92 盗賊団の討伐2
夜、奇襲の準備が終わって各自が指定の位置に向かっている。
一つは見張りを倒す組、もう一つは万が一仕留めきれずに声を出されたときに素早く突入をする組だ。
俺たちは当然突入する組にいる。
うまく見張りを倒すことができれば合流して突撃することになっている。
そこは流れ次第だ。
「偵察の話じゃ見張りはいても四人くらいだろうって話だったけど、うまく声を出される前に倒せるかね。」
「DランクとEランクだから大丈夫だと思うけど、必ずとは言えないからね。」
「もし失敗したらどれだけ早く盗賊のところまでたどり着いて数を減らせるかが大事になるわ。寝起きで頭が完全には動いてない状態のうちに終わらせたいわね。」
「先頭はリーダーが行ってくれるみたいだから私たちはそれについていけばいいよ。」
全員位置に着いたらしい。
俺たちはすぐに飛び出せるように構えておく。
見張りを倒す組の人たちは合図とともに一斉に矢と風魔法を撃つ。
さすがと言ったところか、生きている人は一人もいないようだ。
洞窟の前で全員集合して小声で最終確認をする。
「いいか、俺たちが先陣を切る。お前たちは後に続いて寝ている奴、戦闘態勢の整ってない奴を斬れ。
どれだけ多くの敵を初手で倒せるかが大事だ。その後の戦闘を楽にしてくれる。
いいな、スピードを持って斬っていけよ。
いくぞ。」
明かりを付けずに洞窟の中に入っていく。
しばらくすると話し声が聞こえ始めた。
見張りが交代制だろうから眠くない奴もいたのかもしれない。
このままいくと気付かれるな。
リーダーも軽く舌打ちしてる。
だがこっちを向いて頷いた、行くつもりなんだろう。
俺たちも頷いて返事とする。
突撃!
リーダーは話をしている奴に向かって行く。
なら俺たちはまだ寝てるやつらを斬っていくことにする。
「なっ!敵襲ー!グッ!」
「チッ!全員早く起きろ!武器を持て!!」
寝ている奴らもちゃんと自分の武器をそばに置いてるから戦闘態勢に入るまでが意外と早い。
とはいえまだ起きたばかりで体も満足に動かせる状態じゃないだろう。
今のうちに数を減らせるだけ減らす。
「敵は大体がまだ寝起きの状態だ、どんどん倒していけ!油断はするなよ!」
「「「「「おう!!!」」」」」
余計なことは考えずに目の前の敵を斬る。
盗賊側も黙ってやられるわけにはいかないと抵抗してくるが、さすがに実力の違いもあってハンター側が押している。
相手にもハンター崩れの盗賊がいるっぽいな。
装備もそこそこ整ってる奴らもいる。
おそらく低ランクで金に困って盗賊になったとかそんなところだろう。
奇襲で二十人は殺せたようだ。
数の不利はだいぶ少なくなったな。
「一応聞いておいてやる。降参すれば命までは取らないが降参する気はないか?」
「はん!お前も偉くなったもんだな!」
「お前は・・・そうかここの盗賊団をまとめていたのはお前か!」
でかいバトルアックスを手にした奴がこっちに歩いてくる。
どうやら知り合いらしい。
元ハンターとかそんな感じだろうか。
「俺様はあんなかたっ苦しい生活には飽き飽きしていたんだよ!盗賊になってみてわかったぜ、これが俺様の求めていた自由だ!男、女、金、全てが手に入る!本当は気付かれる前に逃げる予定だったんだが気付かれちまったんじゃあしょうがねぇな。お前らを殺してから逃げるとしようか!」
「全員気を付けろ!あいつは元Eランクハンター、戦闘だけならDランク間違いなしと言われてた奴だ!性格に問題があったからまだDランクにはなれていなかったみたいだがな。」
「ふん!俺様はDランクでも上位の力はあったとされてるんだぜ?お前らなんかあいてになるかよ!」
そんな奴が率いてたのか。
道理で被害も大きくなるわけだ。
っていうか力も恐ろしいが男も女もイケるってところも恐ろしいな。
全員顔が引きつってるじゃないか。
