79 魔法のバッグって便利
「おやっさんの店に行って、剣の長さの相談をしてきたんだけど、長くするなら十センチくらいがいいって言われたよ。」
「そうなんだ。それでジュンはどうするの?」
「迷ってるんだよな。今使ってる剣にそこまで不満は無い。でもできればオークくらいなら一撃で首を落とせるようになっておきたいって気持ちもある。」
「今でも首は落とせなくても致命傷は与えられてるんじゃないかしら。」
「そうなんだけどさ。だからこそ迷ってるってのはある。腕輪の効果も見てないし。」
何か依頼でも受けて魔物と戦ってみれば何となく効果は分かるような気はする。
でもいい依頼がないんだよな。
「私も指輪の効果を確認しておきたいんだよね。何か依頼を受けようよ。」
「うーん、これといった依頼がないんだよな。」
「確かに最近はパッとしないわね。」
最近はギルドに見に行ってもこれといって受けようと思う依頼がない。
贅沢を言ってるのは分かるが、現状お金に困ってないんだから何かうまみのある依頼を受けたいと思って探しているんだが、面白そうなものがない。
「試しにって事ならオークでもいいんだけど、オークとばっかり戦っても俺たちの経験にはならないだろうし。」
「そうだよね。でもせっかく手に入れた装備だから試したいな。」
「それじゃあギルドに行って依頼の確認でもしてみるか。もしかしたら新しく貼られてるかもしれないし。」
俺たちはギルドに向かった。
もちろんキリとシロは途中で買い食いをしながらだ。
ギルドに入るとあまり人がいない。
朝早い時間に依頼を受ける人が多いから、昼過ぎのこの時間は休みで酒を飲んでる人くらいだ。
俺たちはまっすぐに依頼が貼ってある場所に向かう。
「うーん、やっぱりこれというものは無いな。」
「そうだね。やっぱりオークでも受ける?」
「それでもいいんだけど・・・」
と、話していると後ろからソアラさんに声を掛けられた。
「皆さん、依頼を探しているんですか?」
「ええ。なかなかいいものが無くて。」
「今入った依頼なんですけどこんなのはどうですか?」
依頼・トロルバイソンの討伐。草原にトロルバイソンが三匹確認された。早めの討伐を求める。
「トロルバイソンか。確か群れで行動するって聞いたことがあるけど三匹だけなんですか?」
「おそらくは群れからあぶれたものがこっちに来たんでしょうね。肉は食べられませんが、角と皮はいい値段で取引されていますよ。」
「出来れば肉が食べられればありがたかったんですけどね。」
この言葉にはお互いに苦笑いだ。
「どうする?」
「ちょっと残念だけど、新しい装備を試してみたいしいいよ。」
「私も構わないわ。」
「二人とも大丈夫そうなのでその依頼を受けることにします。」
「ありがとうございます。」
今回は食べ物は我慢しながらの依頼になりそうだな。
しばらく街で美味しいものを食べたし、我慢してもらおう。
「それじゃあいつも通りに準備して出発するか。」
「そうだね。一応塩胡椒と釣り針は持ったんでしょ?」
「もう買っちゃったからな。」
「それじゃあ全部魔法のバッグに入れておくわよ。」
ちなみに魔法のバッグを持つのはエリィだ。
俺とキリは前衛ですぐに動けるようにしておかないといけないから自然とこうなった。
今回は近くまで来ているようで、距離は歩いて二日くらいのところだ。
スタッカルドを出て、この間ワイバーンが出た森の方へ向かう。
その先にいるらしいから可能ならオークでも倒して肉を確保しておきたいところだ。
「またこの道を通ることになったね。」
「途中でお肉が手に入るかもしれないわ。そう考えれば悪いことばかりじゃないんじゃない?」
「うん。今回のトロルバイソンは食べられないみたいだからね。」
「新装備を試すっていう意味では丁度いい相手なのかもしれないわよ。それにオークが出たらついでに倒して持っていけば他の依頼もついでに達成できるかもしれないしね。」
「それはありなのか?」
「ありよ。あくまでもギルドの処理の問題だから私たちには関係ないわ。他の人たちもオークをたくさん倒したときは二つの依頼として処理してたりするわよ。」
「へぇ、そんなもんか。」
「それならオークが出ても問題ないね。出ないかなぁ。」
トロルバイソンと戦う前に戦い慣れたオークと戦っておくのは悪くない。
もし出てきたらいつも通り練習台になってもらおう。
と、思ってたらフォレストウルフが出てきた。
サクッと倒したけどこいつらじゃあいまいち効果が分からない。
「効果分かった?」
「うーん。少し速く動けたかな?フォレストウルフだとよくわからないかも。」
「だよな。俺も全然わからなかった。」
とりあえず肉は手に入った。ついでに毛皮も。
これでオークが出てこなくても新鮮な肉が食べられる。
「出てこないねー。」
「多少は森に入らないと難しいんじゃないか?」
「でもよく馬車を襲ったりするっていう話も聞くから、街道にも出てくると思うんだけどな。」
「出ては来るわよ。ただ、ここは皆でオークを狩ってるからなかなか街道までは出てこないかもしれないわね。」
「そっか。確かに依頼があると皆ここに来るもんね。仕方ないのかな。」
話しているうちにまわりが暗くなり始めてきた。
早いうちに夜営の準備をしてしまおう。
「エリィ、夜営の準備をするからバッグから一式出してくれ。」
「わかったわ。」
テントがバッグから出てくる。
何とも奇妙な光景だな。
まるで未来の猫型ロボットの不思議ポケットみたいだ。
急いで組み立てて薪を集める。
「今日はフォレストウルフの肉だ。もったいないから胡椒は使わないでおくか。」
「出来ればオークがよかったなぁ。出てこなかったから仕方ないけど。」
「フォレストウルフの肉もさっぱりして食べやすいわよ。味はそんなにないけど。」
「それにしても昼過ぎに出たのにだいぶ進んだな。魔法のバッグの力は凄いな。」
「今までの荷物が全部入ったから手ぶらで歩けたのは楽でいいわよね。」
「持ってるのは武器だけだもんね。移動速度も速くなるよね。」
「これなら明日にはトロルバイソンと会えるかもな。」
「動きはそこまで速くないみたいだけど、角の一撃が強力って言ってたよね。」
「ああ。俺はそれに耐えられるか試してみるつもりではある。余裕があればだけど。」
甘く見て大怪我したなんて笑い話にもならないからな。
しっかりと様子を見たうえで試してみるつもりだ。
後は俺の攻撃がどこまで通じるか、それも大事だ。
そこそこ大きいらしいから首を落とすのは無理かもしれないが、チャンスがあれば狙ってみたい。
「それじゃあ見張りの順番を決めて仮眠をとるぞ。」
翌朝。
「結局襲撃はなかったな。」
「安心して眠れたんだからいいじゃない。」
「そうなんだけど、オークが襲ってくるかなってちょっとは思ってた。」
「もしかしたらワイバーンの時に数を減らしたのかもしれないわね。」
「もしそうならオークの依頼が片付かないことになるな。」
「大丈夫だよ。ここじゃないところにもたくさんいるから。すぐ増えるだろうし。」
「そうね。繁殖力はゴブリンほどではないにしろ近いものはあるわ。だから色々なところで食べられてるわけよ。人にも、魔物にもね。」
「なるほどな。納得したよ。それじゃあ片づけをして進もう。」
二日目、森を横目に通り過ぎて先に向かうのだった。




