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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第四十四章 天の締結

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19/124

18 5大サインが並ぶ



ベガスのメンバーは誰も知らない。


ムギが防いだアジアラインの濁流を。

ファクトはそれを、ステージ下から眺めた。



タイイーはしっかりと語る。

「我々は今、東アジアやユラス、巫女殿に何かを返せる余裕もないが、その分北メンカルが自由民主政権によって統一されるまで、ガーナイトの人材育成に励んでいきたい。」


ムギは何も言わずに頷く。



ムギは目の前にある仕事をしただけだ。


そして、それはユラスが流した血への償いでもあった。



………シュルタンさん。あなたたちみんなの栄誉であり、形見だよ…と。


それがなければムギは壇上には上がらなかっただろう。




ファクトは席の一角にムギの家族がいるのに気が付く。ムギの義兄に呼ばれたのか、リゲルとウヌクも来ていた。そして、ウヌクが何とも言えない顔でステージを見ていることに、ファクトは気が付いた。

「………。」



ムギはタイイーに何か勲章のような物を首に掛けてもらい、それから少しだけマイクに向かい、堂々とした姿勢でアジアラインの平和の言葉と祈りを捧げる。


儀式中は男性や聖別されていない者に触ってはいけないため、アクィラェの古代語の祈りが終わるまで少し離れている。終わると、タイイーはもう一度大きな手で握手をして、膝を折って深く礼をした。


王族が頭を下げたということは、非常に大きなことだ。

ムギはその礼をそのまま天に繋げ、天に送る。


それから、歓声や拍手を受けて空の国の巫女は下手に下がっていった。




***




ムギ母は立ち上がって裏手に回る。ウヌクもファクトもムギの家族と一緒に席を外した。

そして、舞台裏の通路を歩いているムギを見付けるとそちらに駆け寄った。


「ムギ!」

「お母さん!」

暫くムギ母が抱きしめ、みんなそれを見ていた。アクィラェの長老らしき老夫婦や姉巫女もいてムギをねぎらっていた。


「あれ?ウヌク………と…誰?」

いつもと違うファクトが誰なのかパッと分からない。その後ろにいるリゲルは分かる。

「よう。」

とファクトが声を出すと、近くに来ようとしたメンバーに待ったをかける。

「え?ファクト??待って!来ないで!ウヌクもダメだよ!」

「へ?」


そこで姉巫女のナラが答えた。

「儀式の衣装を着ている時、男性は1週間酒と女性を断って、アクィラェ式の聖別をした男性しか触れられないんです。祈りや儀式中はどんな男性もダメです。」

「………へぇ…」

「………はあ…。」

驚く一同。昔の東邦アジアは女性の神が多く、男性しか行事に参加できない文化もそれなりにあったのだが、そんな感じでいろいろ決まりがあるのだろう。なお、男性しかダメというのは、女性の神が女性に嫉妬するからである。昔の西洋南の神話文化によく似ている。神話の多くは王族の話だ。もちろんタイイーは聖別している。


「ムギ、もう脱いでしまいましょ。」

姉巫女が近くの控室に連れて行くので、ファクトは赤く線が引かれた化粧顔のムギを見送った。





「あー!これでおしまい!」


控え室から出てきたムギは、みんなのいるロビーで解放されたように背伸びをした。

衣装は既に車に乗せアクィラェの神職の女性が片付けた。お疲れ、とみんながねぎらう。


でも、ムギは小さくとつぶやく。

「まだ完全じゃないけどね………。」

「…………」

ファクトは思う。多分、北メンカルの情勢であろう。完全に自由の風が吹くにはまだ地盤が弱い。勝手に連合国と手を組んだタイイーは父や兄たちの政権を怒らせただろうし、彼らが反連合国同士で手を組む可能性もある。