正直俺も戦いたくない。
別に人の性癖にどうこう言いたくはないが、積極的に関わり合いにはなりたくはない。
「丁度いい。お前らも俺様に従え!」
「何を馬鹿な!」
「殺されるよりはいいだろう?それとも俺様とやろうってのか?」
「所詮寄せ集めの盗賊団!お前こそ勝てるわけがないだろうが!」
「仕方ねぇな。野郎ども!こいつらを皆殺しにしてさっさと移動するぞ!」
「「「「「おお!!!」」」」」
チッ、士気を高められたか。
あのまま押し切ってしまえば良かったな。
盗賊団も攻撃に勢いが出てきた。
とはいえ所詮は素人の寄せ集め、一人また一人と削っていく。
あの親玉はリーダーが受け持ってるみたいだ。
邪魔が入らないように他の盗賊団を倒していく。
盾で受けて斬り飛ばし、剣を避けて切り捨てる。
キリもハンマーで吹き飛ばしてるな。
吹き飛ばされているほうは悲惨なことになってる。
他のハンター達も怪我人は出てるみたいだが、そこまで被害は大きくなさそうだ。
「ぐおっ!!」
「ハーッハッハッハ!その程度か?俺様に挑むには力が足りなかったな。」
リーダーが敵の親玉に吹き飛ばされた。
特に怪我はないみたいだが実力の差はあるようで悔しげな表情をしている。
大きなバトルアックスを振り回せるくらいだ、この中だとキリくらいしかパワーでかみ合う人はいないんじゃないか?
そう考えるとまわりの奴らはみんなに任せて俺とキリで親玉を倒すか?
俺たちにはエリィの魔法もあるしな、そろそろ準備も完了するだろう。
「キリ、俺たちであの親玉をおさえるか?」
「そうだね、他の人たちじゃちょっと力に押されそうだし、私たちが行ったほうがいいかもね。」
「よし。しばらく耐えて見せる。エリィはとどめを頼む。」
「わかったわ。」
素早くリーダーのもとに駆け寄る。
「俺たちでおさえます。まわりをお願いします。」
「だがあいつは強いぞ。」
「パーティーで戦うので大丈夫です。」
「うん。任せて。」
「・・・わかった。無理はするなよ!」
敵の親玉と向き合う。
この状態でも余裕があるようでニヤニヤとこっちを眺めている。
「俺様とやろうってのか?」
「そうなるな。一対一じゃないがそこは覚悟してもらうぞ。」
「何人だってかまわねぇよ。だがお前らのリーダーが俺に手も足も出なかったのに挑もうとするところは嫌いじゃねぇ。ついてこいよ。」
誰がこんな奴についていくか!
色々な意味で自分の身が危ないわ!
「断る!行くぞ!」
剣を振るうがバトルアックスにあっさりと防がれる。
さすがはDランク上位の力を持つと言われてるだけはある。
だがこっちは一人じゃない。
キリが横からハンマーを叩き付ける。
「うおっ!なかなかやるじゃねぇか。だが当たらなければ意味はねぇな!」
バトルアックスが振るわれる。
狙いは俺か。
まともに受けたらリーダーの二の舞だ、受け流すような感じで攻撃をやり過ごす。
でかい分一撃の後の隙はある。
足に狙いを定め素早く突きを放つ。
が、バックステップで避けられた。
でかい上になかなか速い。
でもなんとか打ち合えるな。
キリは特に問題なさそうだ、パワーでも若干押してる気がするし。
問題は体格だな。
でかい分リーチがあるから厄介だ。
俺とキリはその分踏み込まないといけないからな。
「フン!なかなかやるようだが俺様に挑むにはまだ早かったんじゃないのか!?」
「言ってろ!最後に勝つのは俺たちだからな!」
「その割にはまだ一撃も入れられて無いようだがな!」
くっ!攻撃が重い!
奴の意識がキリにいった瞬間にエリィを見る。
頷いてる、準備はできたらしい。
「キリ!!」
「わかった!!」
俺とキリが一気に距離を取る。
その瞬間、膨大な数の魔法が奴を襲う。
「なんだ?俺様にビビったか。あ?あああアアァァァアァァァ!!!!!!」
魔法が終わったとき、そこには何も残っていなかった。




