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65 出来立てのダンジョン探索6

 ―ジュー

 オーク肉の焼ける音があたりに響く。

 キリとシロにとってはお待ちかねのご飯だ。

 これまでは携帯食料ばっかりだったからな、今回はある程度食べてもいいように倒したオーク肉を多めに持ってきてある。

 もっともシロは待ちきれなかったようで生でも食べ始めているが。


「相変わらず脂ののっている肉だな。味に文句はないんだけどさ、もう少しさっぱりした肉も取れればいいのになって見てると思っちゃうよ。」

「そうね。これが続くと思うとちょっと思うところはあるわね。」

「でも干し肉よりはいいんじゃない?私はジューシーで好きだけど。」

「毎回だと辛くなってくるなって思ったんだよ。干し肉ばっかりも嫌だけど、オーク肉ばっかりもちょっとな。角うさぎでもいればいいんだが。」

「角うさぎはさっぱりしてるから食べやすいわよね。干し肉にもよく使われているみたいよ。」

「そうなんだ。私も角うさぎは食べやすくて好きだよ。小さいからみんなの分を取らないといけないけど。」


 キリの場合は肉なら大体大丈夫なんじゃないのか?

 さすがにゴブリンやコボルトあたりは食べないだろうけど。


「お、そろそろ食べれるぞ。」

「やった、久しぶりの新鮮なお肉だ!」

「それじゃあ食べようか。」

「「「いただきます。」」」

「シャー。」


 ちょっとばつの悪そうな顔をしてシロがこっちをチラチラ見てる。

 先に食べ始めてたからな。

 別に気にしなくていいんだぞ、俺たちは生じゃ食べられないし、久々の新鮮なお肉で待ちきれなかったんだろう。

 シロの頭を撫でて気にしなくていいように伝える。


「それよりもシロの分も焼いておいたからな。おいておくぞ。」

「シャー。」


 全員食べ始める。

 やっぱり干し肉とは全然違う、ジューシーで味が濃い。

 久々だと余計に美味しく感じるな。

 脂もくどくはないんだが、これから連続で食べることになると思うと気にはなる。

 とはいえ干し肉よりはいいのも確かだし、これからまだ地下に下りていくことを考えると食料は節約したいってのもあるからな。

 結局はお世話になるんだろう。オーク、ありがとう。


「うーん。美味しい。」

「ある程度は食べていいけど、食べ過ぎるなよ。」

「大丈夫だよ。動くのに支障が出るまでは食べないから。」

「それでも結構食べるのよね、どこに入っているのかしら、不思議だわ。」

「姉さんもお酒はいっぱい入るよね。それと一緒だよ。」

「私はそこまで飲んでるつもりはないわよ?」

「そうなの?私から見たら飲むときは凄い飲むって思ってた。」

「飲む人はもっと飲むわよ。私はそこまでではないわ。」

「そうなんだ。でも飲む量に比べたら食べる量は少ないよね?」

「そこまでたくさん食べるほうではないのよ。飲む方が好きってこともあるけどね。」


 キリがたくさん食べるのは今に始まったことじゃないからな。

 あれだけのパワーの秘密もそこにあるのかもしれない。

 それに比べてエリィはそんなに食べないよな。

 本人は飲む方が好きって言ってるけど、元々食が太くないんだろう。

 そういえば俺はこっちの世界に来てから食べる量は増えたな。

 よく体を動かすし、体も鍛えたから多少は影響があるんだろう。

 食べないと動けないし、でも食べ過ぎても動けない。

 ほど良いところを見つけるのも慣れてきたもんだ。


「そろそろ出発したいんだけど・・・。」

「まって、久しぶりの新鮮なお肉だからもうちょっとだけ。」

「見ていて気持ちのいいくらいの食べっぷりね。」

「ある程度食べないと力が出ないし。もう少しだけだから。」


 さっきからもう少しと言って結構食べている。

 これまで我慢してきたんだろう、その反動がここにきて出てるのか?

