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85 王都へ行こう

「うーん。なんだかパッとした依頼が無いな。」

「仕方ないよ。そうそう変わった依頼なんて無いし。」

「そうね。でも気持ちは分からなくもないわ。最近は稼ぎやすいオーク狩りがメインになってたから。」


 そう。惹かれる依頼がない時はとりあえず実入りのいいオーク狩りをしていた。

 魔法のバッグを手に入れてから、さらに実入りがよくなったからオークでも別に構わないんだけど、いい加減別のことがしたい。

 俺たちの戦闘経験を積むためにも。

 とはいえEランクは人が多い、いい依頼が貼られるとすぐに持っていかれてしまう。

 どうしたもんか。


「ここはまた別の街に行ってみるか?」

「ニューシルンの時みたいに?」

「ああ。これだけ変わり映えがしないのなら安定してる証拠だ。なら今のうちに別の場所を見てみるのも悪くないんじゃないか?」

「どこか行く当てはあるのかしら?」

「王都はどうだろう。前は金が全然なかったが、今は多少余裕がある。一度行ってみるのは悪くないんじゃないか?」


 ランクもとりあえずEに上がったことだし、王都に行って何もできないって事にはならないと思うんだ。

 あとは王都ってどんなところなのか気になるってのもある。

 栄えてるんだろうし、何か必要なものが見つかるかもしれない。

 マジックアイテムとかあれば買っておきたいし。

 でも高そうか、あんまり無駄遣いをするのも嫌だな。


「王都ね。確かに今なら行ってもいいかもしれないわね。」

「王都までなら馬車も走ってるだろうし、半分観光気分で行ってきてもいいんじゃないか。」

「そうだね。私は構わないよ。」

「私もよ。」

「それじゃあ決まりだな。馬車を調べて王都に向かおう。」


 さすがは王都行き、毎日出てる。

 とりあえず急ぐことでもないので明日の朝一番に出ることにした。

 持つものは変わらない。いつもの携帯食料だ。

 到着予定は四日後らしい。ニューシルンより少し遠いくらいか。


 翌日。

 予想よりも多くの人が王都に向かうみたいだ、結構な人が馬車のところに待機している。

 馬車も四台いた。

 護衛もそこそこの人数だ。

 これに向かってくる盗賊はそうそういないと思う。

 今回はゆったりとした旅になりそうだ。


「久しぶりだね、馬車に乗るの。」

「俺たちは馬車の通らないところでばっかり依頼を受けてるからな。」

「意図してるわけじゃないでしょ。元々馬車の通る道は少ないから仕方ないわよ。」

「そうだけどこの速さを感じるとやっぱり便利だなって思うよ。」

「そうね。どこに行くにもこの速さを出せれば依頼ももっと楽になるのにね。」

「そうするにはパーティーで馬車を持つしかないな。」

「どれだけ維持費がかかるのかしらね。」

「置き場所もないし、馬の世話もできないしね。」


 そもそも馬車を持つパーティーってどれくらいいるんだ?

