74 出来立てのダンジョン探索15
ここからは地上に戻るだけだ。
だがガルタイガーをはじめとして油断できない。
なるべく素早く移動して魔物と遭遇しないように行きたい。
「沼地の宝箱はもういいよな?」
「・・・そうね。ちょっともったいないけど、魔法も一発使っちゃったし戻ることを優先するわ。」
「荷物も結構あるしね。」
「よし。それじゃあ作ったマップを見ながらなるべく早く沼地を抜けるぞ。」
「うん。」
帰りは行きでマッピングしてきたからスムーズに階段までたどり着けるはずだ。
沼地を焦らずに素早く行動する。
途中、オークが襲ってきたができる限り素早く倒す。
魔石以外は今は解体する暇はない。
「またガルタイガーに会わないといいんだけどね。」
「気を付けて行かないとな。もし早いタイミングでガルタイガーと戦闘になったら一回戻ってエリィの魔力が回復するのを待った方がいいだろうな。魔法を二発使った状態で進むのは危険だ。」
「そうね。その場合は私も戻ることに賛成ね。」
このパーティーにとってエリィの魔法は切り札だ。
一日に三回か、調子のいい日で四回使えるとして、早いうちに消費してしまうのはよくないことだろう。
地下四階でもスークィール。地下三階でもクレイゴーレムが魔法を使ってもらう可能性がある。
スークィールは素早い攻撃と毒が厄介で、いざという時に使えるかどうかは大事だと思う。
クレイゴーレムはそこまで強くは無いんだが、大勢で群れるからまとめて倒せるエリィの魔法はずいぶんと助かる。時間を掛ければ俺とキリでもいけるかもしれないが。
絶対に使わないと倒せないのがガルタイガーだ。
今の俺とキリじゃ攻撃を当てることができていないからな。
完全にエリィの魔法だよりになる。
その切り札をなるべく温存して進みたい。
つまりガルタイガーには会いたくない。
「戦闘音がしたら回り道をするつもりでいよう。わざわざ危険を冒す必要はない。」
「そうね。戦闘音がしないことを祈るわ。」
今のところ現れたのはさっきのオーク達のみだ。
遠くに沼地オオトカゲは何度か見かけたが、基本的に沼地に入っていかなければこっちに来ないようで、全部無視して進んでいる。
あぁ、自分で言っておいてなんだけど、宝箱がありそうなところをスルーするのはつらい。
あそことかいかにもありそうだもんな。
でも今はそのために沼地に入るのは違うし。
今度、のんびり宝箱を回収できるようなダンジョンを聞き込みしてみようかな。
そんな美味しいところないか。
「ジュン。気持ちはわかるけど索敵はしっかりね。」
「ああ。わかってる。」
「その割には視線が沼地に向いてるみたいだけど?」
「ちょっともったいないなって思ってさ。大丈夫だ、魔物がいないかどうかはちゃんと見てるよ。」
「ならいいんだけど。ガルタイガーの俊敏さを考えたらいきなり襲われてもおかしくないからね。」
「だな。でも今のところはいないみたいだし、この階でも珍しい魔物なんじゃないか?」
「そうかもしれないわね。ボスだとしてもおかしくないくらいの強さだったし、あまり多くは無いのかもしれないわね。」
あんなのがたくさんいたらと思うとゾッとする。
幸いにももう半分は来たし、残りの半分も出会わないように祈ろう。
「意外なほどオークにも会わないな。」
「そうだね。戦った痕跡もないし、どうしたんだろう。」
「出来たばかりのダンジョンだからまだ魔物の数も少ないのかもしれないわね。」
「俺たちとしては楽でいいけど、気味が悪いというか。」
「もしも魔物の数が多かったらボスまでたどり着けてなかったかもしれないし、今回は運がよかったね。ん?」
「どうした?」
「静かにしよう。ガルタイガーだよ。」
キリが向けた視線の先には沼地の中で沼地オオトカゲを食べているガルタイガーの姿があった。
俺たちに気が付いている様子はない。
「食べることに夢中って感じだな。」
「そうだね。静かに、速くこの場を離れよう。」
