95 謎の青年
昨日の闘技場は微妙な結果に終わった。
イベントもない時はそんなもんかもしれないが、もう少しレベルの高い試合が見れると思ってた。
今日も休みのつもりだ。
エリィは昨日の夜からお酒を飲んでるからな。
俺ももらっているけど。
今日は俺たち皆迷子にはならない程度には王都に慣れてきたから別行動で好きなことをしようってことになった。
当然喫茶店は探すとしても、その前に何かしたいと思ってる。
せっかくの王都だし、普段手に入らないようなものを見に行きたい。
そうするとやっぱりマジックアイテムの店でも覗きに行こうかな。
前回はギルドのおすすめのお店を見て微妙な結果になったから、今度は適当に入ってみてもいいかもしれない。
そう考えて適当に王都をブラブラすることにした。
わかってたことだけど王都ともなれば大小さまざまな店がある。
小さい個人でやってるような所もあれば、ギルドにおすすめされたような大きな店も。
考えてみれば大きい店は人もいっぱい来るからいいものはすぐに売り切れることになるだろう。
なら小さめの店であまり人が入ってないような所なら掘り出し物があるかもしれない。
小さめの店に目星をつけて入ってみることにした。
「いらっしゃい。」
ここは何の店だ?
アイテムがありそうだから入ってみたけど、武器も防具もなんでもおいてある。
品質はそこまでよくはなさそうだけど、こういったところに掘り出し物があるかもしれないしな。
「ここは何のお店ですか?」
「特に決まってないな。客が売りに来たものを買い取って他の客に売る店だ。だからそこらへんの高そうな店よりは安いと思うぞ。」
なるほど、中古屋みたいなもんか。
これはこれで需要があるだろうな。
特に低ランクのハンターだとできるだけお金を節約したい、こういった店に助けられることは多いだろう。
「ちなみにマジックアイテムはありませんかね?」
「マジックアイテムか。あるにはあるが使いやすいものは売れちまったな。今残ってるのは正直そこまでおすすめできないものが多い。」
「どんなものがあるんですか?」
「そうだな。この着火するアイテムは魔力さえあればだれでも使える。ただし消費する魔力が今出回っているものよりも多くて無駄が多い。」
「それなら出回っているほうを買いますよね。」
「そうだな。だからおすすめはできない。もちろん買ってくれれば売り上げになるから俺としては嬉しいんだが?」
正直な人だな。
こういった人は嫌いじゃない。
でもそのアイテムはいらないな。
その後も店主さんに説明してもらったが、欲しいと思うようなアイテムはなかった。
俺が買わないのもわかってたんだろう。
店から出るときも特に顔色一つ変えずに見送ってくれた。
今度また見に来てもいいかもしれないな。
同じようにして他の店も回っていったが特にめぼしいものは無かった。
そろそろ喫茶店でも探そうかと思ったとき、一軒の店が目に入った。
古びた店だがマジックアイテムを扱ってそうな雰囲気はある。
最後にのぞいていくか。
店主の人は男のお客さんに何か話しかけられてるみたいだな。
それならゆっくり見せてもらおう。
思った通りマジックアイテムが結構ある店だった。
品揃えがどうなのかは俺にはわからないが使えるものもありそうな気がする。
おすすめされた店よりもここのほうがいいんじゃないか?
わけのわからないものも多くあるが、使えそうなものもチラホラある。
こうなると店主さんに説明してほしいところだが、さっきからお客さんに話しかけられていて話す隙が無い。
チラチラそっちを見ていると客の方が俺に気付いたみたいだ。
「失礼。話しかけようとしていたところを邪魔してしまっていたかな?」
「あ、えっと、すみません。」
「気にしなくていいよ。もしよかったら私が質問に答えようか?」
なんだいきなり、この人は店員か?
店員だったら聞きたいところだけど、どう見ても店員には見えない。
「えっと、マジックアイテムに詳しいんですか?」
「専門は古代のものだけどね。普通のマジックアイテムにもそこそこ詳しいと思うよ。」
「じゃあこれは・・・。」
「これかい?これは魔石を入れておくと温かい状態を保ってくれるアイテムだよ。」
「ホッカイ○みたいなものかな?」
「ホッカイ○?」
「いえ、つまり寒いところに行くときにあると便利なアイテムってことですよね。」
「そうだね。そこまで熱は強くならないみたいだから、あくまでもオマケ程度に考えたほうがよさそうだけど。」
その後も色々なマジックアイテムのことを聞いたら結構的確に答えてくれた。
なんなんだろうなこの謎の青年は。
そういえば専門は古代のものって言ってたな。
古代のものって何だろう?
「そういえば最初に専門は古代のものって言ってましたよね?古代のものってなんですか?」
「おや、興味があるかい?古代のものっていうのは古代魔法文明の頃に開発されていたもののことさ。その時には今とは比べ物にならないくらいのマジックアイテムが作れたみたいなんだよ。
ダンジョンで出てくる一級品のマジックアイテムはその時のなごりとも言われてるんだ。もちろん諸説あるけどね。
私はその研究者なんだよ。」
「研究者だったんですか。道理でマジックアイテムに詳しいわけで。」
「趣味も入ってるんだけどね。でも当時は凄いアイテムが当たり前のようにあったと思われるんだ。魔法のバッグなんて珍しくもなんともなかったんじゃないかな。」
「そうだったら便利ですね。買い物とかも楽そうですし。」
「まったくだ。いろいろな人がいろいろな恩恵を受けることができる、そんな時代だったんじゃないかな。
今では魔法のバッグの作り方さえ誰も知らない。それどころか多くの魔法そのものも失われているんだ。こんなに悲しいことは無いよ。」
古代魔法文明にロマンを感じているんだろうな。
その言葉の端々から熱意や情熱を感じる。
「ところでハンターなのかい?」
「ええ、一応ハンターをしています。」
「そうか!それはいい。ハンターがアイテムを持ち帰ることで私たちの研究も進むからね。役に立たなそうなアイテムも大発見のきっかけになるかもしれない。そう考えるととても素晴らしいことだと思うよ。」
「そういったアイテムは値段もつきませんし持ち帰る人も多くないと思いますけど・・・。」
「それはもったいない事だね。見る人が見れば値段が付くものもあると思うのに。今使えるアイテムの方が価値があるのは仕方のないことなのかもしれないけどさ。」
「そうですね。どうしても価値のあるものや使えそうなものを中心に集めますからね。それに古代のものだとわかる人もそんなにいないと思いますし。」
仮に俺がそういったものを知ってたらちゃんと持って帰ってたかもしれない。
この間の遺跡の時もそうだったけど、昔のものってだけで欲しがる人も意外といることが分かったから、意外といい稼ぎになるし。
でもいくら昔のものでもガラクタみたいなものは売れないかな?
あれは皿とか実用性のあるものだったから売れたのかもしれない。
そう考えると持って帰るのはやっぱり微妙かもしれないな。
「確かに見分ける方法は難しいかもしれないね。研究も大体は昔の文献から読み解いていくことが多いから。でも昔の文献もなかなか残っていないんだよ。」
「書物は時と共に風化してしまいますからね。」
「そうだね。でも大切な知識だ。もう少し残そうとする努力をしてほしかったなとは思うけどね。
ちなみにだね、昔の武器には凄い特徴もあったらしいんだ。それはね。」
やばい。
スイッチが入ってきてるのかもしれない。
こうなると止まらなくなるタイプの人なのかもしれないし、何とか脱出を試みなければ。




