第八話
金曜日の夜、パソコンの前で緊張していた。
コントローラーはある、イヤホンもある、飲み物も用意した、トイレにも行ってきたし、準備万端だ。
ゲームにログインして、教えてもらったサーバーの部屋にアクセスした。
部屋の中にはキャラが二人いて、容姿からヒカリさんとユメさんだとすぐに分かった。
「ヤホー、ヤホー」
イヤホンからヒカリの元気な声が聴こえてきた。
「ウィッス。アカリは十五分ぐらい遅れるらしい」
次はユメの落ち着いた声が聴こえた。
「えっ? えっ? もしもし?」
まさかゲーム内で喋るとは思っていなかったので驚いた。こちらからの声は聴こえてないようだった。何度か試していると、マイクに何も入力されていない事に気が付いた。マイク付きのイヤホンなんてあったかなぁ。
机の引き出しの中を探しているとスマートフォンを変更した時におまけで付いてきたマイク付きイヤホンが出てきた。コレ、使えるかなぁ……。
「あ、あ、もしもし? 聴こえます?」
「オーケー、オーケー。聴こえるよ! おぉー、カスミのキャラじゃん! そっくりー」
ヒカリのテンションの高い声が響いた。
ログイン表示にアカリの名前がポップアップされた。
「どうもー。お疲れ様ですー。アカリですー。今日はリベンジ行くでしょ?」
「カスミが加わったから勝てるでしょ」
自信満々にヒカリは答えた。
「ちょっと、ちょっと」
初心者の私は何の事か分かっていなかった。
部屋の中に四人のキャラが集まった。
アカリは剣と盾を装備した戦士タイプのファイター。ユメは大盾と棍棒を装備した騎士タイプのディフェンダー。ヒカリは大弓とナイフを装備した狩人タイプのアーチャー。カスミはメイスを装備した僧侶タイプのプリースト。
ヒカリとユメはレベル十五、アカリはレベル十一、私はレベル三。チュートリアルをクリアするだけで経験値が貰えてレベルが三まで上がっていた。
リーダーとなるヒカリの声が聞こえた。
「カスミ、戦う時のロール(役割)を説明するね。敵が出てきたらユメが引きつけるから、その敵をアカリと私で叩くの。カスミは逃げ回ってても良いよ。体力が減った仲間がいれば回復してあげて。あと、敵からの攻撃には気を付けて」
「うん、分かった」
「それじゃ準備オッケー? 出発するよ、ついてきて」
部屋から出て、走っている三人の後ろで遅れないようについていった。




