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97 ナバスの正体

「これは?」

「これも水を出すマジックアイテムだよ。なかなかうまくいかなくてね、気が付いたらこんなに大きくなってたんだよ。」

「持ち歩くのは無理だけど水が出るんなら使い道はあるんじゃないのか?」

「いやぁ、とてもじゃないけど使い道は無いよ。見ててくれ。」


 コップを開いてるところにセットしてナバスがマジックアイテムに魔力を注ぎ込む。

 すると数滴水が落ちてきた。

 ナバスの方を見ると非常に集中しているみたいで、とてもじゃないが声を掛けられない。

 でもこれでわかった。

 数滴落ちてくるぐらいじゃ確かに実用段階とは言えない。

 これをもっと水が出るようにしていきたいんだろう。

 そのための試作品なんだろうな。


「ふぅ。どうだい?これじゃあまだ使い道は無いだろう?」

「確かにな。でもとりあえず水は出たんだから凄いことなんじゃないか?」

「それはそうなんだけどね。でも現状では私の魔力を全部注いでもこれくらいしか水は出ないからね。」


 よく見ないとわからないくらいの水しか出てない。

 このマジックアイテムを改良していって実用的な段階まで引き上げるにはどれくらいかかるんだろうか。


「試作品とはいえこれじゃちょっと情けなくてね。もう少し、せめてコップ一杯くらいは水が出せるようになりたいと思ってるんだよ。」

「なるほど。まだまだ改良してる最中って事か。」

「それに大きさにも問題があるしね。運べるサイズにしないと不便で仕方ない。問題だらけさ。」

「それでも試作品は出来たんだ。皆で研究すれば少しずつ良くなっていくんじゃないか?そういえば他の研究員はいないのか?」

「ここは私一人だけだよ。研究員も増やしたいんだけど兄に止められるんだよ。無駄遣いだからやめろってね。」

「兄?」

「あぁ、なんていえばいいのかな。国のお金だから無駄に使うのは良くないって。黙ってたけど私は一応王子なんだよ。」

「え、あ、は?研究者じゃ・・・。」

「研究者でもあるつもりだよ。王子と言っても第三王子だからそんなに気にしなくてもいいよ。」

「いや。いえ、気にします。王子とは知らずご無礼な言葉の数々お許しを。」

「やめてくれ。せっかくできた友人にそんな話し方をされたくはないからね。まわりに人がいるときならある程度は仕方ないんだけど、こうして二人の時はいつもと同じように話してくれた方が嬉しい。」

「そうなんですか?いや、そうなのか?」

「こんなところで暮らしてるとなかなか気軽に話しかけてくれる人なんていなくてね。」

「それは・・・そうだろうな。」

「だから気楽に話せる相手がいるっていうのはとても嬉しいことなんだ。」

「なるほど。わかったよ。そういうことなら今までと同じように話させてもらう。不敬罪だとかで斬らないでくれよ?」

「そんなことしないさ。あくまでも対等な友人なんだから。」


 ある程度立場のある人だとは思ってたけど、王子だとは思わなかったな。

 なんで王子があんな所にいたんだ?

