第二話
大学の入学宣誓式の翌日からオリエンテーションというのがあった。新入生は学校に集合して、バスに乗って山奥の宿泊施設まで行く。そこでは授業科目の履修方法や学科別のガイダンスを受けたり、決められたチーム毎で課題を行ったりして、二泊三日した。小学生の時の林間学校みたいな感じだった。
オリエンテーションに行く前、私は憂鬱だった。初対面の人と集団行動をするのが苦手。たぶん皆も同じだと思う。皆がよそよそしくて、相手がどんな人なのか人手探りの状態でずっと落ち着かない。その雰囲気はとても疲れる。夜も寝れないし。
その場で友達が出来なくても良いと思った。むしろ無理に友達を作ろうとは思わなかった。私にとって友達を作るのはリスクでしかないと考えていた。普通は人に群れて同じ価値観でいないと不安で仕方がないから無理に友達を作ったり、グループに入ったりすると思うけど、私は独りで良い。自分からは干渉しないし、どのグループにも入らないつもりだった。
----------
広い教室の中で席の三分の一ぐらいは人で埋まっていた。何となく仲の良い者同士が集まってグループ毎に座っているようだった。私はだいたい中央に位置する席に座った。
「遅かったじゃん、カスミさん」
「間違えて十四棟に行っちゃって……」
「アハハ、天然だね~」
今、話している相手は夏神光里さん。オリエンテーションで同じ部屋になり、話しかけてくれたのがきっかけで仲良くなった。チームで課題を行う時にも一緒に取り組んだ。私が独りでいると私の事を呼ぶので、一緒に行動するようになった。
「て、天然?」
「だって、アニメみたいな間違いをするから。 カワイイし」
「そうかなぁ」
なぜか光里さんに気に入られているみたい。恋愛対象が女性な人ではないと思うけど、人柄が良いし、一緒にいると楽しい。別に悪そうな人ではなさそうだし、それに親友の北上理央奈に何となく雰囲気が似ていた。私は人を引っ張っていくようなタイプと合うのかもしれない。
他の人は建物を間違えずに、この部屋にちゃんと辿り着いたみたい。でも、私のように間違えた人は絶対にいると思う。