第六十二話
「あの、すみません。先月、ディスプレイに飾ってた服って売り切れました?」
アカリさんは店員さんに普通に話し掛けている。声は“ソ”の音だ。
「ちょっと確認しますので、少々お待ち下さいませ」
店員さんは店の奥へ姿を消した。
「運が良かったら、残っているかもね」
アカリさんは私に向かってウインクをした。
「こちらで宜しかったでしょうか?」
店員さんが持ってきた衣装箱の中に欲しかったフレンチガーリー系の服が入っていた。
「これ! この服!」
私はテンションが急に上がって、言葉がすぐに出てこなかった。
店員さんとアカリさんの話を聞いていると、ディスプレイに飾ってある服はシーズンチェンジで変更されて、在庫になった服は本社に返却する予定だった。衣装箱を梱包する前で販売は可能という事だった。
欲しかったフレンチガーリー系の服を買うことができた。ついでに靴も一緒に買うことができて、とても嬉しかった。アカリさんのお陰だ。
「欲しかった服があって良かったね! さ、他の店も見て周ろう。ちょっと見たいのがあるのよ。あと、クレープも食べようかな。ね?」
店を出ると、アカリさんは元気にそう言った。
たぶん、アカリさんと一緒にいると元気をもらっているのだと思う。私一人だったら、こんなに行動力が無いし、店員さんに話し掛けたりしないと思う。
アカリさんは人とのコミュニケーション能力が高くて、頭の中の自分が考えている事をちゃんと相手に伝わるような言葉で声に出して話していた。
私だったら頭の中の自分が考えている事を相手に伝わるような言葉にするのが難しいし、声を出して伝えるのに時間が掛かると思う。
要するに、相手がどう思っているかも、と余計な事を考えたりしているから、伝えたい内容の文章を組み立てるのに時間が掛かり過ぎて焦ってしまい、言葉足らずで相手に伝わらない内容で説明しようとしてしまう。
だから伝わらない……。
たぶん、私がHSPだからそうなってしまうのだろう。私が見る限りアカリさんはHSPではない。HSPである私はやっぱり劣っているのだと思う。




