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76 調理のお願い

「やっと脱出できたな。」

「帰りはマップがあったから早かったね。」

「そうだな。出来ればもう少し早く脱出したかったが。もう夜だ。」

「今日はここで夜営かしらね。」

「その方がいいだろうな。いくらなんでも夜道は危ないだろうし。」


 その場合ダンジョンの地下一階で夜営したほうがいいのか?

 明るいしたいした魔物はいないからな。

 でも、朝が来るのが分かりにくいのが難点だ。

 出来れば夜が明けたらすぐにスタッカルドに向けて移動したい。

 迷う。


「ダンジョンの中で夜営するか、外で夜営するか迷うんだけどどっちがいと思う?」

「普段なら外だけど、今回は中かしら。」

「私たちの他に人がいないから比較的安心して夜営できるもんね。」

「わかった。時々外を確認して夜が明けたらすぐに出発するぞ。」

「それでいいと思うわ。」


 ダンジョンの中で夜営をすることになった。

 地下一階で動き回る魔物はゴブリンくらいだ。

 比較的安全に過ごせる。

 飯を終わらせてテントで順次仮眠を取っていく。

 何度か襲撃があったが、ゴブリン相手なのでサクッと終わらせた。


 翌朝。


「空が少し明るくなってきた。出発するか。」

「そうだね。今のうちに出れば、日が暮れる前に余裕をもってスタッカルドに着くと思うし。」

「出来るだけ早く着いて換金と鑑定を終わらせないとな。荷物がこんなに増えたのは初めてだ。」

「魔石だけでも結構な量になったわね。一応ダンジョンを制覇したんだからこれくらいは当たり前なのかしら。」

「どうなんだろうな。でもいい稼ぎにはなったと思うけど。」

「これだけあればね。依頼も十分に達成したし何も問題は無いよ。」


 ダンジョン探索でここまでやれば十分すぎるだろう。

 これからここにも多少のお店が出店するのかもしれない。

 スタッカルドから近いからそれは微妙かな?

