75 出来立てのダンジョン探索16
「どうする?地下三階まで上がるか、ここで夜営するか。」
「上がっちゃおうよ。遺跡の階層だったから明るいし、見張りもしやすいよ。」
「そうね。もしクレイゴーレムがいたとしても魔力は足りてるから一掃できるわ。」
「わかった。なら上がろう。」
階段を上がる。
遺跡の階層だ。とりあえず近くには何もいないようだ。
「上がっていきなり襲われるってことは無かったみたいだな。」
「いたとしてもクレイゴーレムかマミーだから大丈夫だと思うけど。」
「マミーは大丈夫だと思うけどクレイゴーレムは数がな。いきなり囲まれてたりしたらさすがに厄介だ。」
「確かにね。今日はここで夜営するんでしょ?」
「そのつもりだけど。」
「それなら付近の魔物も倒しておいた方がいいかもしれないよ。」
「そうだな。寝てるときに襲撃されるよりは、今減らしておいた方がいいか。」
「今なら私も魔法を撃てるから丁度いいわね。」
ご飯を食べる前に周囲の魔物を減らすことに決まった。
さっくりとマミーを倒し、数が多いクレイゴーレムはエリィの魔法で一網打尽にして終わりだ。
両方とも動きがそこまで速くないから特に苦戦はしなかった。
周囲の片付けが終わったらいよいよご飯だ。
「ついにテールウィップを食べられるんだね。どんな味なんだろう。」
「肉はともかく、しっぽは俺は珍味だと思うぞ。」
「それでもいいの。美味しいかもしれないんだから食べてみる価値はあるんだよ。」
「エリィは食べてみるのか?」
「気が向いたら、かしら。」
大人の返事だな。
とりあえず切り分けて焼く。
テールウィップのしっぽは切るときにもぐにぐにして切りにくかった。
ゴムみたいな食感なんじゃないかと予想している。
肉の部分はスークィールとさほど変わらない。
ちょっと魚っぽいかなって感じがしたくらいだ。
オーク、スークィール、ガルタイガー、テールウィップと四種類の肉が焼かれていく。
豪華な焼き肉って感じだ。
本当にタレが無いのが悔やまれる。
何種類かのタレを用意して食べ比べたい。
そしてご飯が欲しい。
でも手元にあるのはカチカチに固められた黒パンだ、これで食べるほかない。
「大体焼けたな。しっぽは・・・まだだな。しっぽ以外は大丈夫だ。」
「それじゃあ食べようよ。」
「「「いただきます。」」」
「シャー。」
俺とエリィはまずさっぱりとしたガルタイガーを食べ始める。
キリはまだ食べたことのないテールウィップにいったな。
シロもキリにつられて同じものを食べている。
「うーん。テールウィップは美味しいけどお肉って感じはそんなにしないかな。」
「そうなのか?」
「うん。ちょっとお魚っぽさもあって変わった味だね。」
魚っぽいって思ったのは間違いじゃなかったのか。
それはそれで気分を変えることができていいかもしれない。
ガルタイガーを食べ終わったらテールウィップを食べてみることにする。
うん。確かに魚っぽさもあるな。でも旨味はしっかりとしてる。これはこれでありだ。
醤油を付けて食べたいな。
それにしてもしっぽは全然焼けないな。
実はこれで焼けてるのか?
しっぽの皮を触るとずるっと剥けた。
中は熱は通ってそうだが焼けたような変色した後がない。
判断に困るな。
「もう食べていいの?」
「うーん。熱は通ってると思うんだけど焼けてる感じはしないんだよな。判断に困る。」
「それなら食べてみるよ。中が生だったらやめておくから。」
「そうだな・・・随分焼いてるしそれでもいいか。」
「じゃあ食べてみるね!」
キリがパクッとしっぽを口に含んで噛みだす。
「んー。んん?んんんんーーー?」
「どうした、やっぱり焼けてなかったか?」
「わからないけど食感が面白いよ。ムニムニしてて噛んでも噛んでもうまく噛めない。」
「どういうことだ?」
「あはははは。ジュンも食べてみればいいよ。」
仕方ないから一口貰うことにする。
ムニムニ。
なんだこれ、ゴムっぽいと思ってたけど全然違う。
なんて言えばいいんだろう。まとまりのあるスライムを食べてる感じか?
