第五十一話
休日の朝、私はエプロンをして台所に立っていた。両親にフレンチトーストを作るから、上手くできるか緊張している。
卵と牛乳をかき混ぜて、砂糖とバニラエッセンスを加えて卵液を作る。半分に切った食パンを卵液にしばらく浸しておく。フライパンにバターを溶かして、浸した食パンを焼く。
三分ぐらいでひっくり返すと焼き色がついてくるはずだけど、家のフライパンはテフロン加工だから焼き色があまり付かないね。もう少し焼いて様子をみてみる。
三十秒毎に焼け具合を確認した。もう出来たかな、自分の感覚で判断する。
お皿に見映えよくキレイに盛り付けて、その上にバニラアイスを乗っけてメープルシロップを垂らせばフレンチトーストの完成。
珈琲はネルドリップできないので、インスタントコーヒーを淹れた。
「あら、美味しいじゃない。お店で食べているみたい。お料理ができるようになってバイトして良かったわね」
母親は何度も頷きながら、あっという間に食べ終えた。
「とても美味しいね。完璧だね」
父親はゆっくりと味わいながら食べて、笑顔でそう言った。
喜んでいる両親を見て、上手く出来ていたみたいで良かった。
やっぱり気を遣って、“美味しい”って言ってくれているのかなと思った。作った本人を目の前で不味いなんて言えないだろうし。
朝食後、テレビを見ているとニュースが流れていた。ソロキャンプをしているキャンパーを狙った強盗が多発している、といった内容だった。
数年前にソロキャンプが流行ってから、キャンパーを襲う事件が何件かあったけど、最近になって急に件数が激増してきた事件。“ソロキャン狩り”っていう言葉までできた。
世の中、悪い人間が多いなと思った。悪い人間がいなければソロキャンプも安全にできるのに。こういうニュースを見る度に、悪い人間は消えて無くなれば良いと思った。




