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72 出来立てのダンジョン探索13

 翌日。

 三人共十分に睡眠がとれたみたいで体調はいいように見える。

 準備を整え扉の前に立つ。


「そういえば一回入ったら出れないのか?」

「出れるわよ。ただ、ボスに挑戦できるのは一日一回までって決まっているみたいでもう一度入ろうとしても入れないらしいわ。」

「そうか、じゃあ勝てそうにないって思ったら逃げることはできるんだな。」

「ええ。」

「よし、いくぞ!」


 扉を開ける。

 まだ何もいないようだ。

 入ると勝手に扉が閉まる。と同時に部屋の中心に魔物が現れた。

 八メートルくらいの大蛇だ。


「あれはテールウィップね。毒は無いけど名前の通りしっぽを鞭のように使ってくるわ。」

「なるほど。それにしてもでかい蛇だな。」

「それだけ力もあるから気を付けないとね。」

「そうだな。よし、今回は挟み撃ちが通じるんじゃないか?」

「試してみようか。私は少しづつ後ろに回り込んでみるよ。」

「俺は正面だな。エリィはなるべく早めに魔法を頼む。」

「わかったわ。」

「よし、いくぞ!」


 スークィールもでかいと思ったけどそれ以上の蛇と戦うことになるとはな。

 あの時は一撃貰っちゃったけど、今回はそんなへまはしないように気を付けないと。


 じりじりと距離を詰める。

 テールウィップはこっちを見てるだけでまだ何もしてこない。

 スークィールの時に学んだけど、こいつらは一撃が速い。

 何とか防げないことは無かったけど、さらにでかくなったテールウィップにどこまで通用するか、集中していかないとな。

 ターゲットは俺に向いたようだ、じっくりと見られている。

 ここで攻撃に行くよりは少しでも長く時間を稼ぐことが大事だ。

 向こうから来ないのなら、俺は盾を構えながらテールウィップの周りを少しづつ回りだす。

 これで隙ができるとは思わないが、少しでも攻撃に移りにくくなれば儲けものだ。

 キリは無事に反対側に行けたようだな。

 これならうまくいけばエリィの魔法を待たずに倒せるかもしれない。

 と、テールウィップが動き出した。

 地を這い、俺の方へ。

 盾を構えて一気に集中力を高める。

 噛みつきだ、スークィールより若干速い!


「くっ!」


 毒がないとはいえ、噛みつかれたら大ダメージは免れない。

 次の瞬間とっさに横に盾を構える。

 鋭い衝撃が来た。しっぽの鞭だ。

 思わず体がよろめきそうになる。

 前と横、二方向からの攻撃か、厄介だな。

 だが何とか対処できた。

 やっぱり問題は反撃する隙が今の俺じゃ見いだせないってことだな。


「うおっ!」


 くそっ、こいつはスークィールよりも攻撃が激しいな。

 しっぽの一撃に耐えたと思った瞬間に牙が襲い掛かってくる。

 キリにもしっぽの鞭が向かって行っているし、まるで二つの頭があるようだ。

 挟み撃ちなら何とかなると思ったのは浅慮だったな。

 牙を盾で防ぎながら打開策を考える。

 近づくのは締め付けられるから却下。

 逆に距離を取る。キリが狙われることになるな、これも却下。

 しっぽの一撃に合わせて剣を振る。これができればいいんだが牙との連携がうますぎて現状できる気がしない、今は却下だ。

 やっぱりガードと同時に剣を振る。これで少しでもダメージを与えることができればいいんだが、俺に狙えるのか?

 やってみるしかないか。

 まずはしっぽの位置を確認しておかないとな。

 今はキリを相手にしている、こっちにくることはなさそうだ。

 テールウィップの噛みつきを待つ。

 来た!