 大所帯のパーティーなら管理もできるのかもしれないけど、聞いたことないな。

 Aランクとかなら持ってても驚かないけどさ。


「馬車を持つ前にやることは山積みだろうし、馬車は俺たちには無理だと思うけどな。」

「それはわかってるんだけどね。あったら便利かなって思っただけ。」

「何か馬車代わりになるものでもあればいいけど、そんなの聞いたこともないから難しいわね。」

「馬車代わりにか。ワイバーンでも捕まえられれば空も飛べるけどな。」

「それは難題ね。まだ馬車の方が現実味があるわ。」


 それはそうか。

 あんなもんを捕まえて言うことを聞かせられるようにするにはどうすればいいのか見当もつかない。

 地道に歩きながらやっていくのが一番なのかな。


「あ、コボルトが護衛の人たちにやられてる。」

「ゴブリンじゃなくてコボルトが出たか。コボルトもそこそこ多いよな。」

「弱い魔物ほど数が多くなるみたいよ。強い魔物は数が少ないみたい。」

「ってことはドラゴンなんかは少ないんだろうな。」

「もしもドラゴンが多かったら人類は滅んでるかもしれないわね。」

「そんなにか。Aランクでもきついのか?」

「ドラゴンの強さにもよると思うわ。でも基本は追い払うのが限界の場合が多いわね。仮に古龍だったらどうしょうもないわね。話し合いで何とかする以外手は無いわ。」

「Sランクでも?」

「無理ね。」


 古龍ってのはそこまでなんだな。

 どうやらこの世界のドラゴンは俺のイメージよりも遥かに強いみたいだ。

 知性がありそうなのが唯一の救いか。


「万が一にも会いたくはないな。」

「誰しも同じ思いだと思うわ。」


 休憩を入れながら馬車は進んでいく。

 どうやら決まった野営地があるようで御者の動きも手慣れたものだ。

 そして四日目、王都ヘルムガットに到着した。


「あー、体が痛い。特に尻が。」

「仕方ないわよ。ずっと座りっぱなしだったんだから。」

「うん。私も痛いけど何とか大丈夫。」

「で、ここが王都ヘルムガットか。さすが王都というだけあってでかいな。」

「そうだね。スタッカルドの何倍あるんだろう。」

「でかすぎてよくわからないけどとりあえず入ろう。宿を取らないことには安心できない。」

「そうね。いい宿に当たればいいけど。」


 とりあえず王都に入るための順番待ちの列に並ぶ。

 列も多いけど、慣れているのかすぐに人が減っていく。

 特に何のトラブルもなく王都に入れた。

 一応その際に衛兵におすすめの宿を聞いておいた。

 そこが空いていれば一番よさそうだ。


「うわぁ、凄い人だね。」

「こんなに大勢の人はスタッカルドでは見なかったわね。」


 キリとエリィは王都の人の多さに驚いているようだ。

 邪魔になるといけないので宿に向かうように促す。


「これからしばらくはここで活動をするんだから驚いてばかりいられないよ。それよりも宿を取りに行こう。」

「う、うん。そうだね。」

「場所はこのまままっすぐで良かったかしら。」


 宿は何とか取れた。

 料金は若干高めだけど、王都で評判のいい宿ならこれくらいしても文句は無い。


「何とか宿は取れたね。」

「これで自由に動けるな。迷子にならないように気を付けないといけないが。」

「これだけ広いから何も考えないで歩いてると迷子になりそうね。」

「慣れるまではかたまって移動すればいいだろう。そうすれば誰かしら道を覚えてるだろうし。」

「あんまり自信は無いけど。」

「というかエリィは一度来たことがあるんじゃないのか?」

「無いわよ?」

「なんか前にだいぶ詳しいこと言ってたから来たことあるんだと思ってたんだけど。」

「いろいろ聞いたことはあっただけよ。低ランクハンターには厳しいって聞いて来るのはやめたわ。」

「なるほどな。」


 情報収集だけした感じか。

 俺はてっきり王都で活動してたこともあったのかと思ってた。

 着いてまだ時間に余裕がある、何かしたいところだな。

 一応ギルドに顔を出しておくか?

 これからしばらくは世話になる可能性も高いわけだし。


「これからギルドへ向かおうと思うんだけどどうだ?」

「いいんじゃない?どんな依頼があるのか見てみたいし。」

「あとは何か情報があるかもしれないわね。」

「それじゃあとりあえずギルドに行こう。」


 宿の受付の人にギルドの場所を聞いて向かった。

 ギルドもスタッカルドのものに比べてだいぶ大きい。

 ハンターの人数もそれだけ多いんだろう。

 中に入ると視線が集まる。

 よそ者だから見られるかと思ったが、そんなこともなくすぐに視線は離れて行った。

 王都だし人の移り変わりも激しいんだろう。

 だがさすが王都というべきか、受付嬢は全員美人だ。

 完全に見た目で選んでるだろって思うくらい美人しかいない。

 ま、そんなことよりも依頼だ。

 貼ってあるものを見る。

 スタッカルドよりオークなどの食料の調達依頼が多い。

 人が多い分それだけ依頼も多くなるんだろうな。


「そこまで変わらないかな?」

「そうね。王都に来て逆にオークが増えた気がするわ。」

「うん。そんな気もする。」


 確かに、これだとやってることがスタッカルドと変わらないな。

 お互い顔を見合わせてギルドを出る。


「王都だからって依頼は変わらないね。」

「人が生きていくうえで食料は必要だからね。仕方ないわよ。」

「そうだな。じゃあどうするかー。」

「おや?そこにいらっしゃるのは「エスプレッソ」の皆さんではないですか?」


 顔を声がしたほうに向けるとスールギフテンのピピンさんがいた。

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