82 ギルドの手違い
ある日ギルドでソアラさんに話しかけられた。
「皆さんの中に確か聖魔法を使える方はいましたよね?」
「ええ、一応シロが使えますけど。」
「それならお願いしたい依頼があるんですけどいかがですか?」
「えっと、まず話だけ聞かせてもらっても?」
「わかりました。」
話の内容はどこぞの屋敷に人影があったのだが、屋敷には蔦がこれでもかと生えていてどう見ても人が住んでるようには見えない。
もしかしたらゴーストの類が住み着いてるんじゃないかと思って依頼を出したそうだ。
「どこの屋敷か知りませんけど、近隣の住民から苦情が出てたりはしないんですか?」
「それが街の中にある屋敷ではなく、細い道の先にポツンと一軒ある屋敷なのでそもそも苦情を言う人がいなかったんですよ。」
「なるほど。そこで怪しい影があったから一応調べてみるという事ですか。」
「そうなりますね。盗賊の可能性もありますし、皆さんなら大丈夫かと思ったので声を掛けさせてもらいました。」
「うーん。どうする?」
「いい依頼もないし、私はいいよ。」
「そうね。私もかまわないわ。」
「では依頼を受けますね。」
「ありがとうございます。」
依頼された場所はスタッカルドから非常に近く、歩いて半日かかるかどうかといった距離の場所だった。
それだけ近い場所なら確かに調べておいた方がいいだろうな。
もし盗賊なら、早めに討伐しておかないといけないし。
「今回はそんなに食料はいらないな。うまくいけば日帰りで行ってこれそうだ。」
「そうだね。シロもいるし問題ないと思うよ。」
「シャー。」
最近はシロが戦えるような相手が少なくなってきてる。
シロ自身は素早いんだがいかんせんリーチが短いのがきついな。
オークくらいなら俺とキリですぐに倒せるようになったし。
まぁ、水を出してくれるだけで十分に助かっているんだけど。
でもせっかくシロも強くなってるんだから活躍の場を作ってあげたい気持ちもある。
シロの毒は強敵との持久戦の時に輝くからな。
そのうち機会もあるだろう。
「準備はほとんどいらなかったな。行くか。」
スタッカルドを出てしばらく歩くと目的地へつながる小道が目に入った。
ここをまっすぐ行くと例の屋敷に着くはずだ。
「元々ここに住んでた人は何を考えてこんな場所に建てたんだろうな。」
「街に住みたくなかったとか?」
「それにしては街に近いし、これくらいの距離なら街に住んでも変わらないと思うんだけどな。」
「確かにね。」
「もしかしたら何か実験をしていたのかもしれないわね。」
「なるほど、それなら確かに街に住みにくい。」
「普通の魔法の実験でも音が出たりするから、こうして街の外に屋敷を持つのもおかしくない・・・かもしれないわ。」
「なんにせよ多少変わりものだったんだろうな。」
「そうね。そうじゃなければこんなところに屋敷を立てたりはしないわよ。」
歩きながら話していると目的の屋敷が見えてきた。
確かに見た感じ廃墟一歩手前の雰囲気がある。
ただ建物は頑丈なのか朽ちていない。
「随分雰囲気のある屋敷ね。」
「いかにも出そうだよね。」
「人影は今は無いみたいね、中に入れば出てくるのかしら。」
「どのみちここでじっとしていても仕方ないしな。早速入ろう。って門もしっかりしまってるな。」
「壊す?」
「いや、普通に上れそうだ。上って入ろう」
中に入る。
屋敷にもカギがかかってるな。
普通こういったものは壊れてるイメージなんだが。
「カギがかかってるみたいだ。悪いけどここは壊してくれ。」
「わかった。」
キリがハンマーを振りかぶる。
―ドォン!!
これで中の探索もできるな。
盗賊がいたら今ので気付かれてしまうが、それは仕方ないだろう。
「誰だ貴様ら!!!!!!」
「「「え?」」」
「盗賊か!?わが屋敷にこんなことをするとは、覚悟はできているのだろうな!?」
そこには怒り狂った青年がいた。
「あー、どちらさんで?」
「盗賊などに名乗る名前は無い!」
「いや、俺たちはギルドから依頼を受けてきたハンターだ。」
「なに?ハンターが何の用だ。我が屋敷を壊せとでも依頼をしたのか!?」
「そもそもここは無人のはずでは無いのかしら?」
「無人?私がいるではないか!しっかりと金も払って買い取った屋敷だぞ!」
これはどういうことだ?
