第三話
一時限目の講義が終わり、休憩時間になった。教室内は話し声や席を立つ音で周りがざわざわと騒がしくなった。
「ユメ、トイレ行かない?」
目の前に座っている光里さんは立ち上がり、隣の人を誘った。
光里さんの隣に座っているのが瀬森優芽さん。光里さんと高校から一緒で友達みたい。体格が良くて、ショートカットヘアーだったから最初、男の人かと思った。オリエンテーションでも一緒だったけど、あんまり喋る機会が無くて、まだどんな人かよく分からない。あまり喋らない感じが何となく自分に似ていると思った。
光里さんと優芽さんは教室を出て行った。
「講義時間が一時間半って長すぎない?」
私の隣の席に座っている椎川明利さんが話しかけてきた。オリエンテーションで一緒だったので仲良くなった。私から話しかけるのは苦手だから話しかけてくれて良かった。
「そうだね」
「高校生の時は授業の時間って、だいたい五十分だったじゃん。まだ終わらないかって、途中で何回か時計を見ちゃったから。だって人間の集中力って一時間ぐらいし続かないって聞くし、休憩が必要じゃん」
「うん」
「国語とか英語とか共通科目の講義もあるから多いよね。単位を取る為に講義を受けれるだけ受けてたら一日がぎっちり埋まっちゃうじゃん。五時限目まで埋めた場合、終わるのが十八時前よ。私、もっと余裕かと思ってたけど、高校生の時よりもキツくない? 受験勉強で毎日勉強ばっかりしてきたのに。大学に入ってまだ英語の勉強をするのかって感じ。倉里さんは第二外国語って結局、何を選択した? フランス語? ドイツ語? 中国語?」
「ドイツ語かな」
「やっぱりそうだよね、私もドイツ語を選択したよ。中国語は将来的に役に立つかもって聞くけどね。でも、まあドイツ語を専攻しているのってカッコいいじゃん。英語に似ているから理解しやすいって、そんなイメージするし」
一つ言葉を返したら、次から次へと言葉が返ってくる。“お喋り”っていうと悪口に聞こえるけど、自分の考えている事をスラスラと言葉で口に出せる明利さんは素直に凄いと思う。私は考えている事を言葉として口から出すのに、余計なことを考えてワンテンポ遅れるから駄目なんだと思う。