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78 かゆいところに手が届かない時って、よりかゆく感じるよね

 結構な収入になったのでしばらくは休もうという話になった。

 とは言っても娯楽が少ないこの世界ではやることがあまりない。

 俺は行きつけの喫茶店ロイバーに行く日々を送っている。

 マスターには盗賊の技術などを教えてもらいながらコーヒーを飲んでいる。


「なるほど。初めての罠の解除はうまくいきましたか。」

「簡単なのばっかりだったからできたって感じだけどね。これが難しくなってくるとこうはいかないんだろうなって思うよ。」

「それはそうでしょう。しかし、最初から何でも解除できる人はおりません。なんでも一つ一つやっていくことです。」

「そうだよな。宝箱に関してはほとんどエリィに任せてるんだけど、時々見せてもらったら俺には出来そうもなかったよ。それでもチャレンジしとけばよかったかな。」

「いっそ宝箱は全て任せてしまうのもいいかもしれませんね。罠に集中しておけば問題ないでしょう。」

「俺は道中の罠に特化するってことか。それもありかもしれないな。」

「難しくなってくるのはまだまだこれからですからね。仲間同士補っていけばいいんですよ。」


 それはそうか。

 少なくとも宝箱を上手に開けられるのはエリィなんだから、もう任せてしまってもいいか。

 俺は罠の方で頑張るってことで。

 次のダンジョンがいつになるのかわからないけど少しでも情報や技術を学んでおかないとな。

 もっと難しい罠が出てきてから対処が分からないなんてことにはなりたくない。


「今回のダンジョン探索の成果はいかがでしたか?」

「良かったと思うよ。ほしかったものもとれたしね。」

「それは何よりですね。やはりダンジョンと言えばアイテムが魅力的ですから。もちろん魔物の素材も魅力的な場所もありますけどね。」

「ダンジョンって平均何階くらいあるものなのか知ってる?」

「それはその場所によって大きく違うとしか申し上げられません。小さいところでは一階で終わるところもありますし、大きいところだと何十階もの大きさになると言われていますからね。」

「ってことは六階のダンジョンは小さいほうなのか。」

「小さくても中身が凶悪なものもありますから。何階あるかでダンジョンの難しさは決められないことも多いんですよ。

 ただ何十階ものダンジョンになると奥に行けば行くほど魔物は強くなっていくことは間違いありませんけどね。」

「地下一階なのに下りたら目の前にワイバーンがいるなんてこともありえるの?」

「ないとは言い切れませんね。もし入ったダンジョンが変動型であれば十分あり得ることです。」


 そういえば変動型なんてのもあるんだっけ。

 たしか完全にランダムなダンジョン。

 運が良ければいいアイテムが簡単に手に入るけど、その代わり凶悪な魔物に追われる確率も少なくないっていうギャンブルみたいなダンジョンだったな。

 そこまで自分の運に自信は無いし入ることはないだろうな。


「変動型ではないにしろ、仮に伝説級のダンジョンに入ったら似たようなことにはなるでしょうね。いえ、それよりももっと強い魔物が待ち受けているでしょう。」

「伝説級ね。どれくらいの魔物が出るか知ってる?」

「いえ、ほとんど情報は出回りません。ギルドも厳重に管理してますし、入ったことがあるハンターはそれこそSランクのハンターくらいかと思いますよ。」

「なるほどね。それだけやばいダンジョンなわけか。どんな魔物が出るのか聞いてみたい気はするな。」

「そうですね。Sランクハンターと親交を深めるということが難しそうですけど。」

「会ってみたい気もするし、会いたくない気もする。機嫌を損ねたらそれだけで命の危機に陥りそうだ。」

「どうでしょうかね。もう一杯いかがですか?」

「いや、悪いけどこの後行くところがあるんだ。これで最後にさせてもらうよ。」

「かしこまりました。」


 ロイバーを後にして鍛冶屋に向かう。

 おやっさんに相談することがあるからだ。

 最近、武器の長さが少し足りないと感じることが多くなってきている。

 そのことについて相談するつもりだ。


「おやっさーん。いるかーい?」

「ん?お前さんか、今日はどうした?」

「ちょっと相談に乗ってほしいことがあってね。」

「ふむ。話してみろ。」

「俺が使ってる剣なんだけど、最近長さが少し足りないように感じてきたんだ。攻撃力に関しても少しは強くなるだろうし。だからどうだろうって思って相談しに来たんだよ。」

「なるほどな。確かにお前さんが使ってるのは長さとしては短めの部類だから攻撃力に関しては少し心もとない。扱いになれたのならもう少し長めの剣を選んでもいいかもしれんな。」

「そこまで極端に長くなくていいと思うんだけど、どれくらいのものなら俺に扱えるのかもわからないんだよな。」

「そういうことなら店の裏手に来い。試し切り用の的を用意してある。」

「それは助かる。早速頼むよ。」


 店の裏手に行くと広くはないが十分に剣を振れるスペースがあり、藁でできた的がいくつかあった。

 おそらくあれを斬ってみて自分に合うか合わないかの参考にするんだろう。


「待たせたな。とりあえずその剣より長いものをいくつか持ってきた。順番に試してみろ。」

「ありがとう、おやっさん。」


 全部鉄でできた剣だ、いつもと少し感覚が違う。

 ほんの少し長い剣を持って素振りしてみる。

 あまり違和感はないな。今までと同じように使える。

 その後も剣を変えて素振りをしてみる。

 長くなればなるだけ扱いが今との違いが大きくなり難しくなるが、とりあえず振るだけは振ってみる。


「ふーむ。長くするなら十センチくらいにしておいた方がいいだろうな。それ以上だとまだ体がついてこん。」

「十センチか、それだけ違えばだいぶ違うもんか?」

「変わると思うぞ。重量も増すし、リーチも長くなる。使いこなすには練習と慣れが必要だと思うが、それくらいならじきにどうにかなりそうだな。」


 たかが十センチ、されど十センチってことか。

 確かに重さが結構変わるし、今まで斬れなかったものも斬れるようになるかもしれない。


「そっか。そんじゃあ次の剣は今より十センチ長くするか。」

「それがいいだろう。それにしても剣を振る姿が板についてきたじゃないか。」

「これでもEランクハンターだからな。もうこん棒を振り回してた頃とは違うよ。」

「そうか、もうEランクか。お前さんが一人前のハンターになるとは思わなかったぞ。」


 俺も思わなかった。

 正直、別のことで稼いでいければって何度も思ったからな。

 でも武器がそろって、仲間ができて、少しずつこの道でもいいかって思えてきたんだよな。

 きついことも多いけど、達成感もあるしな。美味いものも食えるし。


「あの時は生きることで精いっぱいだったからな。なんだかんだで仲間にも恵まれた。」

「それはなによりだ。剣はどうする、買っていくか?」

「うーん、少し考えさせてくれ。仲間とも相談したいし、この剣に大きく不満があるってわけじゃないしな。」

「そうか、わかった。」


 このタイトビートルの剣にもだいぶお世話になってるんだよな。

 手には馴染むし使いやすい。

 今すぐに剣を変えるべきかというとちょっと迷うところだ。

 攻撃力は欲しいが、ダンジョンで拾ったマジックアイテムの腕輪の効果も試してみたいし、今すぐに決める必要はないだろう。


「助かったよ。おやっさん。」

「なぁに、これくらいは気にするな。また何かあれば来い。」

「ああ。ありがとう。」


 おやっさんに礼を言って鍛冶屋を後にした。

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