69 出来立てのダンジョン探索10
「お疲れ様。沼地オオトカゲはそこまで問題なさそうね。」
「魔法を連発されるのがちょっと面倒だったけど倒せない相手じゃなかったな。」
「そうだね。近づくまでが少し大変だったかな。」
「だな。それじゃ沼地オオトカゲを解体するか。」
「売れるのは皮だけね。」
「肉は売れないのか?」
「余り美味しくないそうよ。食べられないことは無いらしいんだけど好き好んで買う人はいないみたいね。」
「そうなんだ。残念だね。」
さすがに美味しくないとされる肉まで食べようとは思わなかったらしい。
五体の皮をはぎ取ることにする。
一匹二メートルもあるからなかなか大変だ。
時間をかけて皮だけをはぎ取った。
キリは最後まで肉が気になっていたようだが、結局諦めたようだ。
「ちょっと味が気になったなぁ。」
「沼地の中にいたんだ、多分臭みが凄くて美味しくないんじゃないか?」
「そうかもしれないけど。」
「せっかく他の美味しい肉があるんだから無理して食べることもないさ。」
「そうね。今度、食糧難の時に出会ったら食べてみればいいわよ。」
「そうだね、そうするよ。」
スークィールとオークの肉はまだまだある。
無理して美味しくない肉を食べることなんてない。
キリの場合、好奇心だろうけど。
「沼地の部分の探索自体は地下四階より安全かもしれないな。」
「宝箱を見つけるならこの階ってことね。」
「多分な。他の魔物が気になるところではあるが、沼地オオトカゲに気を付ければ宝箱を探すのはそう難しくはないと思う。」
「それなら積極的に宝箱を探していく?」
「怪しい場所があったら探してもいいと思う。もちろん慎重にな。」
もしかしたらまたスークィールみたいな魔物がいるかもしれないし。
ただ、沼地にいたのが沼地オオトカゲだったから、他の魔物も同時に同じ場所に存在している可能性は高くないと思うんだよな。
とはいえ警戒は必要だけど。
「それじゃあ怪しそうな場所を見つけたら教えるわ。」
「ああ。全部の場所を調べられるかはわからないが、調べられそうな場所は調べて行こう。」
「私はまわりの警戒をしておくよ。まだ何かいてもおかしくないからね。」
「そうだな。俺も警戒しておく。」
そして歩き回ることしばらく。
無事宝箱からアイテムを回収できていた。
「この階は当たりね。」
エリィはホクホク顔だ。
「あれから沼地オオトカゲも一度だけしか遭遇してないしな。」
「数がいるから面倒だけど、それでもそこまで脅威ってわけじゃないからね。」
「俺としては避ける練習になって丁度いい相手だよ。」
「姉さんは宝箱がいっぱいあって嬉しそうだね。」
「もちろんよ。何かに使えるアイテムかもしれないわよ?店で買うとしたら随分と高くなるからこういった場所で出てくれるといいんだけど。」
「そうだね。少し攻撃力を上げるだけでも値段は高いもんね。」
「今回のアイテムの中にあたりがあればいいんだけどな。」
「それはわからないけど、一個くらい使えるものがあってほしいね。」
指輪や腕輪、ネックレスなど、様々なものが出ているけど、地下三階の遺跡で出たものには正直あまり期待できないだろうし、メインはこの沼地で取れたアイテムだろうな。
鑑定が楽しみだ。
ただ、荷物がだいぶ増えてきたから、もしかしたら一部捨てていくことになるかもしれないな。
ちょっともったいないけど値段が低くてかさばるものは仕方ないか。
「ん?何か戦ってる音がしないか?」
「そうだね。人の声はしないし、そもそも私たち以外にいないはずだから魔物同士の戦いかな?」
「そうみたいね。あっちから聞こえてくるわ。」
エリィが指さしたのは沼地ではなくこのまま歩いて行ったら通るだろう岩の向こう側の場所だった。
「どうする?って言ってもここで引くわけにもいかないか。」
「うん。どんな魔物か確認して、こっちから奇襲を掛けられれば一番だと思うよ。」
「なら気付かれないように行くわよ。」
