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9 敬語は使わされるものじゃなく自然と出てくるもの

 街道。本来なら商人や旅人も多く行きかっているんだろう。

 今はコボルト発生の影響で、出発を見合わせている人たちが多いみたいだ。

 もっとも高ランクのハンターにとっては何の影響もないだろうけど。

 ついでに片づけてくれればいいのにとも思うけど、そんなことされたら俺のような低ランクが困るのか。ままならないものだ。


「なるべく少数でいるのを狙って倒していく感じでいい?」

「そうだね、二人だから囲まれる危険は低くしたいからそうしよう。」


 方針を簡単にきめる。

 今回は街から近い場所だから移動が楽でいい。


「そういや、もっとパーティーメンバー増やしたほうがいいと思う?」

「うーん、少ないとは思うけど変な人を入れてもやりにくくなるだけだからね。いい人がいれば入れてもいいと思うけどさ。」

「確かに。ぎくしゃくするのも嫌だからな。焦っても仕方ないか。」

「そうそう。ほかのパーティーと仲良くなって、共同で受注する方法もあるし、無理やり増やす必要はないよ。」


 何となく四人から六人くらいのイメージがあったけど気にする必要はなさそうだ。

 人との関係はめぐり逢い、いい出会いに期待しよう。


 コボルトがいた。パッと見た感じゴブリンのほうが強そうだ。

 いやいや油断したらやられる、慎重に。


「ここはもう戦ってるみたいだからほかのところに行こう。横取りはマナー違反だからね。」


 やっぱりそうなんだ、当たり前と言えば当たり前だけど。

 街道をもう少し歩いたところにコボルト4匹がまとまっていたので戦うことにした。


「一人二匹か、最初なら丁度いい。」

「コボルトの動きに慣れるように戦ってみて、それじゃあやってみよう。」


 戦闘態勢をとる。

 コボルトもこっちを敵と認識したみたいだ。

 それにしても可愛くない、コボルトって言ったら多少は可愛げがありそうなイメージだったんだが。

 おぉ、確かにゴブリンより早い。これは厄介かもしれない。

 剣をうまく当てるにはいい練習相手になりそうだ。

 コボルトが近くまで来た、焦って剣を振らない。空ぶったら隙になる。

 まずは盾で牽制する。突っ込んできたとこを切り飛ばす腕は俺にはまだない。大事なのはこっちがダメージを食らわないことだ。

 二対一だからチクチクとダメージを重ねていけばいい。隙を見せたら一撃叩き込む。

 それ以外は盾でいなすことと回避に重点だ。

 いいかんじだ。一匹はもう少しってとこだろう。一対一なら問題なく倒せるはずだ。

 と思った瞬間コボルトが逃げ出した。

 逃げるのか!追いかけるが剣と盾を持ったままって走りづらい。

 結局キリが仕留めてくれた。


「すまない。」

「ううん。慎重でよかったと思うけど、もう少し攻撃のチャンスを逃さないでいけたらいいと思う。少しずつね。」


 怖がりすぎていたかもしれない。いや、事実怖いんだけど。

 マンガとかで敵の中に突っ込んでバシバシと切り伏せるシーンってありえないと思う。ほかのところからの攻撃が怖くないんだろうか。俺はめちゃくちゃ怖い。

 鎧があれば違うのかな、俺は今ただの服だもんな。

 もう少し勇気を出してみるか。出るかな。

 見た目はゴブリンより怖くない、いけるだろう。


「それじゃ周辺のコボルトも少しずつ倒していこ。」

「あぁ。次は逃げられないように気を付ける。」


 大きい群れには一切手を出さないで、少数撃破を徹底して行った。

 もう俺たちだけで五十匹は倒しただろう、ほかのパーティーも順調ならそろそろコボルトもいなくなりそうだが。

 一匹のコボルトがこっちに来た。俺に狙いを定めたらしい。

 ただ、そのコボルトはほかのコボルトと一つ違っていた。武器を持っていたのだ。


「私がやる?」

「いや、武器を持った相手とは初めてだ。やらせてほしい。」


 今までは素手だったから多少の余裕があった、今回は武器持ち。

 ろくに手入れがされていないショートソードだ。

 おそらく拾ったか、ハンターから奪ったんだろう。

 ここで1戦しておくのはいい経験になるはずだ、キリにはいざというときの回復を頼む。


 走りながら切り付けてくる。

 盾で受け止める、小さなコボルトでもこんなに体に響くのか。これがオークとかなら真っ二つにされそうだ。

 こちらも負けじと剣をふるう。が、かわされてしまった。

 戦い慣れた個体なのかもしれない。いや、おれが踏み込めてないだけか?

