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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第四十五章 ユラスの瞳

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24 コマンダーは容赦しない



その日の朝。


ベガスはタイイー一行に、半亡命の立場の南海学生と引き合わせた。

カーフたちだ。だらだら準備して仕方なく参加したレサトも人前ではきちんとしていた。でないと後で余計にうるさく言われるからである。

「レサトはああいう場でただ立っている、座っている時が一番カッコいいね。」

と会場まで見送ったラムダは思わず漏らした。


そして、久々に東アジアに戻ったカストルもタイイーとの面会の場を持つ。北メンカルで何度か会っているが、結婚の話を聞いてもう一度直接会ってみたかったのだ。


二人はガッシリと握手を交わし、カストルの勧めで席に着く。エリスとデネブも同席し、その後しばらく彼らは話を進めた。





一方、こちらは呆れ声が漏れている。

「ユラス?!」


ガーナイト側が帰国する最後の最後にファクトも紹介しておこうと思ったのに、アセンブルスに「ファクトはユラスです」と報告されてチコとサダルはため息しかない。昨日の夜はまだベガスにいたのに。


「まあいいでしょう。どうせただの学生ですし。」

カウスはそう言うが、ファクトにもう少し緊張感、責任感を持たせたかったのである。

「そもそも何をしに行ったんだ!!」

「観光でしょうか?」


答えなど誰も知らない。




***




「本当は6月にスタートさせたかったが、今回の予定のために7月になった。昨日の式典に協力、参加してくれた皆さんには感謝をする。」


エリスの祈りとゼオナスの挨拶の後に、サルガスが話し出す。



「では、とりあえず始める。」

そう。アーツ第4弾が始まるのだ。その事前説明会である。



「ここに集まった者は全員指導者、もしくはその補佐になってもらう。」

と、ラムダとジェイに挟まれて先頭席に座らされた引きこもりリギルが、青い顔をしているので一応やんわり言っておく。

「………あと裏方スタッフ。」



一連のベガス構築、河漢事業の目的、目標を話し現在7万人ほどが既にベガスに移住し、5万人ほどが河漢の安全地域に移動したことも資料と共に話す。各所各部にたくさんの人材がいるのだ。

行政もだいぶ動いているので、住民や企業の届け出、調査など事務手続きそのものからはアーツは手を引いた。しかしまだ引率や警備は手伝っている。


「アーツ自体の一番の役目は、現在青年育成だ。まず、組織運営ができる基礎は全員身に付けてもらう。」

「ひぃぃ……」

リギルがちびりそうだ。

「大丈夫。リギルには何も期待していないよ。」

ジェイが辛辣な慰めをする。ジェイも自分が期待されているとは思っていない。


「自分たちはもちろん、河漢からも企画やチーム、住民を指導できる人材を作っていく。今回は組織運営、経営者経験のある者や高校大学で既にサークル、プロジェクトの運営や立ち上げ経験のある者を主に集めた。」

基本アーツは、大学生以上の東アジア住民が集められてる。社会人中心だが、大学生は状況次第で(はい)れた。



その中に一人、やたら注目を集めている人物がいた。

「………。」

ニコニコ顔で話を聞いている、クリーム系の白い髪にごく薄い褐色肌のユラス美女、陽烏(ようう)である。

そう、もう無理やりねじ込んでもらったのだ。陽烏は移民ではないがユラスにも長くいた。サルガス熱は引っ込んだが、それでもサルガスがいるとうれしいらしい。横から父エリスが時々チラチラ見ていた。


そして今回、出産後初参加のサラサとハウメアもいた。

まだ来なくていいと言ったのに、今日だけでも来ると新生児を見てもらい新メンバーの顔を見に来たのだ。ハウメアは産後とは思えないほど生き生きしているが、サラサは少し瘦せてしまった。母乳で全部吸い取られるらしい。



