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ZEROミッシングリンクⅥ【6】ZERO MISSING LINK 6  作者: タイニ
第四十三章 緑の瞳

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13 久々の講師響 五色の星とその中央

作中の漢方や文化のお話は、実際の五行をモデルにしていますが、このお話用のものです。星の話などは創作です。



「ああ!なんだこれ??」

ベガス駐屯でいきなり大声を出す人。


チコのプライベートデバイスに送られてくる、たくさんの写真。最初は子供たちのパーティーだと思ってみていたのに、キロンやレーウもいる。

「は?響?レサト?ジリオ??」

ジリオはジョアの歳の離れた従妹だ。ディオと婚約をしたハイザースの姉である。ユラスから赴任して、そのまま参加したのだ。

「もしかして時長?!」

「はー。おいしそうなもの食べていますね。」


「ファクトの奴!!」

と、返信をしようとするチコの電話をアセンブルスが止める。

「あ?なんだ??」

「会議中です。」

「会議中?その議題の最中(さなか)のムギもいるぞ!!」


「………知っています。ジリオからも連絡が来ています。」

「しかも響っ。私が護衛に行く!!」

「大丈夫です。シャールルもいるし、そのためにレサトとオッジーも付けました。」

オッジーは保護者組の中にいる軍人パパだ。

「お前ら万全の準備をしておいて、なんで私に報告しないんだ!!」

「行きたいとか言い出すでしょ。」


黙ってしまうチコの答えをみんな待つ。


「…行きたい………。」

「………。」

ガイシャスやその他のメンバーは返事のしようがないが、想像通りの答えである。


「日帰りもできるだろ?」

「議長が東アジアと話を詰めている時に、遊びに行くんですか?」

議長は都心で会議中である。

「遊びじゃない!むこうのアーツの視察と護衛だ!」

「だからレサトとオッジーがいます。視察はリゲルやソイドなどきちんとしたメンバーがいますから。」

「…はあ……。」

あきらめたくないがあきらめる。


「でも、帰って来たら一気に協定決議に入るぞ。ムギにも説明や演習が必要だろ。」

「ムギは表に出せません。今、ムギに話を持って行かなくていいので、チコ様が仕事をして下さい。」

何と言ってもムギは『(あか)』でもあり、ある意味諜報員でもある。


「ムギとなら会場に耐えられるとでも思ったんですか?」

国際祝典、最低でも1時間は大人しく人目にさらされる。隣にムギがいれば安心なのに。

「…………」

「子供ですか?」

カウスも言ってしまう。


しかし、逆らってファクトに電話を掛けるチコ。

「あ!人の話を聞かない人ですね!」

カウスを無視するが、着信に出てくれない。そしてメッセージに切り替わった。


超絶落ち込むチコであった。




***




その頃子供たちは、デザートのマシュマロを焼いたりアイスクリームを食べながら花火中。


中学生以上と希望者は、時長の先生からこのプロジェクトの概要の特別講習を受けていた。

移民にどう教育をしたら地方活性の担い手にできるか。その失敗例から成功例などの把握。ソイドやソラ、シャムやリギル、ニッカたち教育学科の学生が受けている。





一方、ファクトはリゲルやティガ、レサトと一緒に響の講習に入っていた。ムギも来ている。


響は昨日の夜と今日の午後も、時長校の学生相手に講義だ。

今夜は『宇宙と自然に宿る色と体系』という主題で、触りだけだがまさに五色(ごしき)、五数の講義をする。



五行相関図を中心に食べ物や自然形態、大陸、お寺など様々なものが出てくる。身近な物に例え、話が実に分かりやすい。昨晩の評判を聞いた時長の講師や教授たちも、夜まで残って聴きに来ていた。


アジアが失ってしまった精神性の介在する生活様式の中に、サイコスや自然、霊性をコンロトールしやすくなる方式がたくさんあるとも説明する。


アジアは西洋文化がなくしてしまった天理と自然科学が共にある精神性中心の世界を、発展を遅らせても放棄せず、数千年かけて積み上げてきた。本来それは西洋の天理と合わさり、西洋が失ってしまった『感覚』による科学を取り戻さなければならなかったのに、ただ見える近代化を果たし、精神性を失おうとしている。