 研究者もやってるから古代魔法文明のものがないかチェックしてたのかな。

 そこで偶然出会ったと。

 せめてお供の人間を連れて歩けよ、一般人と変わらないじゃないか。

 悪い奴じゃないのは分かったからいいけどさ。


「あー、そりゃ城の中に研究室もあるわけだ。」

「私としてはもっと大きくやりたいんだけどね。兄が無駄遣いには厳しくてさ。何度もこの研究の有用性を説明してるんだけど納得してくれないんだよ。」

「それは難しいところだよな。成功すれば多くの人に役に立つから、俺としては未来への投資としてやってもいいと思うけど。」

「そうだろう?いいこと言うじゃないか。とはいえ唯一の試作品があれじゃあ納得もしてくれないのもわかるんだけどね。」

「兄を説得するためにももう少し性能を上げた試作品を作りたいって事か。」

「そう。成果が出そうなことなら反対もしないと思うしね。今はとにかくしっかりと水が出たっていう事実が欲しいんだよ。」

「で、気が付いたら大きくなってたって事か。」

「そういうことだね。もちろん大きくすればいいわけじゃない、試行錯誤が大変だったんだよ。」


 そうだろうな。

 昔の文献を参考にして自分なりに作り上げたんだろうから大変な作業だったに違いない。

 俺だったら文献を読んでる時点で頭がこんがらがりそうだ。

 天才って奴なんだろうな。

 たった数滴の水と言ってしまうことも出来るけど、それすら作り出すことは難しかったんだろうし、何とか成功させてほしいものだ。


「そうだ。ハンターなら人の踏み込まないような場所に行くこともあるだろう?」

「まぁそういったところに討伐する対象がいたりすれば行くこともあると思うけど。」

「もしそういったところで遺跡があって、古代魔法文明の書物があればとってきてほしい。」

「そうは言われても俺には区別なんてつかないぞ?」

「鑑定に出したときに聞けば答えてくれるはずだよ。そうそう見つからないとは思うけどね。万が一手掛かりがあったらと思うとぜひとも欲しいんだ。」

「あんまり期待しないでおいてくれよ?ちなみにもし見つけたらどうすればいいんだ?」

「そうだね、城の誰かに持ってきたといえば私に連絡が来るようにしておくよ。パーティーの名前はなんて言うんだい?」

「俺のパーティーは「エスプレッソ」だ。一応俺がリーダーのジュン。」

「わかった。もしあったらでかまわないからね。ただ未発見の遺跡ってのは意外と多くあるみたいだからさ。」

「そうなのか?」

「私たちが暮らしている生活圏以外の森なんかも、古代魔法文明の頃は生活していた可能性が高いみたいなんだ。だから人が出歩かないような場所、特に少し危険な場所に行くと遺跡が発見されるのは今でもよくあることみたいだよ。もっともただの民家だったりすることも多いみたいだけどね。」


 そうなると俺のランクでは少し厳しいな。

 もう少し実力を付けてランクを上げてからの話になりそうだ。

 この間の遺跡みたいな場所なら楽なんだけどな。

 あの遺跡で手に入れた本も、ピピンさんに言って古代魔法文明の本があったか聞いてみるのも手かもしれない。

 でもそこまで昔の遺跡って感じもしなかったし可能性はあんまりないか。


「まだランクも高くないから、そんなに危険な場所には行けないと思うけど覚えておくよ。」

「あくまでもついでで構わないからね。」

「ああ。それじゃあそろそろ時間も結構経ったし帰ることにするよ。」

「そうか、残念だけど仕方ないね。またぜひとも来てくれ、その時にはもう少し改良したものを見せられるようにしておくよ。」

「楽しみにしてるよ。」


 こうして城を後にした。

 なんだか休日なのに疲れたぞ。

 宿に戻って休もう。

 結構距離あるんだよな、仕方ないけどさ。

 それにしてもナバスが王子だったとは驚きだ。

 もう少し偉そうにしていれば気付けたかもしれないけど、そんなそぶりは無かったもんな。

 偉そうな人ならそもそも近づかないけど。


 宿に着いたら丁度皆がご飯を食べてたから俺も食べることにした。


「だいぶ遅かったね、何してたの?」

「んー。ちょっと王子様と友人になってた。」

「ふふ。なにかの冗談かしら?」

「そうだったら良かったんだけどな。残念ながら本当のことだよ。さっきまで城にいたんだ。」

「え?本当のことなの?」

「あぁ。最初はマジックアイテムを探して歩いてたんだけど、そこに丁度王子様がいてなぜか話すことになったんだ。そしたら喫茶店までついてこられていつの間にか友人になってた。」

「よくわからないわね。」

「ね。なんでそんなことになってるんだろう。」

「俺が聞きたいよ。なんでも古代魔法文明に対して思い入れがあって、その技術を再現しようとしてるらしい。試作品を見せてもらったけど、まだまだ道は遠いみたいだ。でも少しなりとも再現できてるのは凄いと思うけどな。」

「へぇ。それは面白そうなことをしてる人と友人になれたわね。」

「王子様じゃなければ気楽でよかったんだけどな。まぁそこまで気を使う必要はないみたいだけど。」

「そうそう会えるわけじゃないから大丈夫じゃないかしら。」

「まぁな。ちなみに遺跡とかで古代魔法文明の書物とか見つけたら教えてほしいって言ってた。」

「もし見つけたらまた王都に来ないといけなくなっちゃったね。」

「でも褒美は期待できるんじゃないか?」

「そうね。王子様ならそんなところでケチったりしないと思うわ。」

「ジュンの休みは充実したものになってたみたいだね。」

「俺はもっとのんびりしたかったよ・・・。」


 ご飯を食べながら今日あったことを話すのだった。

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