第十九話
今日は放課後にいつもの四人でカラオケに行くことになった。
誘われたら断りにくい。断ったら相手が嫌な気分になるのが嫌だから。
ヒカリさんに「カスミも行くよね?」って聞かれたら「うん」と言ってしまう。
カラオケ店では、ヒカリさんとアカリさんが主に歌っていて、ユメさんと私は聴いている。最近の歌ってあんまり知らないから、何を歌っていいのか分からない。
聴いたことがある歌でも、すぐに歌えるかどうか分からない。
ヒカリさんとアカリさんはどちらも歌が上手くて、聴き入ってしまう。
普段から人とよく喋っているから声が出るんだろうな。私はあんまり喋らないから声が出ないのかな。
手拍子しながら聴いている方が良い。私の歌が下手だったら、みんなに悪いと思うし。
正直言うとそれほど楽しくはないが、盛り上がって楽しんでいる振る舞いをした。
「ちょっとトイレ行ってくる」
私はドリンクを飲みすぎたから、曲の合間にトイレに行った。ちょうどユメさんも一緒のタイミングでトイレに行くみたいだった。
あと、どのくらい歌うのだろう……。
大きな音で歌っているのを聴き続けたからか疲れてきた。早く帰りたいなぁと思っていた。
トイレを出て、さっきの部屋まで通路を歩いていたら、誰か知らない男の人がこっちを見ていた。顔がガイコツみたいで見た感じから変な人だなぁと目を合わせずに、そこを通り過ぎた。
すると、急に左腕を引っ張られて部屋に引き込まれた。
「えっ? えっ?」
知らないガイコツ男が私の腕を握っていた。部屋の中には他に誰もいない。
私は長椅子に押し倒された。そして、のし掛かってきてガイコツ男の顔が近づいてきた。
「ねーちゃん、かわいいねぇ。俺といいことしよーぜ」
お酒とタバコが混じった臭い息がにおってきた。
私は恐怖で声が出なかった。必死に抵抗するが、ガイコツ男が重くて押し返せない。
両手が動かせず、身動きが取れない。そうしているうちにスカートを捲られた。
「い、イヤっ!」
突然、私の腕を握るガイコツ男の力が抜けた。すると、ガイコツ男は飛ばされて床に大きく叩きつけられた。
何が起きたか分からなかった。
目の前にユメさんが立っていて、物音を聞いて駆けつけた店員に対して何かを喋っていた。床にのびているガイコツ男を指さして怒った表情で何かを言っていた。
「カスミ! 大丈夫!」
ヒカリさんが私の所へ来て、目を見つめて言った。
「知らない人に押し倒されて、%△※&♯〆……」
大粒の涙が出てきて、嗚咽で言葉にならなかった。
私はヒカリに抱きしめられて、ずっと泣いていた。




