第十八話
役割通り、ユメが巨猿を引きつけてガード、ヒカリの弓矢とアカリの剣で攻撃を続けていると、再び巨猿が転倒した。
「チ、チャーーーーンス!」
思わずヒカリの声が上ずった。
「いけそう、いけそう、いけるんじゃない!」
アカリもいつも以上にテンションが高くなった。
私は仲間が騒いでいる状況でも、落ち着いて仲間の防御力を上げる魔法を唱えた。自分の役目を忘れてはいけない。
立ち上がった巨猿は雄叫びをあげた。
巨猿の体力ゲージが着実に減っている。このまま攻撃していれば倒せると思った瞬間、巨猿は森の奥へ逃げ出した。
「ちょちょちょちょちょっと、えっ?」
アカリは巨猿がいなくなり、何が起こったのか分からなくなっていた。
みんな状況が分からず、動きが止まっていた。
「あっちに逃げて行ったよ! 追いかけよ!」
ヒカリはそう言うと、巨猿の逃げた方向に向かって走っていった。
続いて、残りの二人と私も後を追いかけて走った。
大きな洞穴の前で巨猿は立ち止まった。疲れた様子を見せている。そんな姿は初めて見た。
ヒカリが力を溜めながら、狙いを定めて矢を放った。
巨猿の頭に当たると大きな爆発と共に轟音が鳴り響いた。
“討伐完了!”
画面に表示され、巨猿はスローモーションでうつ伏せに倒れた。
「倒した! やったー! やったー!」
各々が同時に喋っているので、何を言っているか分からないが、倒せて嬉しいというニュアンスは伝わってきた。
「ヒカリさん、最後の攻撃は何? 凄かったんだけど」
私は気になって聞いた。あれはスキルに違いない。
「ヒカリって呼んで良いよ。あれは“溜め打ち爆破矢”っての。とっておきのとっておき」
自慢そうにヒカリさんは説明をした。
やっぱりアーチャーのスキルっぽい。凄いなぁ。巨猿は弱っていたけど、最後の一撃は強かったなぁ。強烈なインパクトがあったので、映像が頭に残っている。
三十分ぐらいずっと緊張しながら巨猿と戦っていたから、倒して脱力感で力が抜けた。手に汗をかきすぎていて、コントローラーが濡れていた。
ヒーラーを担当している私はこのパーティーの縁の下の力持ち。それが私の性格に合っていると思う。