前時代は堕落した神論に嫌気がさし、啓蒙思想に傾向した天の(ことわり)の無い科学であった。



「皆さんこんなふうに、言葉で言われるだけでは机上の空論に過ぎないでしょ?」

「………。」

「それで身近な物として、人の体を見るんです。例えば人の体は五で星を成している物が多い。手のひらから出る指の数、胴から出るものも四肢と頭で五でしょ。鼻から広がる目耳口。」

「ほんとだ!」

みんな自分の体を見たり触っている。


「先生!」

「はい。えっと君!」

と手で一人の生徒を示す。

「でもそうすると、四方と中心があって五なので、六じゃないですか?」


「お、鋭い。数は収まりながら展開していくんです。展開しながら収まっていくとも言えるし。

でもその話は『五』をある程度知ってからの話ですね。五の中には三角形もあるし…あまり枠を出てしまうと、今度は数学者教授にお任せした方がいい分野になるんです。」

お手上げと響が手を上げ、見に来ていた数学教授の方を見ると、教授はとんでもないと手を振った。



「先生!セイガ大陸の中央で、数学が発祥したのもそれですか?」

「まさにそうです。」

「東と西の文化の真ん中で、数理が目を開くんです。星の真ん中でしょ?」


「皆さんには身近で分かりやすい話をしましょう。」

と笑って、午前中に子供たちや生徒と採ってきたり洗った野菜や漢方を配っていくので、興味深そうに生徒たちが触れている。

「せんせー!これ何ですか?」

「乾燥ナツメです。この辺では特産じゃなかったっけ?。」

「俺、ここの出身じゃないんです。」

生徒が興味深そうに見ている。


「赤いけれど、普通の生のナツメは見た目も中も小さな林檎みたいですよ。」

響がナツメの映像で説明する。植物や食材、漢方にも様々な五行があるのだ。


「でも、この五行相関図ではナツメと林檎と違う分類にあるよ。」

「リンゴは『酸味』でナツメは『甘味』ですね。色だけでなく味覚でまた違った分類があります。リンゴは『青』、ナツメは『黄』のところです。」

「へー。甘いんですか?食べていいですか?」

「今のコマが終わったらどうぞ。教材ですので、まだ食べないでね。」


「響先生、『木・火・土・金・水』…これって、色を見ると『青・赤・黄・白・黒』で『シアン・マゼンタ・イエロー・ホワイト・ブラック』にもなるね。」

「シアン・マゼンタ?」

そう言う生徒に、今度は響が一瞬分からなくなる。


「先生、色の三原色です!実際はホワイト・ブラックも来るんです。こう見ると、東洋の方が先に三原色を見出していたのかな……とも思います。無自覚で。」

「そうなの?色の三原色を出してちょうだい。」

アンタレスから来た生徒の言葉で響が指示を出すと、色の三原色が表示される。

「…あ、ホントだ。赤、青、黄と金とかしか考えたことがないから分からなかった…。世界を構成する色なんだ。おもしろいね…」


『李・杏・棗・桃・栗』………」


と、賑やかに授業が進んでいく。



「………。」

それを聞きながらファクトは、響がDPサイコスの安定した使い手ということが、なんだかとても良く分かる。



響は、自分は威力系のサイコスターとしてはそこまで強い存在ではないと言っていた。


ではなぜ、響は自分より強く攻撃性のあるものを封じられるのか。




全てはバランスなのだ。



無下に信じ受け入れるだけでも真理には到達しない。

かといって、疑心や不信、攻撃性が多すぎても真理は逃げていく。


時に悩み、時に素直に受け入れ、それが自身の中であらゆる和を成しているのか見極めながら、常に成長していくのだ。神は常に存在し、真理は一つでも、体感と実感は誰でもなく自身が極めなければならないのだから。


現実だけでも上辺しか見えない。でも、神秘だけ追っても真理には到達しない。

この現実に、全て天啓と数理があるのだから。



ただ強いだけでは、自然の理が、その人を膿のようにいつか排除してしまうのだ。




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