68 出来立てのダンジョン探索9
翌朝。
幸いにも襲撃自体無く、しっかりと休憩することができた。
どうやら木のない場所を選んだのは正解だったようだ。
「さぁ、下りるぞ。地下五階だ。」
地下五階。
下りるとそこは地下四階と同じく沼地だった。
「また沼地か。」
「同じようなのが続くことはよくあることよ。」
「しょうがないよ。進めるだけ進もう。」
「そうだな。地下四階でスークィールがいたんだ、この階は気を付けて行くぞ。」
「うん。」
少なくとも同じくらい厄介な魔物が住んでいるだろう。
そう考えると階段からそう離れないところで魔物と会っておきたい。
そうすればいつでも退散できるしな。
後、外の階層のめんどくさいところはマッピングだ。
洞窟型に比べて非常に手間がかかる。
仕方のないことではあるが少々うんざりするな。
「ここも全部が沼地ってわけじゃないんだな。」
「そうね。そういう場所もあるけど、そうじゃなかったのは運がよかったといえるわね。」
「全部が沼地だったら引き返してたぞ。さすがに危険だろうし。」
「その場合はそれが正解ね。」
「でも今回は歩きやすい地面があるからよかったね。」
「後は魔物だな。階段からそう遠く離れてない今のうちに会っておきたい。」
「いざという時、逃げられるもんね。」
「ああ。今のところ姿は見えないが。」
沼地はそもそも生息数が少ないのか魔物に会う確率はそう高くない。
このダンジョンの沼地がそうなってるだけかもしれないが。
もしくはダンジョン自体できたばかりだから魔物の数が少ないのかもしれない。
なんにせよこの階層の強さを実感できないのはいいことではないな。
気が付かないうちに危険なところまで進んでるかもしれない。
「近くにはいないように思えるな。二人はどうだ?」
「いないと思うよ。」
「おそらくいないわね。」
「進むか、待つか。ちょっと迷うところだが。」
「そうね。私はもう少し進んでみてもいいと思うわ。木が生い茂っているわけでもないし、不意打ちの確率は高くないと思うから。」
「私も進んでもいいと思う。待ってていつでも逃げられるようにするのも悪くないけど、魔物がいつ来るかわからないし。」
なるほど。確かに二人が言うことも頷ける。
ここはもう少し進んでみるか。
「わかった。進もう。」
沼地には入らないように先に進む。
地下四階だと沼地にさえ入らなければそこまで危険はなかった。
まずはしっかりとした地面を進んで魔物を探すことにする。
「宝箱がありそうな場所を見逃さないといけないのがつらいわ。」
「今は我慢だよ。姉さん。」
「分かってるけど、気になるのよ。あ、あそこの沼地にもありそうな気がするわ。」
「魔物をある程度把握出来たら探しに行けるけど、今はまだ待ってくれ。」
「うぅ、わかってるわ。」
いかにも宝箱がありそうって場所をスルーしないといけないのは俺もつらい。
何かいいものが入ってるんじゃないかと気にはなる。
でもまずはどんな魔物がいるか分かっておかないと不安で仕方ない。
探していないようだったら沼地に少し入ってみる必要も出てくるかもしれないが、それは今ではないからな。
「宝箱を探すためにも早めに魔物を把握したいんだけどな。」
「不思議なくらいいないわね。」
「沼地の方にかたまってたりして。」
「ありえない話じゃないわね。沼地で生息している魔物ならその方が普通ともいえるわ。」
「それじゃあ少しだけ沼地の方に行ってみるか?」
「そうだね、このままじゃ時間だけ過ぎていくし行ってみようよ。」
せっかくだから宝箱がありそうな沼地に向かっていくことにした。
歩いてしばらくすると、沼の中から何かがこっちを見ているのに気付いた。
「何かいるな。」
「そうだね。でもちょっと深いところにいるから相手したくないな。」
「こっちに来ないのなら無視してもいいんじゃないか?」
「どうかしら。じっと隙を狙ってるのかもしれないわ。」
「そうなると厄介だな。」
こっちはそこまで行く気はないし、向こうはただ見てるだけ。
どうしたものか。
俺としては害にならない魔物なら無視して通り過ぎたいのが本音だ。
「じゃあ、とりあえず宝箱でも探すか?その間に近づいてくるようなら迎撃すればいい。」