「それがいいわね。」
物音を極力立てないようにして、その場を離れる。
気が付かれたらと思うと汗が出てくるが何とか見えない場所まで離れることができた。
「ふぅー。戦闘にならなくてよかった。」
「もう少し早く来てたら、私たちが戦うことになってたかもしれないわね。」
「うん。先に沼地オオトカゲと戦っていてくれて良かったよ。」
「階段まであと少しだ。急ごう。」
足早に階段まで進んでいく。
後ろにいるガルタイガーが沼地オオトカゲを食べ終わって、こっちにターゲットが向かないとは限らないからだ。
急いだ甲斐があって無事に地下四階への階段にたどり着いた。
「ここまでくれば一番危険なところは突破したな。」
「そうだね。次に会う時にはしっかりと戦えるようになってないとね。」
「ああ。もっと強くなってリベンジだな。」
そんなことを話しながら階段を上がった。
「地下四階か。ここはスークィールがいるけど、あいつは大体沼地の木の上にいることが多そうだからな。一応なるべく木が少ない場所を通っていこう。」
「スークィールにさえ気を付ければここは大丈夫だもんね。」
「後確認しているのはオークくらいね。戦ったら古くなった肉を新鮮なものに変えて行ってもいいと思うわ。」
「そうしよう。まだ大丈夫だと思うけど、新鮮であるに越したことは無いからな。」
ここはとにかく蛇に気を付ければいい。
地面を移動していた場合は仕方ないけど、木の上にいるものは避けて通れるはずだ。
沼地に気を付けて移動する。
途中、運がよくオークが三匹いたので倒して肉を新しくしておく。
「これで今日のご飯も美味しく食べられるね。」
「俺は出来れば他の肉がいいんだが。」
「私もよ。」
「でも他のお肉はランゲさんに調理してもらう分を残しておかないといけないよ。」
「心配しなくても大丈夫。それくらいは残るわよ。」
「どのみち何度もお願いするわけにはいかないんだから。そんなにたくさんは必要ないさ。」
「うーん。わかった。私も種類があったほうが嬉しいしね。」
わかってくれたようだ。
別にオークが嫌ってわけじゃないんだ。他に美味しい肉があったらそれを食べたいと思うのは普通のことだと思う。
「っと、今回はそううまくはいかないみたいだな。」
スークィールが地面を移動していたところに出くわしてしまった。
相手もこっちを補足していて、逃げるのは難しそうだ。
「運が悪かったみたいだね。」
「ガルタイガーに襲われるよりはマシさ。来るぞ!」
毒のある牙で攻撃してくる。
相変わらず速い攻撃だが、テールウィップの攻撃に比べればわずかに遅い。
何よりもしっぽの鞭が無いだけでも全然違う。
そうだ。同じ蛇なんだから、テールウィップと同じように攻撃の瞬間に思いっきり盾をぶつけてみれば隙が生まれるんじゃないか?
やってみるか。
スークィールの一撃に耐えつつ、チャンスを待つ。
いい角度で攻撃が来た!
タイミングを合わせて思いっきり盾をぶつける。
怯んだ隙に頭に剣を突き刺した。
そしてキリの追撃で完全に息の根を止めることができた。
「前より良くなってるね。」
「テールウィップとの戦いで少し蛇の魔物との戦い方が分かったんだよ。それを試したらうまくいった。」
「そうなんだ。前回は防ぐので精いっぱいだったけど今回は反撃までできたもんね。」
「ああ。あまりにもでかい蛇の魔物だと無理だと思うけど、少しづつ工夫しながら戦えてるよ。」
「いいことよ。私も魔法を使わないで済んだし、余裕が出来ているわ。」
そうだな。
前回は防御に失敗して噛みつきを食らったんだった。
前回の戦闘からそこまで時間は経ってないけど、戦闘の中で成長できたってことなんだろうな。
「スークィールも新鮮なお肉が手に入ったね。」
「そうなるな。これはこれでうまいからよかったと思っておこう。さっさと解体しちゃおうか。」
「そうね。」
その後は何回かオークと戦ったくらいで、無事地下三階への階段までたどり着くことができた。