 ガードと同時に剣を振る。

 当たっている感覚は無かった。

 まだ遅いのか、もっとコンパクトに素早く振らなくっちゃだめか。

 キリの方もしっぽにハンマーを当てようと頑張っているみたいだが、かみ合わせが悪いのかキリの方がしっぽの攻撃を少しかすらせているようだ。


「それだけでかいくせに速いってのは反則だな。」


 思わず文句の一つでも出てしまう。

 テールウィップはまだまだ余裕がありそうだ。

 さすがダンジョンのボスに選ばれるだけのことはある。

 でもこっちもただやられているだけってのは面白くない。

 一撃でも攻撃を入れて見せるぞ。

 噛みつきとしっぽの連携の時は手を出さず、噛みつきだけの時にカウンターを狙っていく。

 ガルタイガーとは違い、攻撃の重さは反撃できないほどじゃない。

 そう考えるとまだやりようはあるきがする。

 ガードには力をこめて、剣を握る腕は少し力を抜いて素早く対応できるようにと心掛ける。

 何度目になるかわからないテールウィップの噛みつき。

 速いが、さすがにこれだけ見れば多少は慣れてくるというものだ。

 ガードと同時に今までの中で一番早くカウンターができた。

 そして深い傷はつけられなかったが、テールウィップの顔に浅く傷をつけることができた。


「よし!」


 ほんの些細なダメージともいえないことだが、今まで触れることも出来なかった相手に剣を届かせることができた。

 これは大きな一歩だろう。

 後はこれを素早く鋭くしていくだけだ。

 テールウィップは気にした様子もなく攻撃を繰り出してくる。

 それに合わせて時々付けて行く小さな傷。

 少しづつ自分の中で感覚が出来上がってくる。

 もしも攻撃を避けることができたらダメージを与えられるくらいの一撃は入れられるだろう感触はあるんだが、テールウィップの攻撃の素早さから考えるとそれは難しい。

 盾でうまく隙を作る方法は無いか。

 相手の攻撃が速いんだから、それに合わせてこっちから盾をぶつけて行ったら少しは隙ができないか?

 本来の意味とは少し違うかもしれないがシールドバッシュってやつだ。

 試してみる価値はあるかもしれない。

 じっくりと待つ。盾をぶつけに行きやすい攻撃以外は防ぐだけで無理はしない。

 しばらく静かなやり取りがあったあとに狙いやすい一撃が来た。

 こっちからも思いっきり盾をぶつけに行く。

 一瞬生まれる激しい衝撃。

 そしてテールウィップに初めて生まれた隙だ。

 その顔面に斬りかかる。

 ―ザシュ!

 鼻のあたりに大きく斜めの切り傷が出来ていた。


「よし!」


 このタイプの敵には使える技だな。

 隙は一瞬だが多少の傷は与えられる。

 後はこれを積み重ねていけば有利になっていくだろう。

 テールウィップも初めて攻撃らしい攻撃を貰ったことで怒りをあらわにした。

 噛みつき、しっぽ、噛みつきと連続で俺を攻め立てる。

 キリが隙を見てハンマーの一撃を入れようとするが、それはかわしてしまう。


「ようやく顔面に一撃入れてやったぞ。」

「すごいね。私はしっぽの攻撃にハンマーを合わせられなくて苦戦してるよ。」

「武器の相性もあるだろうからな。テールウィップ相手だと素早く振れる武器の方が合いそうだ。」

「そうかもね。おかげでかすり傷だらけになっちゃったよ。」

「まぁもう少しでエリィの魔法が撃てるようになるだろうし、それまでの辛抱だ。」

「そうだね。もうひと頑張りだね。」


 お互い再び距離を取って挟み撃ちにする。

 正面からよりは攻撃の頻度は減るだろうし、間違ってはいないはずだ。

 盾を構えてじりじりと近づく。

 それを見たテールウィップはすぐさま噛みついてくるがそこを再びシールドを勢いよく叩き付ける。

 そして素早く顔を斬りつける。

 さっきよりも深く入ったな。血が流れ始めている。

 しっぽの一撃は相変わらず鋭いが、何とかガードは出来る。

 相手は俺のことしか見ていないんじゃないかって言うくらいに攻撃の比率が俺に傾きかけてきた。

 そんな隙を見逃すキリじゃない。

 テールウィップに後ろから素早く近づきハンマーを振り下ろそうとした瞬間、テールウィップの今までで一番鋭いしっぽの一撃がキリを吹き飛ばした。


「うっ!」

「キリ!!」

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