第十五話
ある日のお昼休憩、いつもの四人グループで大学の第二食堂に行ってご飯を食べていた。
「何で都心の電車って遅延が多いんだろうね」
私は今朝も電車の遅延で講義に遅れかけた事が気になっていた。
「ね、多いよね。この辺は路線が多いから一つの路線に遅れが発生したら、その影響で次々と遅れるんだって。路線が繋がっているのは便利だけどね」
アカリさんはサラダを口に含みながらそう言った。
「ん~、便利だけど遅延が発生するのは困るなぁ」
私はササミカツをお箸でつつきながら、困った顔をした。
「そういえばカスミ。朝は何時ごろに家を出てるの? この前、広尾山方面って言ってたからさ。通学時間ってどのくらい掛かってるんだろうって思って」
アカリさんはチキン南蛮を口に含みながら聞いてきた。
「七時ぐらいかな、家を出るのは」
腕時計を見て、思い出しながら私は言った。
「シェアハウスとかどう? 四人でさ、大きな家を借りてさ、しかも都心で! 楽しそうじゃない?」
ヒカリさんは面白い事を見つけたように目を大きくした。
「都心だと家賃が高くない? いくら位するんだろ。場所にもよるよね、駅近だったら高いだろうし」
話に乗ってくるのはやっぱりアカリさんだった。
「もし家賃が二十万円でも四人で住めば一人五万円よ。アリじゃない? 自転車で大学まで十五分ぐらいだったら駅から近く無くても良いし、電車遅延も関係ないし」
ハンバーグを食べるのを中断してヒカリさんは話を続けた。
「電車乗らないのは良いね」
私はその案が素直に良いと思った。
いつも無口なユメさんが口を開いた。
「賑やかで楽しそうだけど、シェアハウスで暮らすと仲が悪くなるって聞くよ」
「やっぱりプライベートが最低限になっちゃうし、ずっと一緒だもん、ストレス溜まるのかもね。小さな事で揉め事とかありそう」
さすが、アカリさんは察しが良い。
折角、仲が良くなりかけてきた友達なのに、話もしなくなるようになったら嫌だなぁ。私は人に対して特に気を遣うので、部屋に籠ったまま出てこなくなったりしてしまいそう。神経が図太い人は良いだろうけど。私は精神的に参ってしまうと思う。
「良い提案だと思ったけど、喧嘩になるのは嫌ね。私はカスミと一緒に住んでみたいけどなぁ」
残念そうな表情のヒカリさんが思いがけないことを言った。
「ええっ? 私と? ユメさんとじゃなくて?」
突然の言葉に私は思わず聞いてしまった。
「だって、カスミは透明感があるから。一度、ツーサイドアップにしてみない?」
そう言ってヒカリさんは嬉しそうな笑顔を見せた。
答えになっていないような回答に私は笑ってしまった。
そういえば“透明感がある”って一回、言われたことがあったなぁ。高校の時に撮った動画のコメントだったかな。
自分では全く意識していない事だけど、他人からはそう見えるって事が不思議だった。見た目はそう見える事があるかもしれないけど、中身は全然駄目だから。HSPで全然駄目だから……。




