第四話
講義終了のチャイムが鳴った。今日の講義は四時限目で終了だ。初日は新しい環境と緊張で精神的に疲れた。今日はもう帰宅できると思うと嬉しくなった。
光里さん、優芽さん、明利さん、私の四人で何となくグループになって行動することが普通になってきた。このように人との繋がりが徐々に形成されていくのが不思議に思えた。グループに入れてもらえるのは良いけど、私が一緒にいて邪魔にならないか心配だった。
「気づいていないだけで、心理学って身近にあって面白かった」
光里さんは鞄を肩に掛けながら話し掛けてきた。
すかさず明利さんが喋りだした。
「そうね。バーナム効果とか、そんな名前が付いてるのって知らなかったね。星占いとかは誰にでも当てはまるような内容ばっかりじゃんってずっと思ってたけど。バンドワゴン効果もそうだね。世の中の流行りとか評判を気にしてしまうから。あと、プラシーボ効果は有名だよね。薬とか飲んだ時、自己暗示で治っちゃうってのはあるだろうし」
「もっともっとあるんだろうね、なんたら効果とかっていう心理的な事って。さ、行こう」
光里さんはそう言って笑顔を見せた。
優芽さんと私は二人の会話を聞いて頷いた。優芽さんは無表情のまま、何か考え事をしているような感じだった。私は気を遣って笑顔を作った。
そんな話をしながら教室を出ようとした時、一番後ろの席に座っている一人の男子学生が目に入った。何となくピンとくるものがあった。たぶん、この人……、今朝私がぶつかった人だ。
建物の外に出ると少し肌寒く感じた。春服はまだ早い。
「今日、バイトあるから先に行くわ、じゃあねー」
腕時計を眺めながら明利さんは走っていった。
「私達はサークルがあるから」
光里さんの指が帰り道とは違う方向を指していた。部室がある方向なのかな。
急に一人になった。
※バーナム効果……誰にでも当てはまるような曖昧で一般的な性格などの記述を自分が当てはまる性格だと捉えてしまう現象。
※バンドワゴン効果……流行っている物や事柄などで、複数の選択されている物が更に選択されやすくなる現象。
※プラシーボ効果……効果の無い薬を処方しても、良い薬と信じ込む事によって改善がみられる現象。