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94 平日の闘技場

「今日は休みにしよう。」

「昨日のこと気にしてるのかしら?」

「いや、せっかく王都に来たんだから、王都でしかできないことってあるんじゃないかって思ってさ。」

「王都でしかできないこと?何だろう。」

「何か無いのか?この国の中心なんだから他にはないものがあってもいいと思うんだけど。」

「闘技場とか他の場所には少ないかもしれないわね。大会とかも行われてるみたいだし。」

「闘技場か、見に行くのも参考になるかもしれないな。」


 考えてみれば他の人の戦い方をじっくり見たことってそんなにないんだよな。

 そういった意味では闘技場もいいかもしれない。


「せっかくの休みなのに喫茶店とか探しに行かなくていいの?」

「それはそこまで時間を取らないからな。空いた時間で気が向いたら探しに行ってみるよ。」

「じゃあ闘技場に行ってみる?」

「ああ。違った戦い方を見て気付く事もあるだろうし、行ってみよう。」


 街の人に闘技場の場所を聞きながら向かう。

 近づくにつれて屋台が増えてきた。

 一種の祭りみたいなもんなんだろうな。

 賭け事も行われているようで、大きな売り場もある。


「参加者も募集してるみたいだね。個人戦とチーム戦があるみたい。」

「俺たちにはまだ早いだろうな。余計な怪我もしたくないし、今日は見学だけにしておこう。」

「私は出てもどうしようもできないわ。参加はしたくないわね。」

「姉さんはタメが必要だからね。魔法が撃てたら撃てたで相手がどうなるかわからないし、私たちは闘技場向きじゃないかもね。」

「ジュンが個人戦で腕を磨くって言うなら応援するわよ?」

「いや、今はやめておくよ。」


 闘技場のイメージもあるんだけど、大怪我ですめば運がいいんじゃないかと思う。

 普通に命がかかってると思うと今の腕前で出るのは命知らずもいいところだろう。


「そのうち自分の腕に自信が付いたら考えてみるさ。」

「じゃああっちから入れば一般の見学者みたいね。」

「入るか。その前に何か屋台で買っていくか?」

「買う!」

「シャー。」


 うちの食いしん坊たちが屋台の物色を始めた。

 急ぐことでもないし別に構わない。

 闘技場の周りには色々な屋台が並んでいて見ていても面白い。

 普通の食べ物から、射的まがいのものまである。

 大道芸人のパフォーマンスなんかもやっていて賑わっている。

 キリとシロが大量に食べ物を抱えて戻ってきた。


「お待たせ―。」

「随分買い込んだな。」

「ゆっくり見れるように多めに買っておいたんだよ。途中で出るとまた入るときにお金がかかっちゃうからね。」

「なるほど、しっかりしてるな。」


 入り口で入場料を払って闘技場に入る。

 意外と値段が高くないことに驚いた。

 後で知ったことだが、大会などになると金額が変わるらしい。

 今は特に大会をしていないから安めで入れたって事みたいだ。


「広いわね。」

「それでもお客さんはいっぱいいるね。」

「普通の人から偉そうな人までいるわね。」

「偉そうな人には近づかないようにしよう。面倒なことが起きても嫌だからな。」

「そうだね。」

「さて、試合はどんなもんかな?」

「今は剣と槍で戦ってるみたいね。」


 剣の人は俺と似たような装備をしてるな。

 それで槍を相手にするのか、中々厳しい戦いになりそうだ。

 槍の人は長いリーチを生かして堅実に戦っている。

 対して剣の人は何か狙ってるな。

 しばらく打ち合っていたが、中々崩せないとみるや槍の人が大振りの一撃で決めようとした。

 多分これを待ってたんだろう。

 盾を使わずに最小限の動きでかわしながら相手に肉薄、喉元に剣を突き付けて剣の人の勝利となった。


「最後、速かったねー。」

「ずっと狙ってたんだろうな。元々リーチの差があったから何とか隙を作り出して一撃で決める。それがうまくいった感じだ。」

「ジュンならどう戦ったかしら?」

「俺なら単純に耐えるだけだな。パーティーでの戦闘を考えるから無理に攻めようとは思わない。キリとエリィに攻撃は任せて俺はひたすら敵の攻撃を受けることに集中するよ。もちろん狙いが俺じゃなくなったら攻撃するけどさ。」


