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おじさんが死んだけど私は泣かない。

作者: ヒロモト

私はおじさんのマンションにいた。

このマンションの一室でおじさんは一人寂しく心筋梗塞で死んだのだ。

お母さんが清掃会社の人とどれを捨ててどれを遺すかを話し合っている。

弟が死んであんなに泣いていたのに。今も悲しいだろうにすごいなと思う。

私はおじさんの事があまり好きではなかったので『えー。死んだのー?』ぐらいにしか思わなかった。

子供の頃の私はおじさんが好きだったらしいが覚えていない。

会うと必ず『背が大分伸びた』と言い。下手くその癖に私とゲームをやりたがり、お年玉もおこづかいも必ず3000円を渡すおじさん。

思い出が……ないなぁ。

年始と誰かの冠婚葬祭。一年に二回合うかどうかの人だったし、年始の挨拶に行くのも憂鬱だったし。

無口な人だったので会話をした記憶もほとんどない。


「部屋。汚いな」


おじさんの部屋は汚かった。

独身の40代の部屋なんかこんなもんかと思っていたが違和感がある。

そうだ。私の記憶の中のおじさんの部屋は綺麗だった。

私が遠慮無くズカスガと部屋の中をうろついていると黒い段ボール箱があり、中を覗くと新品同様ゲーム機とソフトが出てきた。……持って帰れないかな?

こっちは本棚か。難しそうな本と料理の本が並んでいる。

そうだ。おじさんは料理も下手だった。

年始の挨拶に行くと必ず微妙な味の料理を食べさせられたものだ。





「持ってなさい」


お母さんに渡されたのは郵便手帳とプリペイドカード。


「150万入ってるから」


「えー?」


おじさんが私のためにコツコツ貯めたお金だそうだ。

おじさんはプリペイドカードを買ってお母さんにコードを送っていたらしい。

時々ゲーム機に5000円振り込まれてたのはそのおかげだったんだ。

まだフィルムを削ってない6枚のプリペイドカード。これがおじさんが私のために買った最後のプリペイドカードなんだな。


「あんたの事ほんと可愛がってたからね。あいつ」


「そうなんだ」





今日は疲れたのでよく寝れそうだ。

布団に入り目を閉じた。

少しだけおじさんの事を思い出す。

あー。そうかぁ。おじさんは私とゲームするためだけにゲーム機を買ったんだなぁ。部屋が綺麗だったのも私が来るときだけ掃除してたのかな。

料理もきっと普段はしなかったんだ。

頑張って料理してくれたんだろうな。

そうか。あの人は私を好きだったのか。


そこでやっと私は『おじさんは死んだ』『もう二度と会えない』事を実感した。


泣くほどではないが悲しい。


ランドセルを買ってくれたのはおじさんだったなーとかレンタカーに初心者マークをつけて私を駅まで迎えに来てくれたのはもしかして私の為に免許を取ったのかなーとか思い出が湧いてくる。

だが現金なもので悲しさは眠気には勝てなかった。


その夜。半纏を着たおじさんとテレビを見る夢を見た。良い夢だったと思う。


朝起きて鏡を見たら目が赤い。口の中が少しだけしょっぱい。







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― 新着の感想 ―
[良い点] リアリティの感じられる物語でした。タイトルもマッチしていて良かったです♪ 本文を読み終えてから、小説情報でタグの「ハッピーエンド」を目にして目頭が熱くなりました。 ありがとうございまし…
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