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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第四十六章 選ばれし者たち

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40 聖典は人間内面性の解剖図

創世記の知識があると分かりやすいお話です。




知恵ある女はどこにもいない。


女たちはどこに行ったのか。




かつて東方の国々には様々な形で、聖典信仰が流れようとし、一部では定着したが、ほとんどそれは流れて行った。


聖典信仰もそうでない側も、啓蒙思想側ですら東方を必ず手に入れたかったからだ。民たちは何も知らないが、そこには熾烈な霊性の戦いが起こっていた。


東方の民が聖典の真の内容を理解すれば、世界が反転することを知っていたからだ。

数度に渡って崩れた世界は、最終的に東方からひっくり返るはずだったのだ。


東洋には内面性でそれを理解し、さらにその東邦ではその外面性まで理解する知恵を持った民族たちがいた。



その国は女の国だったので、女に知恵を与えてはダメだった。

女が賢くてはダメなのだ。


なので、数十年、数百年掛けてあらゆる工作をして、女からあらゆるものと知恵を奪った。女から情を奪うと早く崩れる。



女が戻って来れないので、東邦から西下側の国も三姉妹から聖典歴史が崩れた。


その三姉妹が赤を防ぐはずであったが、赤に崩れた。



それでももっと、根こそぎ、その芽を摘まなければならなかった。



聖典そのものから引き離すことにも成功した。なので、その文化に聖典は流れなくなった。彼女たちは求める答えの元さえ失った。


時には聖典信仰そのものを堕とし、崩し、時には女の国が毛嫌いするものを集め、そしてその国の指導者や民衆には歪んだ性と上を蹴落とす権威への執着を与えた。そして、民衆はあらゆる信心を毛嫌いし、霊性に封をして、最後に全ての女から知恵も奪う。



女に知恵が戻った時に、世界がひっくり返ることを知っていたからだ。


残念ながら前時代は、女たちが失った知恵を持って戻ってくることはなかった。






***




「まず、全員に聖典歴史を把握してもらう。」

ガイシャスは全員に図解を示して読むようにと指示を出す。


分厚い聖典では死にそうな者には分冊を与えるか、最初に薄い新約を読むように勧めた。


「俺ら坊主じゃねーし。」

河漢民はあれこれ文句を言っているが、旧新教の強い北河漢の者はあまり抵抗がないようだ。

「まあいいよ、規定に従う約束だろ。勉強も約束だから取り敢えず聴こうぜ。」

聖典知識の把握も、アーツ全体の契約事項に含まれている。

南海アーツは全員聖典を読んでいるが、優秀な第2弾からは、学校や教会で既に読み終わっている者も多かった。大房とは思考性や頭の造りが違うのだ。聖典など基礎である。


「それに、教養として知っておいた方がいい。信仰の有無に関わらず、人類の半数以上が知っている世界だ。ここはユラスとヴェネレ人も多いからな。自分たちでトラブルを多少は収拾できるようになった方がいいだろう。ビジネスにも関わってくる。」

それは言えている。多くの民族性やその歴史背景を把握するには必須だからというのもある。



「あとな、最終的にお前たちが信仰者になろうが、旧新教になろうが、正道教になろうが、無宗教でも、冠婚葬祭信徒でも………もっと言えば無神論者になろうが我々は強制はしないし、できない。なる奴は結局なんにでもなるんだ。他人が止められることでもない。

無神論者も、神論を学んだ者たちから生まれているしな。無神論者の方が賢いぞ。本当の無神論者は無知じゃない。そこらの坊主より聖典をよく知っている。


ただ、聖典を知った後は、宗教に関係なく一個人の持つ世界が変わる。知ったことで数千年、数億人の科学や歴史、心情を背負うんだからな。それだけだ。」


それからまた新しい図解を映す。

「医学書が人間の肉体的解説をしているならば、聖典は人間の内面の解剖図だ。

内面であり、社会的人間の構造図を示している。」


幾つかの個所を指す。


ベガス構築(ここ)は宗教が複雑だ。けれど、どこの宗教も基本聖典信仰から成り立っている。そして、なぜ戦争が起こっているのか、貧富が生まれているのか、人は犯罪を犯すのか。それを知る必要がある。

それを知れば、世界が全く違って見えてくる。

人が無意識にも何にもがき、何を間違え、何を目指しているのか。それが少し見えてくる。」


ガイシャスが動くたびに、大きなウェーブの髪が揺れる。話よりそれを見ている者もいる。

人はなぜ罪を犯すのか。それは教官みたいな人がいるからです。と言いたくなる河漢民。



「最初の女が『神の使い』という者に唆され、男はその女と共に逃げ隠れ、三者は誰も非を認めることも謝ることもしなかった。


それから、物事をまとめる素質のあった弟を兄が妬み、そして殺人を犯した。弟も何か煽ったのかもしれないがな。それは分からない。


そしてさらに、その子孫は神に認められた父の寝姿を皆で失態と蔑み、兄弟で共同して自己具現の塔を作ったんだ。」


「………。」


「それからソドムとゴモラ………。

よく物語の題材になるから名前は知っている者もいるだろ。彼らはあらゆる性悪(せいあく)を犯した。子供から老人まで、天使にさえ寄ってたかっているだろ。

でも、その後に示されている。(のち)の人類はそれを越える、さらに淫乱な性悪にふけった。ソドムとゴモラよりもさらにあらゆる性を犯したんだ。


そして………男は複数の妻や妾を持ち………その女たちは小さなことで争い子供を分裂させ、子供たちもお互いを打ち合いながら子孫を残していく………。


それが人類の歴史だ。最初の人間の典型を辿っていく。」



ガイシャスがホログラムを見ながら話を進める。


「人間の縮図だろ?」

生徒の方を向いてそう言う。「はい!」と言いつつもめっちゃ嫌な皆さん。



「でも、その中で何が重要だと思う?我々はその歴史を収集していかないといけない。」


「無理っス。」

「愚かなその他大勢になりうそうです。」

「すぐゾンビ化しそうです。」

みな心の中で思う。歴史に瞬殺されそうだ。



「私たちは、自分がいつか聖典に描かれる一人だと認識するんだ。」


ガイシャスは、自分が歴史の中で位置を把握する方法を伝える。




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