 結局何回か追加で焼いて、ようやくキリのお腹が落ち着いたのだった。


「さて、どっちに進むか。」

「おそらくだけど宝箱は沼地に隠されていると思うのよね。」

「確かにこれまで通ってきた道には一つもなかったな。」

「ええ。だから少し沼地の探索もしていきたいと思うんだけどどうかしら。」

「危険じゃない?まだ何がいるかわからないよ?」

「そうだけど、見てる限りだと魚がいるくらいよね。それなら浅いところなら大丈夫かと思うんだけど。」

「うーん、いかにもって場所があったら考えよう。今の時点では何とも言えない。」

「そうだね。場所によって判断したほうがいいかもしれないね。」

「わかったわ、怪しそうな場所があったら言うわね。」


 確かにこの階に下りてきてから宝箱を発見することはできていない。

 今まで歩いてきたのが普通の地面ばかりだから、沼地の中に宝箱が隠されていると考えるのは普通のことかもしれないな。

 ただ、むやみに危険な場所に行くこともない。

 基本的には地面を歩いて、探せそうなところだけ探せばいいだろう。

 とりあえず階段を探してまだ歩いていないところへと足を向けた。

 しばらく歩いたところで。


「ねぇ。あそこのあたりが気になるんだけどどう思うかしら。」


 沼地の中に岩が一つあり、その周囲だけ木が生えている。

 いかにも何かありそうな感じはする。

 問題は危険そうかどうかだ。


「うーん、沼は深くないみたいだけど、なんだかあからさまに怪しすぎるよな。」

「私は危ない気がする。あれだけ木があれば何が隠れていたってわからないだろうし。」

「でも宝箱もありそうな場所よ?」

「確かにそうだけど。」

「それじゃあ慎重に行くか?少しでも何かいると思ったら退散で。」

「うーん、それなら。」

「決まりね。なるべく静かに行くわよ。」


 沼地を進む。

 靴の隙間から中に泥が入ってくる。

 足が少し埋まるくらいの深さで、気持ち悪いが動きにそこまで支障はない。

 足首くらいまで埋まるようなら危ないから撤退だ。

 何とか岩のそばまでたどり着いた。

 木々に隠れて襲ってくるかもしれないことを考えると、ここからはより慎重に行動しなくては。

 特にオークがいるわけではなさそうだ。

 周囲を見渡しながら少しづつ近づいていくと。


「ジュン!姉さん!上にいる!蛇だよ!」


 木々からサッと距離を取る。

 そこにいたのは五メートルくらいの蛇だ。

 おそらく木の上から俺たちを狙っていたんだろう。

 キリが見つけてくれなければぱくりといかれてたかもしれない。


「キリ、助かった。」

「あれはスークィールかしら。毒蛇の魔物よ、気を付けて。」

「分かった。とりあえず沼から出よう、足場がしっかりとしたところの方が戦いやすい。」

「わかったわ。」


 スークィールは待ち伏せが失敗したのを悟って木から下りて追ってきた。

 五メートル、こうしてみるとでかい。

 スルスルと近くまで来る。

 どうやら一匹だけのようだ、他にはいない。


「強そうだな。」

「おそらくオークよりはずっと強いはずよ。」

「エリィは魔法が撃てるようになったら撃ってくれ。俺とキリはいつも通り挟み撃ちだ。」

「わかった。」


 スークィールが頭を持ち上げて戦闘態勢をとってきた。

 おそらくは非常に速いと思う攻撃をどこまで受け切れるかが勝負どころか。

 まずは防御を固める。

 キリは少し距離を取りつつ回り込んでいく。

 スークィールが噛みついてきた、速い!

 何とか盾でガードするが、とてもじゃないが反撃できるだけの隙が無い。

 どれほどの毒なのか分らないが、食らったらヤバイ。

 そもそもこれだけの大きさだ、獲物を動けなくする毒と考えたら相当に強力だろう。


「俺は防御に専念する!攻撃は任せた!」


 剣を振るタイミングが見つからないし、カウンターなんてされたら目も当てられない。

 ここは耐えてキリとエリィに攻撃は任せよう。

 集中して攻撃に備える。

 スークィールも俺に牙を突き立てようとじりじりと距離を詰めてくる。

 あまりにも近くなると巻き付かれる恐れもある。

 あの巨体に巻き付かれたらどうにもならないだろう。

 詰められた分距離を取る。

 首をしならせて噛みついてくるが、わずかにだが予備動作があるから一度目の時よりは落ち着いて対処できた。

 それでもギリギリだが。

 キリが後ろに回った。

 隙をついて攻撃できるかどうか、無理はしてほしくない。

 スークィールも俺の動きに慣れてきたんだろう。

 俺が手を出さないとみるや、俺の周囲を少しづつ回り始めた。

 巻き付かれる距離にならないように調整して俺も立ち回る。

 時々繰り出される攻撃も何とかしのいでいくが、スークィールの鋭い一撃にはヒヤッとさせられる。

 そしてその時は訪れた。

 俺が防御をミスしてしまった。

 盾で受け止めるつもりが、受け流してしまう形になり、横にずれたスークィールがすかさずふくらはぎに噛みついてきた。

 激痛が襲ってくるが、武器を手放してスークィールを両手で、いや、体を使って押さえつける。


「キリ!!!」


 押さえつけたところにキリのハンマーが振り下ろされ、スークィールの頭と体が分かれることになったのだった。

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