第六話
「カスミ! あなた、ヒーラーになりなさい!」
ある日の講義終了後に、振り返った光里さんは私の瞳を覗き込んで、勢いよく言った。
「えっ? 何? ひ、ひいら?」
何の事を言っているのか分からず、目を丸くして思わず聞き返した。
「ちゃんとイチから説明しないと、何か分からないって。ヒカリさん、せっかち」
隣にいる明利さんはフォローするように言葉を続けた。
「“ディバインドラゴン・オンライン”っていうパソコンのゲームがあってね。私も最近、誘われて始めたんだけどね。カスミさんはゲームとかするの? 今ね、ヒカリさんとユメさんと私の三人でパーティーを組んでて、カスミさんも一緒にどうかなって」
「どんなゲーム? アクション?」
自分もパーティーに加えてもらえると思うと、ゲームのジャンルがとても気になった。
「アクションRPGだったかな、レベルアップするし。みんなで協力して敵を倒していくゲームで、出てくる敵が強くって、強くって。ちょうど回復役のヒーラーがいないから欲しいねってなったの。カスミさん真面目そうだからゲームとかしたこと無いかもしれないって、皆で話してて」
明利を含む三人は私の顔をじっと見ていた。
注目を浴びて恥ずかしくなった私は咄嗟に答えた。
「うん、私もやってみる。回復役って自分に合ってるかもしれないし」
光里さんは腕を組んで頷きながらこう言った。
「いつもは毎週水曜と金曜日の二十二時に集合ね。チュートリアルは終わらせておいて。分からないことはユメに聞いて」
「もしインストールで詰まったらメールしてくれたら教えるよ。電話でも良いし」
優芽はクールな感じで言った。
皆で一緒にゲームすると思うと、私はとても心が踊るような気分になった。
高校生の時に“アンドロメダオデッセイ”というオンラインゲームをプレイした事があった。ずっとソロでプレイしていたけど、受験が始まってからプレイしなくなった。それ以来、ゲームは何もしていない。
自分以外の女子もゲームで遊んだりするって思ってもいなかった。リオもゲームはしていなかったし。こういう風にゲームで誘われるのなんて初めてかもしれない。
今までソロプレイだったから、協力するゲームって初めてだ。楽しみでもあるけど、気を遣ってゲームすると思うから不安でもあった。役に立たなかったらどうしよう、自分のせいで負けたらどうしよう、と考えるとキリがない。一人で自由にプレイしたいけどね。