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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第四十四章 天の締結

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23 失った顔と顔が合わさる



そんな訳でなぜかワズンに迎えに来てもらう。


相変わらずドでかいSUV車だ。ただ、運転がめちゃくちゃうまくブレーキ感が全然ない。


「なんで広い国の人ってでっかい車に乗るんですか?事故でつぶれるって時代でもないのに。」

「利便性がいいんだよ。」

「独り身なのに?」

「………。」

ワズンは苦い顔でファクトを見る。


「誰を乗せるんですか?」

「………分かって敢えて言ってるのか?」

「いえ。真面目に聞いています。これ、9人乗りにもなりますよね?誰を載せるのかなと。」

「時々ガタイのいい奴らも乗るからな。」

「え?」

ファクトは憐れな顔を向ける。まだ乗せる女性もいないのか。

「………だから何が言いたい。」


「チコもバカだなって……。俺なら絶対ワズンさんを選ぶのに。」

「ん゛っ?!」

一瞬固まる。

「………まだそれを言うのか。」

「この運転に乗れるならワズンさんがいいのに!」

「…?…お前、絶対女に嫌われるタイプだろ…。」

「え?なんで??」

そう言いながら、ワズンはやはりブレーキ感なくサーと完全マニュアルで車を走らせる。


「程よく買い物に付き合うか自由にさせてくれ、趣味もさせてくれ、家事もする男が好きだぞ。女は。車など乗りやすくて安全運転ならなんだっていいだろ。」

「えっ?そうなんですか?運転とかもだけど、パンチングボールすごい人とか、あと蹴り技すごい人とかめっちゃカッコいい………。思い浮かべるだけで………胸が抉られる…。」


「で、それが何なんだ……。」

「え?惚れません?ワズンさん余裕で全持ちでしょ?」

「そんなん普通の女が惚れるわけないだろ。」

「マジっすか?!」

ワズンは呆れているが、ファクトには理解できない。……かっこよすぎるのに。


「ニッカ………あ、ベガスに来た女の子なんだけど、ニッカが剣構えた時は最高にカッコいかったし、ハウメアとかミューティアの試合も燃えまくったんだけど、女子はそういうのキュンとこないの?」

「こないんじゃないか?大半は。」

ぜひキュンと来てほしいのに違うらしい。

「………そうなのか…。初めて知った…。」

「何を基準にそう思うんだ。」

「ラムダが、『女性は背の高い騎士がめっちゃ好きだ、騎士団長とかも。王子も大半は騎士をしているらしい。そんで、だいたい騎士と結婚する』って言ってたのに…。女子が何を喜ぶのか全く分からなくなった………。」

それはラムダが読む女性向けファンタジー小説の話である。


「でも、チコもワズンさんの方が気が合いそうなのに。」

「だからやめろと言っているだろっ。」

と、ワズンに叱られながら到着しマンションに入る。




***




懐かしい感じだ。


ラフなのに、上品な感じの部屋。いつもキレイに整理されている。

「お邪魔します。」

礼をして中に入る。


「ベッド使え。シーツ洗ってからずっと使ってないから。」

「床やソファーでいいでので、バスタオルか布団一枚貸してください。」

ワズンの家は土足ではない。

「いい。ここんところ家にいる時間が少なかったから、帰る時はずっとソファーで寝てた。こっち来い、施錠の登録するぞ。」

主人で解除してからファクトも登録をする。



「………。」

それから久々のワズンの家を見渡す。壁に貼ってある写真はそのままだった。


「早く彼女か奥さんの写真が増えたらいいですね。」

「………お前、本当にムカつく男だな…。

あ、冷蔵庫も勝手に使っていいし、飲み物も食材もあるもの好きに使っていいからな。」



スーと前と同じように壁を見ると、両親に挟まれたお姉さんの写真。


それから、ワズンとシュルタン三兄弟との写真。


その知らない顔の一人をじっと見る。

ムギの中で、頭を打ちぬかれ顔が一部飛んでいた人。



写真では笑って目が細くなり、あの緑の瞳は見えない。


「ワズンさん。」

「なんだ。」

「この………カウスさんの弟さんの写真、他にありませんか?」

「タビト………か?」

「タビトさんって言うんだ……」


ワズンがいつも使っている物でないデバイスを持って来て、ソファーに座ったので後ろから見る。

『タビトの写真』と言うと、数枚出てきた。

「タビトのはあまりないな。」



けれど両目を開いた写真がある。やはりきれいな緑の目。


長男よりは少し薄い…………でも澄んだ色の瞳。



「…………。」

自分の中であの人の顔が完成したようで………安心する。

ムギの心理層に置き忘れたような、そんな思い出す中にある胸の鼓動が………


この次元、この空間と相まって、やっと落ち着いてきた。



別の一枚を見ると、タビトの横にダークブラウンヘアの女性が笑っていた。

「………」

髪の色で一瞬ガイシャスかと思うが、豊かな髪を後ろに結び、雰囲気が素朴な感じで少し違う。ワズンもその写真を見て少し驚く。

「まだこの写真、あったんだな………」

「もしかしてタビトさんの彼女?」

ワズンがまた、前にここに来た時にもした表情で、仕方ないように笑った。

「婚約者だよ。」

「!」


ワズンは、彼女がまだ婚約を解消していないのを知っている。お見合いで大して話もしなかったのに、カストルが引き合わせそのまま結婚の約束をした。

彼の死後、まだ正式に式もしていないので、「申し訳ないが次に……」とカストルも言ったが、正道教は永遠を約束する。嫌だと今もそのままだ。

「………はあ。」

「……。」

そこまで細かい事情は悟っていないが、過去を考えファクトも何とも言えない思いになった。


ムギはこういうものも背負っていたのかと感服してしまう。自分だったらきっと背負えない。



「で、なんでタビトの写真が見たいんだ?」

「頭が半分なかったから………生きている時どんな顔だったか知りたかったんです。」


少々驚くワズン。誰かに聞いたというより、やはり見て来たような言い方だ。

「あっ、そう言えばファクトは何しに来たんだ?突然。」

「そうだ!カストル総師長に会いに来たんです!」

「総師長…?」

「朝一で教会に行こうかな。」

「…………」

ワズンが変な顔をしている。


「お前、何度も言っている気がするが、先に連絡して予定を聞け。」

「連絡?」

「いるかいないか。総師長がどこにいるか。」

「………。」

「昨夜の仕事が済んでから、直ぐにベガスに向かったぞ。」

「え?マジっすか!!」


どこまでも間抜けであった。



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