「ムギ、お疲れ。」

ニッカはムギを抱きしめるが、本当は全部事情を教えてもらえないことを少し寂しく思っている。


「何か分かんないけど、チビッ子。がんばったな。」

ウヌクが褒めるのでムギは意外で少し驚いてしまう。

「…ムギ、がんばったよ!あんなステージでいっぱい人がいるのに、議長さんと挨拶したんだもん。」

ニッカがさらに褒めてくれる。


ウヌクはまた変な顔で何か考えこんでいた。呆れているのではなく、ムギがまた何か無茶をしていたのだろうと察していたからだ。でも、よく頑張ったと。


ファクトもいきなり壇上に現れたムギが役目を果たしたことに、ひとまずホッとした。

本当は、ガーナイト側としては明日の正式な式典で巫女に感謝の辞を述べたかったが、ムギの立場上身内だけでということになったのだ。




そして、もう一つ大変なことが起こる。



それは、次の日の式典が終わってからであった。


重要なことは晩餐も含め全てが終わり、さらにエリスやユラス議長夫妻、タイイー議長、その腹心など狭い身内だけになった時に告げられ、


ムギは呑気にご飯など食べていられなくなるのである。




***




タイイー入国の日に晩餐があり、次の日にアジア、ユラス、北メンカル・ガーナイト、アジアラインの共同協定決議に入る。


協定締結そのものは、祈りと祭司の儀式、挨拶の後にすぐに行った。


三地域とアジアライン、連合国議長の5人のサインが入ることで全てが終結する。協定証に統一アジア代表、タイイー、ユラス議長サダル、アジアライン代表、そして連合国総議長のサインが並んだ。


その日、内外3百人ほどの参加者の前にその協定証が掲げられ会場は大きく沸いた。基本今回の協議はアジアライン関係者以外、一般人の参加はない。


ムギやチコ、そしてカウスもホッとする。

午後はベガスの視察に入る。




***




「はー!終わったー!」


昼に簡単な昼餐が振舞われ、南海広場もお祭り状態になっていた。ミラの迎賓館には呼ばれた人間しか入れない。チコから『ファクトも来い。すぐ来い!』とメールが入っているが無視である。旦那に助けてもらえばいいのだ。

ムギにも同じメールが入っていたが、ムギもファクトたちも既に南海にいる。



「これは絶対に儲ける。あの花札じじいたち…。清算きちんとさせないとぼったくっていそうだ。」

ファクトが肉料理が並ぶ広場を見ながらつぶやく。

今回は補助が出ているので、料理は全て半額以下だ。

ニッカが民族舞踊を披露するのでムギは残るか迷ったが、昨日は緊張したし、知り合いがいる中でまた何かさせられたら恥ずかしいので逃げてきたのだ。


「ラムダー!ジェイ!こっち!」

「ファクトー!」

ジェイやリーブラにも会う。リギルも連行され、日に晒されていた。ジリやタイたちもいる。


「おじさんは?」

青年アーツより元気な婚活おじさんである。

「…そんなん決まってるじゃん。カーティンさんは会場入りしてるよ…。」

婚活に決まっている。

それどころか、ベガス征服おじさんである。王子様がいるところに行かないわけがないし、きっちり招待状までゲットしていた。なにせ、ヴェネレ中心国の首都ディナイ商工会の会長であり、経済団体コンパラスクラブの会長でもある。おじさんは強いのだ。


「ムギー!昨日はかわいかったよ!世界一かわいい!」

「リーブラ、酔ってるのか?ファイは?」

「ファイは王子様を一目見るんだって、モアやライたちとずっとミラにいるよ。」

「見ても、キラキラプリンス衣装は着てないよ…。キラキラ王子もいないし。腰巻はシルクっぽくはあるけど。シルクって言うんだっけ?あのちょっとテカテカした巻き布。」

横からファクトが残念そうに言うが、誰もそんなもの期待していない。


「えっと…取り敢えずドリンクとサラダ来たし、乾杯しよ!」

ラムダとリゲル、ジリたちが食事を持ってきたので、乾杯して食事を始める。


結局、子供たちも来て大所帯になり、その日は賑やかに式典の全行事を終えた。




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