「そうね。こうしてみていても仕方ないし宝箱を探してみるわ。」
「私は見張ってるよ。気になるしね。」
「わかった。それじゃあエリィ、様子見ついでに宝箱を探そうか。」
この沼地の部分には木は生えていない。
だが、その代わりに小さめの岩がゴロゴロしてる。
多分その隙間にあるとみたんだろう。
一つ一つチェックしていく。
キリの方にも動きは無いみたいだ。
十分以上探していただろうか、一つの箱を見つけることができた。
「あったぞ!」
「本当!?」
「ああ、これだろ。」
「やっぱりあったのね。今開けるわ。」
「頼む。どうも罠があるっぽくって俺には開けられそうもない。」
エリィは嬉々として宝箱に挑んでいる。
まぁ、エリィに任せておけば大丈夫だろう。
俺は周辺の警戒をする。
今のところは平和な地下五階だが何が起こるかわからない。
「開いたわ!」
「今回は早かったな。」
「前回と同じような罠だったから、少し慣れたのかもしれないわ。」
「二回目でそんなに早くなるものなのか?それで中身は?」
「これは指輪ね。マジックアイテムだといいわね。」
「そうだな。」
宝箱を開けたらもうこの場所には用事は無い。
キリを呼び戻して次へ行こう。
「キリ!宝箱は終わったから次へ行こう!」
「分かった!」
キリが走って戻ってくる。
するとつられたように今まで見ていただけだった沼に潜んでた奴らもこっちにきだした。
「二人とも!魔物が動いた!」
「え?今になって?」
「そうらしい。戦闘準備だ!」
徐々に見えてきたその姿。
約二メートルのトカゲが五匹。
「あれは多分沼地オオトカゲね。水の魔法を使って攻撃してくるわ。」
「魔法を使うのか、数も多いし厄介だな。」
「でも爪はそこまで鋭くはなさそうだよ。」
「そうだな。接近戦ならこっちに分があるか。よし、行くぞ!」
「待って。まだ沼が深いからもう少しこっちにおびき寄せよう。」
「そ、それもそうか。よし、いったん引いて陸地近くまでおびき寄せるか。」
「それがよさそうね。」
ちょっと勢い込んでしまったな。
顔が熱いけど、気にしないでおこう。
沼地オオトカゲは距離をどんどん詰めてくる。
そして約十メートルくらいの距離で歩みを止めた。
「くるぞ。エリィはいつもと同じように魔法の準備。俺とキリで挟み撃ちをされないように気を付けながら立ち回るぞ。」
「うん。」
魔法を使われる前に一匹でも多く倒しておきたい。
俺とキリが駆け出す。
しかし、沼地オオトカゲは素早く魔法を使ってきた。
ウォーターボールと言ったらいいのか、水球を次々と繰り出してくる。
かわしながら近づくが一発貰いそうになったので、あわててガードする。
結構重い。
連続で食らうとまずそうだ。
囲まれないように端っこの奴から倒していくことにする。
他の沼地オオトカゲの魔法が鬱陶しくてなかなか近づけない。
どうやらこっちに三匹来たようだ。
なるべく横に早く動いてガードしなくて済むように心掛ける。
魔法を使っている時は移動ができないようで、その時がチャンスと思うんだが、かわしながらの攻撃をするにはもう少し距離を詰めたい。
ただひたすらに魔法を避けてチャンスを窺う。
そしてついにチャンスが訪れた。
三匹の魔法のタイミングがそろった。
まとめて一気にかわしながら狙っていた奴に斬り込んでいく。
見た通り爪は大したことがない。
受けて、首に剣を振るう。
近づいた効果だろう。他の二匹もうかつに魔法を撃てなくなったようで一対一の形に持ち込めた。
他の二匹に狙われることのないように、回り込みながら、盾で受けてひたすらに首を狙い続けて一匹目を倒すことができた。
後二匹。
三匹に比べれば魔法の数も少なくなったいる分やりやすい。
タイミングを合わせて飛び込む。
するとそれを待っていたかのように沼地オオトカゲが勢いよくのしかかってきた。
二メートルもある沼地オオトカゲにのしかかられたらたまったものじゃない。
盾を使って何とか回避する。
随分思い切ったことをやってくるもんだ。
ここでキリが二匹倒し終わったようで、こちらの三匹目を受け持ってくれた。
一対一なら負けはしない。
ほどなくして五匹の沼地オオトカゲ五匹の死体が横たわることになったのだった。




