第百十四話
その夜、私は東河さんの事が心配で眠ることができなかった。
何があったのだろう……。
まさか、本当に死んだりしないよね……。
頭の中で怖い想像がずっと動いていて止まらない。不安が次々と浮かんできて、合わさっていく。
黒い影の誰かから文句を言われている東河さんの姿が頭の中に浮かんできていた。
「HSPとか言うのは”甘え”でしかない。自分自身の能力の低さ、心の弱さに対する“言い訳”にすぎない。HSPの自分だけが生きづらいなんて思うな」
言葉の暴力で東河さんの心が傷つけられていると思うと、まるで自分が傷つけられているように心が痛い。苦しい気持ち……、人間に対する嫌悪……、誰とも干渉したくない……。過剰同調性によって私の心に伝わってくる。
再び、黒い影の誰かから文句を言われている自分の姿が頭の中に浮かんできた。
「HSPだから何? 失敗を大目に見ろって言うの? 遅いペースに合わせろって言うの? 人間としての能力が劣っているHSPは邪魔なんだよ。現実世界のこの社会でお荷物なHSPは消えろよ」
心無いことを平気で言ってくる。
何故、人を傷つけるような事を平気で言えるのだろう……。
傷つけられた私の心は激しく痛い……。私の心が押しつぶされて壊れそうになる。
でも、これは単なる私の頭の中の想像でしかないはず。実際にこんな事は言われていないから関係ない。そう思い込めば大丈夫なはず。
いいや、想像であっても私の心は酷く傷ついていた。
東河さんの心を傷つける人間は嫌い。私の心を傷つける人間は嫌い。
人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。人間が嫌い。私は人間が嫌い。
一瞬で心が落ちそうになった。
頭の中で嫌な想像がグルグルと動き回り続けて、目を瞑っていても眠れないまま次の日の朝を迎えた。




