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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第四十六章 選ばれし者たち

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39 原因は自身の中にある

※人によっては不快に思われる表現があります。怪我や性表現に弱い方は前半***線までを飛ばしてください。


小説を書きながら前小説を見直していますが、未だかなり誤字脱字、表現の間違いなどが見られます。中には登場人物の名前を丸ごと間違っていたり、タイピングで変な文字が入っていたり、丸ごと消えていたり…。本当にごめんなさい。順次直しています…が、それでもまだまだ間違いが出てきます(涙)


重要キャラではないのですが、重なっていたので名前を変えた人物もいます。よろしくお願いします。





「訴訟は?」

「2件です。」


ベージン社のCEOが資料を眺めながら考える。世界規模の集計だ。


「性器損傷86件、うち重傷23件。その他損傷58件。結果勃起不全11件…。ですかね。今のところ。購買者が先進地域以外は0件です。提訴待ちは3件。」

「…。どうにかなりそうか?」


現在、ベージン社のモーゼス・ライトがいくつか事故を起こしている。アンドロイドを伴侶にする……ということは想定外のことも起こる。


ベージン社としては()()()だが。



このためにモーゼス・ライトはあくまで生活に寄り添うのであって、床の相手までするものではない……という建前で売っている。つまり、そういうことは想定していないので、何かあっても責任を持ちません、ということだ。模せば機能はあるが自己責任で、となる。


多少問題を起こそうが、既にモーゼス・ライトは一般用アンドロイドとして世間に定着している。SR社はホモサピエンス型を一般販売をしていないので、実質史上ナンバーワンの位置に立った。


「性に関わらない暴走は193件。その内、購入者の異常行為によるものが106件。不明36件。」

禁止されている改造、解体、ノンメンテナンス。取り扱い、規約にそぐわない扱い。などによる、暴走行為だ。通常の不具合はこれとはまた別で、のべ数千件を超すが、それはあまり問題にならない。

「………そうか。」

椅子を回しながらCEOは様々な数字を眺める。



そして、上座の後ろ側に座っているモーゼスを眺めた。

モーゼスは今は動かずにただ座っている。


美しい、女神のような人間の創造物。




事件になった案件は写真が送られえてきている。


なぜか、アンドロイドの一定数は長期所有する持ち主に虐待されるのだ。


ピアスだらけにされたり、皮膚を裂かれたり、刃物や打ち込む物を刺されたり。禁止されている刺青を入れられたり。一般のニュースにはできないようなひどい扱いを受ける場合もある。


体に模様は入れられるが、それはオプションで入れるか、販売会社に登録が必要だ。すぐに落とせるような簡単なペイント以外は禁止されているのに、全身を油性ペンや落ちない塗料、薬剤でめちゃくちゃに塗ってしまったり、接着したり針で墨を入れたりとかなりひどい。


高機能アンドロイドのように、アンドロイド自らがそれを否定することもしきれない。


アンドロイド管理のため所在と存在を確認するためと、人間意識の確保のために内部をいじっていなくとも、外見の過度、過激な改装は国際法で禁止されているのだ。簡易アンドロイドでも、動物、人間型を有するもの全てに該当する。

人間意識の確保というのは「物質、万物に対する敬意の念の確保」と、「社会や人間自身の道徳性の維持」のためである。



なのに、なぜかニューロスを個人所有すると一定数、その規約に違反する者がいる。



これはSR社の機種や他社でも起きているので、ベージン製に限ったことではない。

ただし、個人所有になると一気にその違反件数が増加する。傾向として、独り暮らしの閉ざされた空間に、主に持ち主男性に起こりやすかった。個人所有型は、もともと女性モデルがほとんどなのでそのせいもある。


監視カメラに映っていたり、データに残る情報も多々あるが、密室で何が起きているかはこの時代でも全部が分かるわけではない。


だが、そういう事実があるのは確かだ。



そして、密室でのことは分からないと言いつつも、ベージン社はアンドロイドの反応や行動は全部データにとっている。場合によっては、オフにしても音声が全て抜かれていることもある。他社も同じことはするが、所有組織の機密部分には入れない仕組みになっているため、アンドロイドの動向やメンテや開発に必要な情報などを取り、情報の棲み分けはしている。

ただ、企業や組織規模だと、管理をそのままアンドロイド会社の管理部に任せる場合もある。高性能アンドロイドはそれ自体に記録媒体があるため、映像でも誰とどう接したかも分かる。顧客企業内の部分に入る時は、初めからアンドロイド会社と密な機密保持契約をする。



組織所有が個人所有と違うのは、好き勝手なことはできないということだろう。人や機械、たくさんの目がある。


ベージン社は個人所有のアンドロイドには、視覚機能などに記録目的のカメラは搭載していないというが………多くの者はそう思ってはいない。



それなのに、なぜか持ち主の心身の病やアンドロイドへの虐待が起きるのだ。



体の関係を持っても満たされないのか。


そんなものなくてもいい。

ただ隣にいてくれればいい………そう言っていた人たちもたくさんいたのに。



初めはそれで満足していたはずなのに。




まだモーゼス・ライトは発売して日が浅い。


ベージン社としても本格的な問題が起こるのはこれからかもしれない。それでもCEOは一つの成果を実感する。最初の超高機能アンドロイドの位置はシリウスに制覇されたが、二次性能アンドロイドの市場は奪った。


「これは最終的にアンドロイドの問題ではない。人間の問題だ。」


「…………。」

部下たちはただ聞いている。

「人間が他人や環境だけにその原因を求めている限り、我が社でなくともこの問題は終わらない。」


ベージン社の根幹にいる者たちは知っている。アンドロイドではない。人間の問題だと。

アンドロイドはデバイスやネットと同じだ。それそのものは物に過ぎない。



では問題は?


