81 釣り
トロルバイソンを解体して、皮と角を手に入れたのはいいが、この有り余る肉はどうしようか。
魔物の肉だからすぐには腐らないだろうし、ほっといて自然の成り行きに任せるのが一番いいんだろうか。
食べるのもいるだろうしそうしよう。
「ねぇ、釣りしようよ。」
「思ってたよりも早く終わったからな、まだ釣りをする時間ぐらいはあるか。」
「それじゃあ持ってくるわ。餌を探しておいてね。」
「わかった。」
餌か、ミミズっぽい何かがいればいいんだけどな。
土を掘ればいるかな?
とりあえず掘ってみる。
時々いるな。これを使うか。
あとはトロルバイソンの肉も小さくして使ってみるか。
異世界だし、意外と食いつくかもしれない。
「持ってきたわよ。餌は何かいた?」
「とりあえずミミズかな。あとはトロルバイソンの肉も使ってみようかなって思ってる。」
「ミミズかぁ。私つけるの苦手なんだよね。」
「安心しろ、俺もだ。」
「私はトロルバイソンのお肉を試してみるよ。」
「釣れるかわからないぞ?」
「うん。でも釣れるかもしれないし。」
「それぞれいいと思った餌で釣ってみればいいわよ。私はとりあえずミミズで試してみるわ。」
エリィはサッとミミズをつけると水の中に針を放り投げる。
俺も負けてられないな。
ミミズを針に・・・針に、うっ、苦手だこれ。
刺そうとするとミミズが暴れまわる。
四苦八苦しながらなんとか刺して水の中に放り投げる。
二人はまだ釣れてないみたいだな。
「魚いるかな?」
「いるよ。魚の影は時々見えるしね。」
「そこまで大きくないけど、食べるには十分だと思うわ。」
「うまく釣れればいいけど。」
「そこは運ね。」
しばらくぼーっとしてるとエリィに当たりがきた。
「魚が食いついたわ。」
「お、とりあえず一匹目か?」
「どうかしら、ねっ!」
おお、釣れた。
何の魚かは分からないが二十センチくらいの魚だ。
多分食べられるだろう。
「姉さん凄い。」
「釣りは子どものころにやったことがあるのよ。だから覚えてたのかもしれないわね。」
「私の方は全然かからないなー。」
「キリのは餌が大きすぎるんじゃないか?もう少し小さく切ってみれば、って俺も来た。」
ちょっと小さめだけどこれも十分食べられる。
とりあえずバケツの中に放り込んでおく。
「私は大物を狙いたいんだよね。時々影が見えるから、あれを釣りたい。」
「それにしても大きすぎると思うんだ。食べたくても食べられないんじゃないか?」
「そうかなー?」
キリの針にはぶっとい肉の塊がくっついている。
俺たちが食べるならともかく、この池の魚にあれを食べろというのは無理な話だと思うんだ。
「ほら、切ってやるから一回池から出してみな。」
「わかった。」
とりあえず肉を四分の一くらいに切って、食べやすいようにしておく。
「小さすぎない?」
「こんなもんだと思うぞ。これでもまだ大きいと感じてるし。」
「そうなの?」
「多分な。俺も詳しいわけじゃないから何とも言えないけど。」
「うーん。試してみるよ。」
「そうしてみてくれ。」
俺も二投目を投げ込む。
そうこうしているうちにエリィが二匹目を釣り上げていた。
「凄いな。これでもう三匹だぞ。」
「魚自体は少し小さめだからもう少し釣っておきたいわね。」
「まぁでかい池じゃないからな。仕方ないさ。」
「それにもうじき日が暮れるわ。急ぎたいところね。」
「あ!何かピクピクしてるよ!」
「お、トロルバイソンの肉でも釣れるか?」
「食いついたと思ったら引っ張るのよ。焦らないでいいわ。」
「う、うん。」
キリは緊張しているな。
そんなにガチガチだと釣れるものも釣れないと思うが。
お、引っ張った。
あー、キリの顔を見る感じ逃げられたな。
「う、逃げられたみたい。」
「最初からうまくいく人は少ないわよ。気にしない方がいいわ。」
