第百十話
上映が終わり、天井のライトが点いて明るくなった。
ヒカリさんが作った一回生組の作品のテーマは“遠距離恋愛カップルの再会”で初々しいラブストーリーの作品。
二回生組は“親友のお見舞い”でパルクールを使ったアクション性の高い作品。
三回生組は“盲導犬の引退”でハートウォーミングな感動物語の作品。
三作品を観た中で、私は一回生組の作品が良かったと思った。自分の演技は除いて、映像の世界に入りやすくて、シーンのテンポが良かった。最後は心がキュッと締め付けられる感じがした。もちろんナレーションも良かった。
二回生組の作品はカメラワークが飛び抜けて上手かった。ドローンを使った撮影も駆使して、とにかくパルクールで飛んだり跳ねたりする人の動きをカッコよく捉えていた。でも、尺の八割ぐらいはアクション映像で、ストーリー性があまり無く、映画としての深みや味わいが無かった。
三回生組の作品はドキュメンタリー風の映像で、視覚障がい者と盲導犬の出会いから別れまでの話だった。全体的に台詞が多く、シーン分割も多い。展開が早くて付いていけなかった。たぶん、一時間ぐらいの映画だと上手く収まりそうだけど、二十分だと収まりきっていない感じがした。
採点表には自分が思った素直な点数で採点した。コメントも書くスペースがあったけど、じっくりと書く時間が無さそうだし、コメントが上手く纏まらない気がして書くのを止めた。それに友達が席を立ったら、待たせるのも嫌だし。すぐに合わせられるように待っておこうと思った。
皆で教室から出て廊下を歩きながら、映画の感想を言い合っていた。
「やっぱり一回生組が一番じゃない? 二回生組はアクション多すぎでしょ、三回生組は“さよならポーチ”のパクリじゃない? 去年のアニメ映画」
ヒカリさんが指を回しながら言った。
「私もそう思った。最後の盲導犬と別れるシーンそのままじゃん。すぐに気付いたよ。オマージュなのかな? リスペクト的な」
アカリさんは意見が合ってテンションが高くなった。
その映画を知らなかった私は首を軽く傾げた。
去年は受験だったから映画なんて全然知らなかった。テレビも見ることが無かったから、全然情報が入ってこなかったからだ。
「たぶん、三回生組が勝つんだろうけどね。さあ、模擬店を見てまわろうか。あと、美術部と写真部も見てたいな」
ヒカリさんは藍嶺祭のパンフレットを眺めながら言った。
「美術部と写真部、良いね。アニメ研究会とかも見てみたいね。チョコバナナ食べたい」
アカリさんは楽しそうに声をさらに高くした。
ユメさんと私はそのやり取りを聞きながら、二人の後について行った。




