伝承者の策略<カラフルな花編>
私は初めて選ばれし者の命を奪ってしまった。私が奪ったわけではないが、もう少しうまくやれたのではないかと考えてしまった。
「史乃ー?物思いにふけているところ悪いけど、次の選ばれし者が見つかったよ!」
「黒板は変わらないね。人が死んだっていうのに。」
「えー?史乃落ち込んでいる?でも人間って身内でもない人間の死とかには悲しいっていう感情は持たない生き物なんだよ?彼は身内だった?」
「そうじゃないけど……」
「彼は選ばれし者。そして自ら知りたいことのために命を落とした。それだけ。」
「さすが黒板。割り切るのも早いね。」
「史乃もこれくらいになってもらわないと!毎回選ばれし者が死ぬ度落ち込んでいたらきりがないよ?」
「そうだけど……はあ。はいはい、わかったわ。」
「じゃあ早速!次の選ばれし者について話すよ!」
私も黒板のようになれたら楽なのだと思う。だけどやっぱり、どこかで完全に人間を捨てることはできないというかしたくないと思ってしまうのだ。
「さて、今回の選ばれし者は紅樹彩。高校2年生だよ!将来のことに迷える女の子!草壁蜜とは親友だよ!」
「将来ね。えっと、彼女に伝えてもらう本はポッピンフラワーか。」
私は表紙をめくると言葉を失った。
「どういうこと……」
『色とりどりの花を咲かせる花・ポッピンフラワー』
その一文だけが書かれているだけだった。そして伝えるための道具に、このポッピンフラワーの球根であろうものが入っているだけだった。
「これだけじゃ何もわからないじゃない。どうするの?」
これでは死なせないように対策を練ろうにも練ることはできない。情報がなさすぎる。
「ちょっと黒板!どうなっているの?!」
「うーん。ナビちゃんにもちょっとわからないなー。」
「はあ!?」
「わかることはただ1つ。その球根を育ててポッピンフラワーを咲かせること。それが伝承を知る方法だよ!」
「じゃあ私が育てればいいの?」
「それはダメだよ!というか意味ないから!選ばれし者が育てて初めて得られる伝承なんだから!大体その球根、選ばれし者が今すっごく欲しがっているものなんだから!」
「え?選ばれし者が欲しがっているってどういう事?」
「将来に迷っているっていったけど、少し前にポッピンフラワーに興味を持ったみたい。というか植物に興味を持ったみたいだよ!」
「それで欲しがっているか……待って。現世にポッピンフラワーが咲いているなら咲かせる必要ないんじゃない?咲いているのを掘り起こすとかしてみるといいのかも。」
「それは却下!言ってるように、その球根の花を咲かせないと得られないんだってば。伝承が。例え現世に咲いているポッピンフラワーを掘り起こしても何も伝承は得られないよ?」
「じゃあ、渡して育ててもらうしか方法はないわけね……」
「選ばれし者がどうなるかが気になる?」
「まあね。全部わかった上で渡すならいいんだけど、何もわからないまま渡すのはちょっと気が引けるというか……」
「史乃。選ばれし者はポッピンフラワーが何かを知りたがっている。前の選ばれし者だってそう。祟りが何かを知りたがって行動に移した。その結果命を落としてしまったけど、彼らは知るために行動しただけなんだよ。もし花を咲かせて、得られる伝承が史乃の望むものでないとしても、結果としては選ばれし者が知りたいことを知ることができる。WINWINなんだよ。」
黒板は正しいんだと思う。人間は知りたいと思って行動する。のめり込めばのめり込むほど、危険を伴うか伴わないかというのは、後回しになっている。それは前の本でよく知っている。もし今回の彼女も、ポッピンフラワーについて知ろうと行動しているのなら、結果がどうであれこれを渡すのが正解なのかもしれない。
「彼女に委ねるわ。それしか方法がないのでしょう?」
「そうだよ!史乃が決断するかしないかだけの話!」
「決断しなかったら?」
「うーん、説得するか史乃の魂を砕くかの二択になるかも!」
「……」
選ばれし者の心配ばかりしていたが、自分自身も結構危ない立場に居ることを忘れかけていた。私は伝承者としての役目を果たさなければあの世に行けないし、ここで魂を砕かれる危険だってあるのだ。私は冷や汗をそっと手で拭った。




