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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第四十八章 止まっているのか進んでいるのか

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61/124

60 乗らなくていいのに

閑話です。



「うおおおおおーーーーーー!!!!」


その日、妄想CDチームは陽キャたちから許せない超打撃を受けていた。


「なんでロボットに乗って戦場に行くの?自動でこれだけメカが動く時代に何のために肉身を乗せるん?」

キファが煽る。


人間がロボットに乗って戦う必要がどこにあるのか、と言う話である。そんなの戦場にヘリで飛ぶようなものである。


「なんでって…人間がどれほど精巧な違いを見分けられるのか知らないのか??!!!」

「ナノサイズまで分かるんだぞ!!」

ここは譲れない妄想チーム。

「だからさ、コクピットで操縦するんだろ?だからコクピット遠隔にあればいいじゃん。どうせモニターで外見るんだし。一緒じゃん。」

「マジだな。そこんとこ。」

シグマは素直にそう思う。

「作業用ならともかく、戦場だろ?危ないし。」

「仕事もリモート当たり前なのにアホなの?」


「危ない危なくないの問題じゃない!!」

そう食ってかかる。ラムダも必死だ。

「核施設や放射能関係も遠隔だし。超精密作業してくれるし、なんで戦場だけ人間乗せんの?」

裏切り者シャムが爽やかに言う。

「これは百年以上前に作った物語だろ?!」

「でも設定は未来だし。」

「うわー!!!」


ここで最もコミュ障気味のセオが遂に(いか)る。

「うるさーーーーーい!!!『ロボ革』に文句を言うなーーー!!!」


「…。」

普段話さないセオの二度目の憤慨に、食堂中が静まる。

「…すまん。」

驚いて素直に謝る陽キャたち。

『ロボ革』とは、前時代から人気の『ロボット革命』という様々な有名アニメやゲームキャラが一同に会し対戦するゲームである。


「ロマンだよ…。」

そこに入って来たのは横で聞いていたファクトだ。

「人類はメカニックができた当初からロボットと共に生き、そこに搭乗することを夢見てきた…。そしてそこに人と人、人とメカのドラマがある…。」

「おーーー!!」

と拍手が起こる。


が、ローが直ぐに落とす。

「それ、人間が搭乗するのと関係なくない?」

ローに他意はない。


「……。」

少し考えるファクト。

「そうだね。」

「うわーーーー!!!!落ちるな!ファクト!!!」


「空母にパイロットがいたら空母落とされたら一発だろ?だから人間を分散させるんだよ!」

「おーーー!!!」

拍手が起こる。

「空母に全員集合させる前提はなんなん?普通の軍はそんなことしなくね?」

「空母に搭乗機本体が待機させてあっても同じだし。」

「メカニックなら東アジアが群を抜いてるし。リモートで勝てるだろ。」

「違う!!ならなんで今まで無人ロボットやアンドロイド戦をしなかったんだ!!」

今日ばかりは陽キャにも強気である。


「圧倒的に金や資源が掛かるし、一部では使ってたからこれまでアジア軍強かったんだろ。」

人型搭乗機は運送や作業用に多いが戦闘そのものには使わない。

そして、相手から攻撃を仕掛けられない限り一般的には戦争はあり得ない。


東アジアは戦争がなく、他国の内戦仲介のような戦況しかないため、これまで技術を持っている連合軍がニューロスアンドロイドなどを大規模投入するようなことはなかった。ユラスに関しては、サダル派以前は連合国に加盟していない。ただ、コマなどの車型搭乗機はよく使われていた。


「国際法や人道問題破れないしな。表向きそれ破ったらこっちが巨悪だし。」

メカニック最強国家群が戦争を拡大しないのでロボット革命は始まらない。

「戦ったら資源の超無駄じゃん。」

「もう、そんな戦争始めたところで、どこの中枢も無能だよ。世界壊れて終わりだろ。」

「この時代に無能国家は、死ぬしかない。」


「うおーーー!!!それ以上言うな!!」

とにかく許せない妄想チーム。



「でも、まずは搭乗機の話に限定する!!話を広げるな!直接乗るのには意味があるんだ!人間と機体が密接に連動することによって……」

「サダル議長の理論で言えば、人間の霊性やサイコスは、時間も距離も物質よりはるかに最速で超えるって………」

「だーーー!!!!」

「それでも物理世界には時差があるんだよ!」

サダルから言えば、空間に距離などないらしい。ニュアンス差はあるが。


「お前ら!これは第六感じゃない!第七感の話なんだ!な?リギル。」

隅の方にいて別に話に加わってないのに、ローに慰められるのは弟リギル。リギルも妄想チームに勝手に組み込まれる。

「…知らねーよ…。こんな時だけ兄貴面すんなよ…。」

妄想チーム的に超陽キャだが、優しいローが妄想チームの肩を持ってくれた。


「ほら、みんな考えて見ろよ。」

ローは妄想チームの必死さに心打たれ自分に注目させる。

「なんつーの?リモート………遠隔じゃ得られないものが欲しいんだよ……。体も自分が鍛えないと意味ないし。ただ(よく)を果たしたいだけじゃなくて、好きな子なら直接抱きたいじゃん?直接!ここが大事。」

「………」

「霊性世界でも感覚はあるし繋がれるらしいけど、やっぱここはね!現世に生きてるし!」

「………。」

黙ってしまう一同。全くの頭脳系でないローは感覚の話をするが、妙に説得力があるようなないような。


「こうなんつーの?向こうもギュッとしてくれたらめっちゃうれしい!遠隔では得られない。」

「………。」

妄想チーム、女の子からギュッとされたことなどない。

「うっ。応援されているのに胸が痛い……。」


妄想チームの仲間になってくれても、発想が陽キャであった。みんな撃ち落とされている。

「こいつ……本当に根っからのバカだな……。」

リギルがキレかけである。兄ローも、撃沈されている妄想チームもめんどくさい。セオに至っては悔しくて伏せて泣いている。



現実は、人の移送や特殊作業などよっぽど何か理由がなければ戦闘専門の搭乗機はない。正確には戦闘専用の人型ロボはいないが、戦場専用はある。あくまで人道だ。リギルの近くでレサトが聞いているが、家族や親族たちが戦場で亡くなったレサトは複雑な思いだろうと一部のメンバーは思う。



しかし、

「俺はこれが好きだな。」

と、レサトは人気アニメの帝国軍側のメカを指す。理論ではないのである。ロマンなのである。

「レサト、センスがいい!!」

喜びのラムダであった。


新人第4弾の一部メンバーまたが何とも言えない顔で聞いていた。先輩たちは何の話をしているのだ。



ちなみにレサト。メカのことで戦場ではない、こんなロマンの話ができることが感謝であった。ここは平和だ。




そこにトボトボ入場してきたのはムギ。

「あ!ムギちゃん!」

「おはよ。」

「……。」

リギルは思わぬ女子の入場に緊張して、無言で背筋を正してしまう。積極的なかわいい子に弱いのである。



このお話の簡易版をインスタでも書いています。

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