第十六話
夕食の時、私は両親に最近の出来事について話をした。
「今日、友達同士でシェアハウスしない?って誘われて、結局はその話は無くなったんだけど」
「あら、良いじゃない。仲良し同士で楽しそうじゃない。皆でいつでもワイワイして」
母親は予想通りポジティブな反応だった。
「シェアハウスか……。シェアハウスは気を遣いそうだな、友達同士でも」
父親の考えは私と同じで、想像している事も同じ感じだった。
やっぱり空気を読みすぎたり、人に気を遣いすぎたりして、この家にいるように自然体でいられないのかもしれない。自然体でいられるのもこの家にいるからなのかな。
私がHSPじゃなくて、普通の人だったらシェアハウスでも問題なかったのかもしれない。
私がHSPじゃなければ良かったのに……。
「あと、バイトしようかなって考えてて。友達にバイトを誘われててどうしようかなって」
もう一つの出来事の話をした。
「友達となら良いじゃない、何事も社会勉強になって。どんなバイトするの?」
母親は新しい話題は何でも楽しそうに聞いてくれる。
「カフェバイトだって。七町珈琲って言ってた。仕事内容が大変そうで、私にできるかどうか分からない」
私は正直に不安な気持ちを口から出した。
「できる、できる。若い頃は何でも乗り越えられるものだから」
母親は自分の若い頃を思い出したのか、説得力のある雰囲気で言った。
ポジティブ思考な母親で助けられる事が多かった。
新しい事を始める時はいつも慎重な自分にとって、取り越し苦労が多いのかもしれない。
「バイトも良いけど、勉強も怠らないようにしないとな。勉学がメインだからな」
父親が言った事は、私が考えていた事と同じだった。
自分と感性が近い父親で、私の話を否定する事も無く、喧嘩する事も無かった。
でも、父親は新しい話題では心配そうに聞いている様子だった。
バイトの事でも、できるかどうか自信が無かったり、何度も何度も躊躇して二の足を踏んだりする自分を客観的に見るととても嫌になった。私も母親のようにポジティブに考えて飛び込んでいけたら、乗り越えて行けたらどんなに世界が広がっていただろう。
大学生になって、自分なりにチャレンジしていると変われるかな……。