「わかった。あの大きな岩からそっと覗いてみよう。」
慎重に音を立てないように岩に近づく。
すでに戦闘音はしていない。
覗き込んでみるとまず目に入ってきたのは何体かのオークの死体。
そしてそのオークを食べている三メートルの虎だった。
「あれはガルタイガーだね。」
「鋭い牙と爪を持ってるわ。動きも俊敏で、まわりのオークの末路を見た通り強敵よ。」
「後ろを向いた隙に俺とキリで攻撃するか。」
「そうだね。最初に一撃入れることができればその後がだいぶ楽になるからね。」
「エリィは今から魔法の準備を頼む。」
「わかったわ。」
ガルタイガーはオークを食べていてまだこっちに気付いていない。
だが不意打ちを仕掛けるには向いてる角度がよくない。
後ろを向くまで少し待つ。
別のオークを食べようと後ろを向いた、今がチャンスだ。
「いくぞ。」
「うん。」
なるべく足音を立てないように、それでいて素早く駆け寄る。
俺とキリの攻撃が決まると思った瞬間、ガルタイガーがその場から飛び退いた。
「チッ、奇襲は失敗か。」
「仕方ないよ、元々鋭い魔物だからね。」
奇襲に気付いたガルタイガーはこっちを鋭く見つめている。
「相手は一匹だ、こうなったらいつも通り挟んで戦うぞ!」
「わかった!」
俺とキリで二手に分かれ、挟み撃ちの形を作るべく動き出す。
が、先に動いたのはガルタイガーだった。
キリの方に向かうと、その鋭い爪で一撃を放つ。
キリは飛び退いてかわすが、爪での追撃を受ける。
ハンマーを盾にしてうまくしのいでいるが、このままだとマズい。
素早く走っていって剣を振り下ろす。
しかしガルタイガーもそのことに気付いているのか、あっさりとよけられてしまう。
しかも挟み撃ちをしようとしているのが分かっているのか、常に俺とキリを視界に入れるように立ち回る。
なかなかの難敵だ。
「挟み撃ちは出来そうもないな。」
「そうだね。」
「仕方ない、正面から戦うか。」
俺が先に仕掛ける。
盾があるから防いで隙を作り出すのが目的だ。
ガルタイガーの一撃が飛んでくる。
重い。
一撃の速さはスークィールのほうが上だが、重さが全然違う。
それも連続で攻撃してくるからたまったもんじゃない。
「ぐっ!キリ!頼む!」
隙を見つけてキリがハンマーを振りかぶるが、素早いガルタイガーはその一撃を避けてしまう。
「くそっ。こいつは強いぞ!」
「隙が見つからないよ。素早いからあっさりと避けられちゃうし。」
「俺も攻撃を連続で耐えるには限界がある。持久戦に持ち込まれたらやばいな。」
「姉さんの魔法が完成するまで攻撃しながら耐える?」
「それしかないかもな。俺も可能なら足を狙って攻撃してみる。」
特別なことをしてくるわけじゃないんだが、一つ一つが純粋に強い。
息を吸い込み、ガルタイガーに突撃する。
爪の攻撃を歯を食いしばって耐える。
可能なら足を狙って剣を突き出したいところだが、それができない。
受け流すにも次から次へと攻撃が来るためにままならない。
盾を持つ腕が壊されそうだ。
いつもならこの間にキリの一撃で何とかなることが多いんだが、死角に入れないからそれも難しい。
このランクの魔物を相手にするっていうのはこういう事なんだな。
今後、正面から打ち勝つことができる実力がいるな。
「キリ!何とか当てられないか!?」
「難しいよ!動きが早くてかわされる!」
相手の爪をかわして攻撃するか?
そんなことをしたら次の攻撃に対処できる気がしない。
せめてもう少し攻撃が軽かったら反撃もできたかもしれないのにな。
多分、戦い方が未熟なんだろう。
これまで強かった敵は挟み撃ちで倒してきた事が多い。
正面から戦わなくちゃならなくなると、どうしてもその未熟な部分が出てくるって事か。
反省だな。
「エリィ!撃てるか!?」
「いけるわ!」
「頼む!!」
轟音と共に訪れた魔法の連射によってガルタイガーは倒せた。
自分たちの問題点がよくわかる一戦となったな。




