第三十四話
「ん~、ん~」
どこからか聞こえるドアのノックで目を覚ました。
「カスミ? もうお昼よ。いつまで寝ているの?」
母親の声がドア越しに聞こえた。
起き上がると頭が痛い。目を使いすぎた時の片頭痛に似ている。目を開けると頭の痛みがよりひどくなる。夜になかなか寝れなかったからかな。
部屋に入ってきた母親に頼んで鎮痛薬を持ってきてもらった。目をつぶりながら、お薬を飲んで横になった。
そのまま静かに寝ようとしていた。
頭の中で何かの映像が浮かんできた。
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風が吹いている。私は海辺で空に浮かぶ雲を眺めていた。
雲の形って刻々と変化していっているんだね。同じ形の雲がずっと流れていると思っていた。
今まで見たことのない海岸沿いの街並み、夕暮れで街灯の光が道路を照らしだした。
私は誰かを待っていたのかもしれない。心の中は不安で一杯だった。心が熱くなっては冷めてを繰り返している。
流れていく雲の大きさよりも、私の心の不安の方が大きく感じる。
周りから聴こえる音も一層よく聞こえる。もし誰かが歩いてきたら、すぐに分かる。
あぁ、遠くから誰かの足音が聞こえてくる。
私は振り返って、こちらへ歩いてきた人の顔を見つめた。
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そこで映像は突然、途切れて終わった。