手違いで依頼を出してしまったのか?
「いや、すまない。俺たちはここに怪しい人影があって、それを解決してくれと依頼されただけなんだ。人がいるとは聞いていなかった。」
「怪しい人影?我が作品のことか?」
「作品?」
「そうだ。見てみるがよい、この私の作品の数々を!」
そういうと屋敷の奥から女性の人形達がこっちに向かってきた。
「魔物?」
「違う!私が作ったのだ!こんなところで一人でいると不便なものでな、人手替わりというわけではないが私の生活のサポートをしてくれている。」
「へぇ。よくできてるな。」
と言ったところで青年の雰囲気が変わった。
とげとげしさが無くなり得意げな笑みを浮かべている。
「ほう、わかるか!私としてはこの美しさを出すまでに長い時がかかったのだ。まずは小さな人とも呼べないようなものを動かすことからはじめて、少しずつ改良を。」
意気揚々と話し出した。
おそらく自慢の作品のことを話したくて仕方なかったんだろう。
だが、その前に確認しなければいけないことがある。
「すまん。ちょっといいか?」
「・・・なんだね?」
「ここはあんたの屋敷で間違いないんだな?」
「間違いない。スタッカルドでも確認できるはずだ。しっかりと買い取ったんだからな。」
「ちなみに屋敷の蔦はなんで取らないのかしら?」
「雰囲気があっていいだろう。私はこういう雰囲気が好きなのだ。」
「趣味なの?」
「趣味だ。」
「「「・・・。」」」
紛らわしい。
こんなのどう見ても廃墟一歩手前の屋敷にしか見えなかったぞ。
「そうだ!扉はどうしてくれるのだ!」
「そこはギルドが何とかすると思うわ。今回の依頼を出したのは完全に手違いだから責任は取るはずよ。」
「ふむ。ならば早めに頼みたいところだな。」
「ならもう戻ってギルドに伝えるよ。」
と、言うと青年は少し焦ったように引き留めだした。
「待て待て待て待て!せっかくの久しぶりの客人だ。少しはゆっくりしていくがいい。盗賊ではないのなら多少はもてなさないことは無い。」
「えっと・・・。」
「それにだ、知らなかったとはいえ人の家の扉を壊しておいて、はい帰りますじゃあまりにも無礼だとは思わないか?」
「・・・そうね。それじゃあ少しだけゆっくりさせてもらうわ。」
「わかればいい。お互い誤解もあるだろうから解いていこうではないか。ドール達、飲み物と何か食べるものを頼む。」
そう言うと女の子の人形たちは奥に引っ込んでいった。
見た目は結構可愛く作ってあるから、完全にメイドさんだな。
「さて、自己紹介が遅れたな。私はアロン。ここでドールの研究をしている。」
「俺たちは「エスプレッソ」ランクはEだ。主にスタッカルドで活動しているハンターだ。俺はリーダーのジュン。」
「私はキリ。この子はシロだよ。」
「エリィよ。」
「なるほど。今回の問題はとりあえずギルドの問題という事でいいのか?」
「そうなるわね。ゴーストか盗賊の可能性を言われて来たわけだから、完全に手違いだと思うわ。
扉を壊したことに関しても、盗賊の可能性があるのにノックして罠にはめられましたじゃ話にならないから責任はギルドの方にあるはずよ。」
「それはそうだな。なによりきちんと住人がいるのにそれを調べなかったギルドが一番問題ではあるな。」
「確かにその通りか。わかった。今回の問題はギルドと話し合うことにしよう。」
ドール達が紅茶とクッキーを持ってきてくれた。
どれだけ高性能なんだ?
不思議な人形だな。
日本ならこんな人形があれば売れること間違いなしだ。
接客ができれば接客業にも使えるだろうし、可能性は多岐にわたるだろうな。
こうして変な知り合いができることになった。