その他説明をし解散。


「サラサさーん!ハウメア!」

とリーブラがサラサに飛びつく。

「リーブラ、ファイ。ソラも元気だった?」

「はーい!」

「サラサさんこそ。仕事はもう少し後に復帰してくださいね。無理すると年取ってからきますよ。」

「はいはい。ちょっと新しい総務の子と話してくるね。」

貴重な時間なので、そう言ってサラサは去っていく。



そこに登場のヴァーゴ祖父。

「リーブラ!!」

「あ!ボス!」

大房アストロアーツ、整備屋の方の社長である。ということは………

「あの店長、ジジだっけ?」

「ジジェだよ。」

「彼はいるの?」

ヴァ―ゴ祖父はジジェを呼ぼうとするが、彼は他の企画のメンバーと話していた。


「仕方ないね。てことは…アストロアーツの店長は次誰になったの?」

「…まだ決まってない……。」

「ええ?!閉店??」

「……まあ開始期間までにどうにかする。」

次期店長がいないようである。なぜなら短期で店長4人も抜けてしまったのだ。どうにか普通のバイトで回している。



「ねえラムダ………。」

「何?」

ファイが、あることに気が付いた。

「今回イケメンいない?何気に……」

「イケメン?」

講義中は前ばかり見ていたラムダが、振り返って講堂を見渡した。

「……」

ジーと眺めると、点々とアイドルだか俳優だか、時に濃かったり、時に涼しい顔の男たちがいる。

「ホントだ!!!」

と、言いながらファイの好むイケメンとやらがどの人か知らないが、ラムダが見ても美形だったりハンサムとかに見えるタイプがそうであろう。



「で、どの辺?」

一応女性の考えるイケメンと一致しているかファイに聞いてみる。

「あの辺はイケメンでしょ!私はタイプじゃないけど。

新しい企画は、イケメンで人を釣る気??!」


河漢の協力してくれない住民を顔で釣るのか。どこかの区域にいくつかカフェ街ができるとは聞いていたけれど、非協力者は男性の方が割合が大きい。その作戦はどうなのか。

「美女呼ばないとな。」

横で聞いていたリギルがつぶやく。

「美女を釣るためにイケメン採用?私の中にイケメンイコール、モテてて鼻が高い、性格がキツイってイメージがあるんだけど…。」

大房の高校で顔のいい……ファイのタイプではないが、そんな男たちが自分が落せる女子、自分に寄って来る女子の数や顔を競い合っていたりした。すぐに相手を変えていろんな女子に手を出す男子も見てきた。こんなに顔採用してどうするのだ。

響にしてもそうだが、顔がいい面子がいるといろいろ混乱することも多いのだ。



しかし、今回一の美女陽烏の方を見ると、人形のようであまりに現実感がないせいか、近寄っている人がなく一人だ。それでも資料を見返して満足そうな顔をしていた。………中身はけっこう強キャラなのか。一人でも平気そうだがソラが声を掛けに行った。


そこに現る第3弾のライミー。

「ファイ。何言ってるの!エリスさんたちが顔で選ぶわけないでしょ?」

「……そう?」

エリスたちを疑っているわけではない。ただ、ファイ的にはキラキラが多いのは気持ち悪い。イケメンは嫌いではないが眺めているだけでいいのだ。


「繁華街任せるメンバーも作るって言ってたけど……。僕もかわいい店員さんのいる店があったら、通っちゃうかも。」

ラムダが照れている。

「やっぱ顔採用じゃん!!」

「誰がどこに行くかまだ分かんないよ~。」


「ファイせんぱーい!」

ナンパ男どもがやって来た。先輩扱いだが、おそらくファイの方が歳は下である。コンビニ男は遠くで眺めていたが、ファイと目が合うと礼だけして向こうを向いてしまった。

「姐さんは?」

「響さんはアーツじゃないってば。」

「え?そうなの?!!!」

がっかり4人組である。




***




そして河漢。


こちらはイオニア、タウ、ライブラ。蛍の夫アクバル、シグマや第2弾、3弾の格闘技経験者が揃っている。


女子がほとんどいないからか、数人いる筋肉系女子ですら歩くだけで一部の男に茶地を入れられている。

ユラス軍も揃い、カウス、クラズ、名前も知らない怖い人たちが構えていた。ヴァーゴも顔が怖いというだけで、なぜかここに連れてこられた。顔採用である。



実は河漢も自薦他薦で新規メンバーが100人近く来ていた。一応霊性を見て、大麻、麻薬などの中毒者、重犯罪者性犯罪者は入っていないが、既にノリがおかしい。


一連の挨拶、説明が終わってから壇上に出てくるふんわりダークブラウンのロングヘア。サングラスと淡い色の軍服姿なのに、それでも美女感グラマー感が溢れているガイシャスである。


「おおおおおーーーーーー!!!!!!」

「ヒュ~!!」

と、歓声や口笛などが飛ぶ。


「静かにしろ。」

ガイシャスがそう言っても会場が静まらない。

「黙れ。」

それでも盛り上がり、遂には歌を歌え!踊れとヤジが飛ぶ。さすがに脱げまではないが、放っておくとそんなはやしも飛びそうだ。


「黙れ…。」


「黙れと言っているだろ。」


それでも落ち着かない会場。

この雰囲気…()()が出る。と確信する古参メンバー。



ガシャ。


そう、爆音機である。

ガイシャスは、火薬式バズーカー爆音機を、会場の高い天井に向けて打ち込んだ。


ズドーーーーン!!!!

と、ものすごい音がする。


「…。」

そしてやはり…大会議室は静まり返ったのであった。




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