67 出来立てのダンジョン探索8
今日は階段のそばで休むことになった。
今はオークとスークィールの肉を焼いている最中だ。
「荷物も多くなってきたし、多くてもあと三階くらい下りたら戻ろうと思うんだけどどうだ?」
「いいと思うよ。最初の探索としては十分だと思うしね。」
「私もそれくらいでいいと思うわ。魔物も強くなってきたし、そこまでいかなくてもいいかもしれないわね。」
「そうだね。スークィールは強かったから、それ以上の魔物がどれくらい出てくるかによってはすぐに撤退してもいいかもね。」
「次の階がどんな場所かはわからないけど、慎重に行動したほうがいいと思うわよ。」
「そうだな。次の階層に出てくる魔物によっては、すぐにでも撤退してもいいかもしれないな。」
もっともスークィールもさばけない相手ではなかったとは思う。
一人では防御で手一杯だったが、連携しながら戦えば倒せない相手ではなかったという感覚だ。
攻撃のスピードこそ速かったものの、慣れれば対処できたと思うだけにさっきの一戦は残念な結果だ。
スークィール相手に一人で倒しきれるようになれれば一番理想的だが、それにはまだしばらく時間が必要だろうな。
「このダンジョン、虫も多かったけど毒を使う魔物も多いよな。」
「そういえばそうだね。そう考えると下級ダンジョンではないのかな。オークとスークィールが出てきてる時点で下級ダンジョンではないと思うけど。」
「そうね。現時点では中級の下の方かしら。何階まであるのかわからないけど、思ったよりも手ごわいダンジョンだったみたいね。」
「ところでダンジョンの等級ってどうなってるんだ?下級、中級、上級で終わり?」
「その上に伝説級があるわ。あとは等級じゃないけど、変動型のダンジョンも存在してるわ。」
「変動型?」
「中で出てくる魔物も宝箱も完全にランダムらしいわよ。うまくいけばいいものをあっさりと手に入れることができるかもしれないわね。」
「それはなかなか美味しいダンジョンなんじゃないのか?」
「労力に見合わないって言うのが大半の意見ね。運が悪ければAランクモンスターに追いかけられることもあるのよ。宝箱には高度な罠が仕掛けられていることも多いらしいし、苦労して開けたら錆びたスプーンとかだったりするらしいわよ。最近は自棄になったハンターが入っていくくらいだと聞いてるわ。」
「なるほど。自分の実力にあったダンジョンに入るのが正解か。」
「結局はそうだと思うわ。」
うまい話はそうそうないってことか。
それにしても変動型ってのはとんだ地雷だな。
もしかしたら凄い宝物やマジックアイテムが手に入るかもしれないっていう餌をぶら下げて誘いこむわけだ。
そして中に入ったら高ランクの魔物がいる可能性と常に戦わないといけない。
うん、ダメだな。
地道に行くのが一番だ、そうすれば見合うだけの報酬はもらえるんだし。
「おっと、おまたせ。焼けたぞ、食べよう。」
「スークィールはどんな味かなー?」
「シャー。」
「食べてみてのお楽しみだな。」
「「「いただきます。」」」
「シャー。」
スークィールを手に取ってみる。焼く前から脂はそこまでなかった。
多分食べやすいんじゃないかって気がするんだけどどうなんだろう。
うろ覚えだけど、日本で聞いた話だと鶏肉に近いんだっけ?
とりあえず一口かじってみる。
鶏肉ではないな。魔物だからか今までに食べたことのない味がする。
ぷりぷりとした肉で食感は若干魚に近い。
ただ、味が何というかさっぱりというか食べやすいんだけど濃い。
さっぱりって言っていいか迷う。
そういう肉としか言えない、変わった味だ。
もちろんマズいというわけではない。むしろ美味しい。
ただ、万人受けするかといわれれば、オークの方が万人受けするだろうな。
「へぇー、変わったお肉だね。」
「そうね。脂は少ないけど味が濃いわ。」
「私は結構好きかな。お肉食べてる!って感じがして。」
「私には少し濃いかしら。嫌いではないけどもうすこしあっさりしたほうがいいわね。」
エリィには少し濃かったか。
そういえばシロにとっては共食いになるのか?