 俺はもう潜りたくはないけど、人によっては美味しいダンジョンかもしれないし、今後にぎわうかもな。


「結局このダンジョンは中級くらいだったのか?」

「そうね。基本的には中級の少し下の方だと思うんだけど、ガルタイガーだけが浮いてたわね。」

「ガルタイガーだけ、とびぬけて強かったもんね。そこを考えると普通の中級くらいになるのかな。」

「地下四階までは比較的楽な部類で、地下五階だけが危険度が跳ね上がるって感じか。」

「そんな感じね。」

「そこらへんも一応報告しておかないとな。」

「これだけの情報を集めたんだからギルドから追加報酬ももらえるかもしれないわね。」

「もらえたらいいね。」

「後は宝箱から出たアイテムに使えるものがあることを期待したいところだな。」

「そうだね。結構とったから少しくらいはあると思うけど、どうだろうね。」

「一番の期待はボスから出たバッグよね。」

「期待しちゃうよね。もしかしたら当たりかもしれないし。」


 一番欲しかった魔法のバッグがついに手に入ったかもしれない。

 他のはダメでもそこだけは当たりを引いていてほしい。

 地下五階でもガルタイガーに会うまでは宝箱を開けながら行動していたから、少しは有用なアイテムがあるかもしれないけど。


「街からそこまで離れてないから、魔物も少ないし盗賊もいないね。」

「近いのに盗賊がはびこってたら領主の手腕が疑われるからな。そこらへんは気を付けてるんだろう。」

「スタッカルドの領主様は優秀な人みたいだからね。」

「へぇ、そうなんだ。」

「みたいだよ。住んでる人にも結構人気があるみたい。」

「そんな人なら付近の盗賊もそうそう住み着いたりは出来そうにないな。」


 っていっても貴族ってだけで何となく信用できないんだよな。

 人気取りなんていくらでもできそうだし。

 ま、会う事なんてないだろうしどうでもいいか。


 その後も出てくるのはゴブリンやフォレストウルフくらいで、剣の練習台になってもらった。

 スタッカルドに着いたのはまだ日が暮れる前だった。


「よかった、この時間なら間違いなくランゲさんの宿は空いてるだろ。」

「先に宿をとってからギルドに行く?」

「そうしよう。調理を頼むこともあるし。」

「うん。じゃあ行こう。」


 ランゲさんの宿「竜のしっぽ亭」に来た。


「すみませーん。」

「あ、おにーさん達いらっしゃい!宿泊するの?」

「エイミちゃん、お願いできる?」

「ありがとうございます!部屋はそばにしておくね。」

「あとランゲさんに頼みがあるんだけど、今いいかな?」

「ちょっとまってね。おとーさーん!」


 ランゲさんを呼びに行ってしまった。

 相変わらず元気な子だな。今九歳って言ってたよな。日本じゃ考えられないけど、この世界じゃその年齢で店の手伝いをするのは普通のことみたいだ。


「おう。戻ったか。」

「すみません、忙しかったですか?」

「いや、今はまだ夕飯には早いからな。大丈夫だ。何か頼みがあるって聞いたけどどうした?」

「実はダンジョンで美味しい肉を手に入れることができたんで、ランゲさんに調理してもらえないかなと思いまして。もちろんお金は払います。」

「ほう?そいつは気になるな。どれ、出してみろ。」


 俺たちはスークィールとガルタイガーとテールウィップの肉をある程度の量を取り出した。


「これらなんですけどどうですか?」

「なるほど。確かにいい肉だ。いいだろう、三回の食事に分けて出してやるよ。」

「ありがとうございます。余った分は好きに使ってくれて構わないのでよろしくお願いします。」

「それはありがたいな、客にも多少は出せる量はある。それなら金はいらん。」

「本当ですか?助かります。」

「なぁに、こっちもいつもと違った食材を使えるんだ、楽しいってもんだ。またうまいもんを取ってきたら調理してやるから言いな。」

「はい。お願いします。」

「今日は泊っていくんだろう?」

「ええ。」

「それなら一つは今晩に出してやるよ。楽しみにしてな。」

「わかりました。お願いします。」


 これでランゲさんの調理であの肉を食べることができる。

 やっぱりうまい肉はうまい料理になってこそだよな。


「やったね!」

「ああ、楽しみだな。」

「どういった味になるのか楽しみね。」

「その前にギルドにもいってこないとな。」

「そうだね。依頼が終わったことを報告しないとね。」


 宿を出てギルドに向かう。

 途中で串焼きなどの美味しそうな匂いにつられてお腹が鳴るが、ランゲさんの料理のためにこのまま我慢する。

 ギルドに入る。

 依頼が終わったハンターが飲んだりしている。

 依頼がうまく行ったから乾杯でもしてるんだろう。

 ソアラさんがいたので依頼の完了と報告をする。


「なるほど。全部で六階のダンジョンだったんですか。」

「ええ。地下四階と地下五階には注意が必要ですね。特に地下五階には。」

「ガルタイガーですか。結構な強敵ですけどよく無事でしたね。ランクにすればDランクだったと思いますけど。」

「そこはエリィの魔法で何とかなりました。もしエリィがいなければやられていましたね。」

「エリィさんの魔法ですか。ワイバーンの時も活躍したみたいですけど本当にすごいですね。」

「助けてもらってますよ。」

「魔物の分布は分かりました。マップも売っていただけるのですか?」

「構いませんよ。もう一度潜る予定もないですし。」

「一度制覇したダンジョンでは連続でボスに挑む方もいますけどそうはしないんですか?」

「挑みません。他のダンジョンにも行ってみたいですしね。」


 決して虫が嫌だというのは言わない。

 俺にも少しくらいかっこつけたいときもある。


「それに、もしもう一度行くことになったらマップを買いますよ。」

「なるほど。確かにそれでもいいかもしれませんね。」

「くれぐれも地下五階には気を付けるように言っておくことをお勧めします。」

「わかりました。有益な情報をありがとうございます。

 まさか中級のダンジョンだとは思ってなかったものですから、これらの情報は助かります。

 少しではありますが追加報酬も出させてもらいますね。」

「ありがとうございます。素材の換金もしてほしいので一緒にお願いします。」

「はい。素材についてはあちらでお願いしますね。」


 その後、大量にあった素材を売り払った。

 キリは肉をもう少しキープしておきたかったみたいだが、街にいれば色々な店にもいくことになるからその間に悪くなったらもったいないってことで話が付いた。


「お待たせしました。換金した分も合わせましてこちらになります。」

「ありがとうございます。ひとつ聞きたいんですけどいいですか?」

「なんですか?」

「今回宝箱からアイテムを持ってきたので鑑定をお願いしたいんですけど、どこかいいところはありませんかね?」

「前回のダンジョンではどうされたんですか?」

「前回は大したものは無いってことでギルドの出張所に売っちゃいました。」

「なるほど。そうですね・・・。でしたらスールギフテンはいかがですか?確か一度依頼で行ってると思いますし。」

「極彩スズメの依頼の時ですね。確かに一度行ってます。」

「あちらは鑑定ができる方もそろってますし、何より評判もいいですから、信頼できる商店だと思いますよ。」

「わかりました。行ってみることにします。」


 話も終わってギルドを出る。

 スールギフテンに行くのは明日だな。

 今日は時間がもうない。

 宿に戻る前に服屋によって新しい服を一式買った。

 とりあえず今着ているものはよく洗ってからどうするか考えよう。

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