少し遠くに他の客たちが見えながらも小下がりで広い空間に案内された。


「サダル、チコ!」

そこで待っていたのは、Tシャツにチノパンのポラリスとワンピースのミザルだった。

ポラリスは立ち上がってサダルにハグで挨拶をし、ミザルは座ったまま笑うこともなく軽く会釈をした。ただサダルも似たようなものなので、それでいいらしい。

「久しぶり。」

ファクトは片手を上げて、よ!という感じで両親に挨拶した。


「チコも調子はいいか?」

「………。」

ポラリスにコクっと頷く。

「……そういう格好もいいな。大学生みたいだ。」

チコが何も言わずに少し照れる。

「さあ、座って。先にこっちのドリンクだけお願いしたけど。」

よく見ると大人ミザルがなぜか、かき氷を食べていた。


かき氷?

なぜ?!



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