シロの方を見ると気にせずに食べてるな。割と好みらしい。
まぁ本人が気にしないなら別にいい。
お茶くらい持ってくれば良かった、この味の濃さにはお茶が欲しくなる。
「お茶持ってくれば良かったな。」
「ふふ。そうね、このお肉には合ったわね。」
「私は胡椒を持ってきてたらなって思ったよ。」
「それも合いそうだけどな。こういう時のために普段から少しくらい持ち歩くべきか?」
「胡椒も茶葉もそこまで荷物にはならないわね。もちろん減らせるものは減らしたほうがいいけど。」
「食事は大事だ。気持ちにも繋がる。」
「なら持ち歩こうよ。無駄にはならないと思うし。」
「そうだな。次から適当な量を持つようにしよう。」
多少出費が増えるが、今は急いでほしいものもないし、最近の依頼で懐はあったかい。
別にそれくらいは問題ないだろう。
「オークの肉にはちょっともったいないけど、他の肉を手に入れた時に美味しく食べることができないのは損だしな。」
「オークは街で食べることができるからね。」
「私は茶葉を持ち歩けるのがうれしいわね。携帯食料を食べるときでも、少し美味しく食べることができるかもしれないわ。」
「そうだね。いっそ干し肉にも胡椒を・・・もったいないね。」
「さすがにそれはな。どうにかもう少し美味しく食べたいところなんだけどな。」
「仕方ないわよ。保存食としては優秀なんだから。」
「だな。我慢も大事か。」
なんだかんだで携帯食料には助けられているからな。
なかったらハンターの行動可能な日数がもっと限られることになるだろうし、そういう意味では感謝しかない。
値段も手ごろだしね。
ただ、もう少し美味しかったらなって思うだけだ。
「ふぅ、なかなか美味しかったな。欲を言えば調理されたものを食べてみたかった。」
「味が濃いからどんな料理になったのかしらね。確かに気になるわ。」
「前に食べに行ったピザに入れてもいいかもしれない。肉の味が他のものに負けないだろうから一品出来そうだ。」
「あそこは美味しかったね。また行きたいなー。食べ放題って言うのが特に良かったよ。」
「あの時は凄い食べてたな。見てるだけでお腹いっぱいになりそうだったよ。」
「せっかくの食べ放題だったからね。いっぱい食べないと。」
今もいっぱい食べてるけどな。
初めての肉があるときはキリは特にいっぱい食べる傾向がある。
美味しそうに食べてるから別にいいんだけど、急に襲われたら対処できるのか不安になる。
いや、食事の邪魔をされたってことでいつもより容赦なく倒していきそうだな。
心配いらなそうだ。
「さて、ここで夜営をして明日にはもう一階下りるぞ。」
「うん。」
「大丈夫だと思うがこの階には足音が聞こえないスークィールもいるから、見張り番は特に気を付けよう。」
「そうね。気が付いた時には襲われてたなんてことにならないようにするわ。」
「近場に木は無いから大丈夫だと思うんだけど何があるかわからないからな。スークィールの移動の途中でたまたま見つけられることもあるかもしれないし。」
「もしも這うような動きがしたらすぐに起こせばいいよね?」
「それでいい。いつもと違う変な音がしたら起こしてもいい。慎重すぎるくらいの方がここはいいと思う。」
ただでさえ見つけにくい動きをする魔物だ。
見える範囲にいるってわかったらすぐに対処できるようにしておかないと危険すぎる。
緊張感のある夜を過ごすことになるが、睡眠はある程度取らないとな。
注意点を確認して順番に眠りについた。