 相手が剣を持っているというのはとても怖いものだ、すこし気おされていたのかもしれない。

 深呼吸。

 よし、こい。

 コボルトの振るう剣を俺の剣で受ける。隙だらけだ、腹を思いっきり蹴り上げてやる。

 まだ動けるようだが明らかに動きが鈍い。

 相手の斬撃をかわしてから剣を叩き込んで終わった。


「どうだった?」

「うん、よかったよ。途中から慣れてきたみたいで安心して見ていられたもん。」

「そりゃよかった。相手に武器があると怖いもんだなって、当たり前のことだけど勉強になったよ。」


 剣は回収、鍛冶屋のおやっさんに屑鉄として売れないかな。

 その後、少し残ってた残党を倒して、薬草を取ってスタッカルドに戻ろうとした。

 その時。


「スマン!手を貸してくれ!」


 帰り道、別のところで戦っていたパーティーが多めのコボルトと戦っていた。どうやらコボルト同士が合流したようだ。


「どうする?」

「私は大丈夫だよ。」

「それじゃあできる範囲で手を貸そうか。」


 パーティーが四人に対しコボルトが十五匹くらい。幸いけが人もいないし、俺たちも混ざればなんとかなるだろう。


「手を貸します!」

「助かる!」


 武器持ちはいなかった。

 さっきの戦闘で少しコツがつかめたのか蹴りも交えてコボルトを三体倒すことができた。キリはすぐに五体倒してたが。

 少しケガをしたのでキリに回復をお願いする。


「すまない助かった。俺たちはGランクパーティー、青の牙だ。」

「いや、無事でよかった。俺たちもGランクのパーティー、エスプレッソだ。」

「戦いの音につられたのか数が増えてね、参戦してくれなかったら大けがをしていたかもしれなかったよ。」


 とはいえ多少の怪我があったらしいのでキリが治していた。


「ここらへんは今の奴らが最後かな。一応俺たちは少し見回ってから戻ることにするよ。」

「嬢ちゃん、回復してくれてありがとうな!」


 青の牙の人たちと別れてスタッカルドに入る。

 ギルドで換金してからキリと別れる。

 今日はこれから行くところがある。

 回復薬をかったお店、「蛇と薬」に行くためだ。

 俺がいつも薬草を取ってることを知っていて、買い取ってくれることになった。いつもというわけにはいかないようだが割増しで買い取ってもらえるのはうれしい。


「マーリンさん持ってきましたよ。」

「あらーん、よくきたわねー。見せて見せて。」


 こんな言葉遣いだが冒険者以上のマッチョのおっさんだ。本名のホリカーマという名前は本人の前では禁句となっている。あくまでもマーリンさんだ。

 この人はすごい人だと思う、俺も自然と敬語になるくらいには。


「今日はコボルトの依頼を受けてのついでだったのでそこまで数はないんですがいかがでしょう。」

「街道に出てるっていう話もあったわね。そう、それをやってたなんて偉いじゃない。ちょっとおまけして買い取っちゃうわよん。」

「あ、ありがとうございます。」

「うふふ、頑張ってる子にはご褒美がないとね。お茶でも入れましょうか、ゆっくりしていってもいいのよ。」

「い、いえ、これからまだ行くところがありますので。お茶はまたの機会にお願いしますね。」

「そう、残念ね。わかったわ、また今度ゆっくりと語り合いましょう。」

「あはははは、そうですね、オネガイシマス。」


 疲れた。

 本人はとてもいい人なんだけど、何とも言えない迫力がある。ドラゴンとも殴り合えるんじゃないだろうか。ドラゴン見たことないけど。


 最近お金のたまりがいい、もうしばらくしたら安めの鎧くらいなら買えるようになるかもしれない。やっぱり依頼を受けるのは大切なんだな。

 でもフリーの日も少しくらいは欲しい、今は頑張るときかもしれないけど体を壊したら元も子もない、あと剣の練習もしたい。時間がいくらあっても足りないな。

 あぁ、もどかしい。

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