人間である。


けれどその責任は、当社は負わないというだけである。



純粋に、ただ純粋に、世界を眺めているような水晶の目のモーゼスに、

CEOは手元にあった水のグラスで乾杯を示した。




***




その一方、ファクトは藤湾大学のルーフバルコニーから、その敷地を眺めていた。


後ろではリゲルとラムダが昼ご飯を食べている。


「藤湾大、すっごい人が増えたよね…。」

「人口自体が増えたしな。中央区だけでなく北区からも通いが来てるし。」

リギルがここ最近の激務を思い出しゲッソリする。ベガスの新都市だけでなく、人の不安定な河漢の安定地域自治体造成も担っているからだ。


突然藤湾大が人気になったのは、移民都市でありながらアンタレスのどこよりも統制が取れている自治。そして襲撃の的にはなったが、東アジア軍、ユラス軍、特警という三勢力がいて、入出管理がされているという治安の良さ。

SR社も入っているニューロス研究所の存在。


何よりも、ベガス構築、青年育成モデル造成というはっきりした目的が大学にあったからだ。

それを実地で動かしていける。



婚活おじさんならぬ、ベガス征服おじさんこと、フォーチュンズの元オーナーがハマったゲーム、『レッツ!僕のメイキングシティー!』というショボいタイトルの割に、かなりやりこめるゲームではないが、まさにその手ごたえがありまくりであった。


その中で、アーツでも勘のいいメンバーは気が付く。

ある基準、ある割合まで物事が達成されると、自動に物事が動いて行くのだ。ただ、それは見ていればいいということではない。そこへの関心や努力は絶えず必要だ。


でも、自分たちだけでなく、今、たくさんの力が働いてきている。



もう南海、ミラ。

それから最初の街、『東海(とうかい)』『上越(かみごし)』『那賀陸(なかおか)』は、自治形成において、もうVEGAやアーツの手を離れ始めている。

移民の中でも、東アジアや他教などを理解できる柔軟な人間、(いさか)いの仲介ができる人間。それからなるべく現地で何かの役職を持っていた者を、各組織の中心に立てたのが速い結果に繋がった。そういう人材を育ててきたのは、はじめはチコやエリス、そしてVEGAであった。


VEGAは主に移民やスラム民の生活教育と、所在の斡旋、自治形成の手伝い。アーツはアンタレスはじめとする先進地域の青年育成と、移住援助。


では藤湾大学は何をしているかというと、教育環境造成と、担い手の育成であった。その計画自体を皆がリーダーとして把握する。つまり管理人をはじめとする運営者や、教師そのものの育成。そして学校建設のソフト面の仕事をしている。



とくに学校面で先頭に立っているのはカーフだ。


最近顔も見ないし、カーフ母のカイファーが出入りすると逃げていくので、チコのように逃げ回っているのかと思いきや、真面目に学生をしていたらしい。逃げ回っている自分に例えないファクトである。

「チコさんがカーフに願ってたことだろうしな。」

「そうだね。俺も早く基礎教育だけでもできるようにならないと。この前小1に、『先生、言っていることが分かりません』って叱られたよ。」

小2と言われるのに、小1にも理解されないファクトであった。



それから、藤湾が手掛けるのは、都市建設そのもののデザイン。


デザインには様々な物がある。都市機能、導線、外観、建設建築、必要項目、内装…。

ベガスは旧都市の上に新都市をつくっているため、様々な専門家や人材が必要になる。そのため行政はもちろん、現在東アジアも含めたくさんの建設会社、建築会社、建造物管理会社やリノベーション会社も参入してきて、学生たちと共同で開発している。


大学2年間はきっちり基礎を叩きこみ、3年生から大学の先輩と共にインターン的な実地に入っていく形が多い。この時代は、中高生から専門を選択している場合も多く、その場合専門過程飛び級もある。学内のアルバイトは経験のために管理まで任される。


正直、学生時代に遊びを満喫している暇などない。その代わり、視察や体験で様々なところに赴き、留学もできるのだ。


仕事も多く、目標もはっきりしている。


学生たちにはベガスも藤湾大学ももってこいの場所であった。学生たちがそのまま幼児部や小学部の先生をすることも多いし、小学生までは基本担任2人以上か補助教師がいる。1クラスに入る補助教師はほとんど学生が担っている。その形態も非常によくバランスが取れていた。



ここまで来ると、もうベガスはチコたち最初の参入者だけの仕事でも世界でもなくなる。



まだ自動に世界が出来上がる…というわけではないが、


ベガスは一人歩きの一歩を始めた。




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