滑るし伸びるし噛み切れないしで食べ物とは思えない。
「これは・・・食べ物なのか?」
「うーん、どうだろうね。味もほとんどしないし、食感を楽しむためだけのものかも。」
「ちょっと気になるわね。私も一口貰うわ。」
意外にもエリィが興味を示した。
口に入れるとムニムニとしだす。
「ふふ。何だかわからないけど楽しいわね。」
「そうか。俺はちょっと食べられそうもなかった。」
「ふふふ。この食感、癖になるわ。私は嫌いじゃないわね。もちろん食べ物としてはダメだけど。」
「あはははは。結構伸びるよ。凄いなー。」
完全におもちゃだ。
楽しそうだししばらくはほっとこう。
俺はシロと食事を進めた。
せっかく色々な肉があるんだから食べ比べだ。
オークはよく食べるから十分にわかってるけど。
他の肉はそれぞれ個性があって美味しい。
三種類とも脂っぽくないのも個人的には嬉しいところだ。
キリとエリィも満足したのか食事に復帰した。
「テールウィップのしっぽは面白かったけど、お肉じゃないかな。」
「そうね。あれは不思議な何かね。」
「さぁ、まだまだ食べるよー。」
「ほどほどにね。」
いつものやり取りだな。
この後しばらく食事をして、順番に仮眠をとった。
翌朝。
「さぁ、残り三階。今日中には出られると思うから頑張って進むぞ。」
「うん。沼地は越えたもんね、後は進んでいくだけだよ。」
遺跡の階層を歩き出す。ここもマッピングしてあるから戻りは楽だ。
迷わずに一直線で階段に向かう。
途中にマミーがやってくることがあるけど剣の練習台となってもらっている。
特に何事もなく地下二階への階段までたどり着いた。
「あっさりだったな。」
「ジュンにとっては次の階の方が嫌なんじゃない?」
「うっ。せっかく忘れてたのに。」
「仕方ないわよ。通らないと戻れないんだから。」
「今日はここで休憩して明日にするのは・・・。」
「ダメよ。そんなに時間もたってないわ。お肉の劣化も抑えたいし急ぐわよ。」
「だよな。わかったよ。やってやるさ!」
地下二階への階段を上がる。
「来ちゃったか。頼むから出ないでくれよー。」
「早く進めばそれだけ魔物と会う回数は少なくなると思うよ。」
「そうだな!よし、なるべく早く突破しよう!」
「待って、この階層は少し迷ってたから作ったマップが曲がりくねってるのよ。落ち着きながら早めに行くわよ。」
「よりによってここで迷ってたのか。仕方ない、それでも可能な限り早く行こう。」
「わかったわ。」
出会いたくない時に限って出会う。
人生ってそんなもんだよね。
今俺は粘着イモムシの体液にまみれてテンションがだだ下がりですよ。
仕方ないのはわかってる。
斬ったら体液でてくるもん。
キリはハンマーだから派手に飛び散らせるし。
そしてなぜかこの階では魔物が出る出る。
もう何匹倒したのかわからない。
はじめはキリもエリィも励ましてくれていたんだけど、途中からは何も言わなくなってる。
呪われているかのようなエンカウント。
確かに沼地でこれだけ遭遇するよりはいいのかもしれない。
けど、俺の精神的にはこっちの方が辛かったりする。
行き場のない気持ちをどこにぶつければいいのか。
すべて粘着イモムシが悪い!
そんな身も心もドロドロした状態のまま地下一階への階段を上っていった。
「ジュン・・・もうイモムシはいないよ?シロに水を出してもらって奇麗にしていいんじゃないかな?」
「そうよ・・・ジュンは頑張ったわよ。」
二人に慰められているのが情けない。
でも地獄の地下二階を突破したんだ、その事実は揺るがない。
せめてドロドロの体を少しでもきれいにしよう。
「シロ、水を頼むよ。」
「シャー・・・。」
シロも優し気な目を向けてくる。
心が痛い。
でもね、ああいった虫はダメなんだ!
俺には天敵だ。
鎧や体に付いた体液を水を絞った布で拭いていく。
少しはさっぱりした。
これ以上はスタッカルドに着いてからじゃないと無理だな。
最悪、服は買い替えよう。
「ありがとう、皆。ちょっとは落ち着いたよ。」
「うん。私も軽く拭くからちょっと待っててね。」
「ああ。」
地下一階の魔物たちには俺のたまったストレスのはけ口になってもらった。
そして無事、ダンジョンから脱出できたのだった。