「うん・・・。」
そう言いつつもエリィは三匹目、四匹目を釣り上げていった。
結局、エリィが四匹、俺が一匹、キリはゼロ匹で釣りは終了となった。
釣り上げた魚は内臓の処理をして塩焼きだ。
丘の上に上がって晩飯の準備に取り掛かる。
「結局釣れなかった―。」
「惜しいところまではいったし次に期待だな。」
「魔物を倒す方がよっぽど簡単だよ。」
「魔物によってはそうかもしれないが、釣らないと魚は食べられないし仕方ないさ。」
「そうだけどー。」
キリはさっきからこの調子だ。
一匹も釣れなかったことが悔しいんだろう。
気持ちはわかる。
俺も一匹しか釣れてないから、魚はほぼエリィが釣ったものを食べることになる。エリィ様様だ。
魚の焼け具合を見ながら、肉も焼いていく。
「今日は肉も魚もある。豪華だな。」
「たまにはいいんじゃないかしら。近くに水辺がないとできないことだしね。」
「そうだな。依頼中に魚も食べることができるようになって嬉しい限りだ。」
魚がそこまで好きってわけじゃないけど、肉ばっかりだとどうしても別のものも食べたくなる。
そういう時に魚っていう選択肢があるとやっぱり嬉しいもんだ。
「そろそろ焼けたかな。食べようか。」
いただきますをしてそれぞれ魚にかぶりつく。
うん、肉とは全然違うこの味がいい。
少し小さめなのが残念だがここで大きさを求めるのは贅沢というものだ。
皆美味しそうに食べている。
シロは食べないのかと思っていたが、意外と興味を示して塩焼きを食べている。
気に入ったようでなによりだ。
フォレストウルフの肉も焼き上がり、主にキリとシロが食べていく。
そろそろ肉も底をつきそうだ。
トロルバイソンの肉が食べられれば良かったのにと思う。
別に毒があるわけじゃないみたいだけど、干し肉の方がマシと言われてしまえば食べる気にもならない。
その後、食事を終えて順次仮眠をとった。
翌朝。
片づけをして帰路に就く。
思ったよりも早く依頼が片付いたのは良かった。
「さぁ、スタッカルドに向かおうか。」
「そうだね。」
「途中で時間があると思うからその時にオークを相手に魔法の威力を試してみるわ。」
「わかった。ついでにオークの肉も手に入れることができればいいな。」
帰路は特にトラブルも何もなかった。
途中で以前ワイバーンが出た森の中に入っていき、オークを相手にエリィが魔法を試し打ちして現在の威力を確認。
俺たちには相変わらず凄い威力だなって事しかわからなかったが、本人としては少し威力があがってるとのことだ。
後はついでに出たオークも倒して肉を手に入れた。
その際に一発で首を落とすことに成功したので改めて腕輪の効果を確認できたのはよかったな。
一晩夜営をしてスタッカルドに到着した。
「やっぱり早く着くな。」
「身軽だからね。」
「色々あったけどあのダンジョンに行って正解だったわね。」
「まぁ・・・そうだな。」
「それじゃあまずは宿を取ってギルドに向かおうよ。」
「そうね。」
宿は問題なくとれた。
次にギルドに向かう。
「皆さん、意外と早く戻ってきましたね。」
ソアラさんだ。
「運よく早めに見つけることができましたので。確認と買取をお願いします。」
「わかりました。」
その間にエリィが持ち帰ったオークの肉の量を考えて依頼をはがしてくる。
「ついでにオークも狩ってきたのでこっちの依頼もお願いしますね。」
「はい。でも皆さんお荷物は?」
「前回のダンジョン探索で運よく魔法のバッグを手に入れまして。そっちに入ってます。」
「それはよかったですね。あるのとないのでは大きく違うと言われていますから。では確認しますのであちらでお願いしますね。」
こうして二つ同時に依頼達成となった。
今後もついでに何かを狩ったら依頼にないかチェックしてみるのもいいかもしれないな。