 盗賊の親玉との戦いと一緒だ。

 リスクを負う必要があるならともかく、必要がないなら俺は耐えることに集中する。

 攻撃力は俺よりキリとエリィの方があるんだから。


「じゃあ一対一の状況になったら?」

「うーん。攻撃を受け流すタイミングを待つかな。受け流したと同時に詰めてこっちの間合いで戦うようにする。相手の強さにもよるけど、さっきの人みたいにかわしながら詰めるのは俺には難しいかもしれない。」


 一歩間違えたらそのまま食らって終わりだからな。

 それよりは盾をうまく使って立ち回りたい。

 たいして強くないならどうとでもできるだろうけど、一定の腕前以上持っていれば俺じゃ厳しい戦いになるだろうな。


「次の戦いが始まるわよ。」


 次は二人とも剣か。

 お互いに堅実に戦うタイプだったのか、いまいち参考にならないままタイムアップとなった。

 客も不満そうにしている。

 気持ちはわかるけど本人たちは必死だったんだと思うし、仕方のないことだと思う。

 その後も色々な戦いが行われていったが、大会じゃないからか選手の質も微妙だった。

 ただ、戦い方は見れたから、できることは取り入れて行ければいいとは思う。

 次からはしばらくチーム戦をやるらしい。

 俺たちとしてはこっちの方が参考になるかもしれないな。


「チーム戦ね。どっちも魔法使いはいないみたいね。」

「そうだね。元々魔法使いって数が多いわけじゃないし、仕方ないのかもしれないね。」


 どっちも後衛は弓だ。

 前線をサポートするように撃っている。

 前面からぶつかり合っていく試合だな。

 前衛がほぼ互角のようで、一進一退の攻防が繰り広げられていく。

 均衡が崩れたのは後衛の矢がうまく腕に刺さった隙をついて、一人の剣士を脱落させた瞬間だった。

 一度崩れてしまえば後は早いものですぐに試合は終わってしまった。


「今回の試合は後衛の腕が勝敗を分けたわね。」

「両方とも前衛の攻撃力が足りてなかったね。もう少し自分たちで押していかないとパーティーとして辛そう。」

「まだ出来て少ししか経ってないのかもしれないな。ハンターだったらFかGランクくらいじゃないか?」

「それくらいかもしれないね。大会がやってない時はこれくらいの人たちが出ることが多いのかな。」

「そうかもしれないわね。王都は低ランクには厳しいから闘技場で少しでも稼いでるのかもしれないわ。」


 なるほどね。そういう面もあるかもしれないのか。

 低ランクにとってどうやっても食べていけない状態になるとハンターが育たない。

 だから救済措置として闘技場で稼げるようにすることと、戦闘経験を積むことができるようにしてるわけだ。

 ついでに戦闘なんて見慣れてない人たちに見せて娯楽としても提供していると。

 よくできてると言えばよくできてる。


「そうなると俺たちが見るのは大会の方がよさそうだよな。」

「うん。大会なら高ランクの人たちも出ると思うし。騎士なんかも出るかもしれないしね。」

「今日はいつもの闘技場がどんなものか見に来ただけね。」

「ちょっともったいないことをしたな、得ることがなかったわけじゃないからいいんだけどさ。」

「仕方ないわ。次は見に来れたら大会を見に来ればいいわよ。」


 そうして闘技場を後にした。

 屋台で適当に食べながら防具屋を見たり、エリィがお酒を買ったりして宿に戻った。

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